太陽光発電のメリット、デメリットとは?設置費用や補助金の詳細も解説

再生可能エネルギーのひとつである太陽光発電。自家消費すれば光熱費の節約になりますし、「売電」によって収入を得ることもできます。ここ数年で急激に普及している太陽光発電は、「リフォームしてみようかな」と考える人も多いと思います。

ただし、太陽光発電には専用の設備が必要ですし、「絶対に儲かる」というものでもありません。費用がかかりますが、国や自治体から補助金を受けられるケースもあります。メリット、デメリットがあるからこそ、太陽光発電の基礎知識をしっかりと理解してから、リフォームの検討を進めましょう。

《目次》- 太陽光発電の基礎知識

太陽光発電の基礎知識

まずは、太陽光発電で知っておきたい基本的なことから紹介します。

太陽光発電の仕組み

太陽光から電気を作るためには、最低限以下の3つの装置が必要です。

・ソーラーパネル
「セル」という太陽電池をつないでパネル状にしたものです。このソーラーパネルが太陽光を浴びることで電気を発生させています。セルが多いほどたくさん発電しますが、家庭用は年間10kW以下、産業用は10kW以上という線引きがあります。

ソーラーパネルにはシリコン系や化合物系、有機系などの違いがありますが、世界中で一番普及しているのはシリコン系です。

・パワーコンディショナー
ソーラーパネルで作った電気は、実はそのままでは家庭用として使えません。そこでパワーコンディショナーが家庭用として使える電気に変換するのです。太陽光発電では、とても重要な機器となります。

・分電盤
パワーコンディショナーで変換された電気を家中に届ける装置です。また、余剰分を電力会社に買い取ってもらう「売電」を行う時にも分電盤が必要となります。

そして太陽光が発生する仕組みは、簡単に言うと以下のようになります。

①ソーラーパネルが太陽光を受けてエネルギーを発生させ、発電する
②パワーコンディショナーが①の電気を家庭で使えるように変換する
③分電盤で、各部屋に届けられる

「kW」と「kWh」の違い

太陽光発電では、「kW」や「kWh」という単位が良く使われます。

まずkW(キロワット)とは太陽光が出力する単位であり、「発電の強さ」をいいます。瞬間的な電力の強さを表す単位で、ソーラーパネルの性能表示でも「最大出力○kW」という表現が使われます。

そして、kWh(キロワットアワー)は「発電した量」を表す単位です。「h」とはhour、つまり「時間」を意味しています。仮に平均出力が5kWのソーラーパネルが2時間発電した場合、5kW×2時間=10kWhとなります。

太陽光発電設置におけるガイドラインとは?

太陽光発電の設置については、ほとんどの自治体がガイドラインを出しています。そのため、太陽光発電のリフォームを行う時はぜひ一度目を通すようにしましょう。

「(自治体名) 太陽光発電設置 ガイドライン」で検索したり、自治体に問い合わせたりする方法がおすすめです。もともと太陽光発電の事業計画という点では、経済産業省がガイドラインを定めていました。2020年には環境配慮ガイドラインが追加されるなど、定期的に内容も見直しています。

参照:経済産業省資料 事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)

1990年代からはじまった太陽光発電ですが、大きな特徴となっているのは電気を買い取ってくれる「FIT制度」です。家庭用の10kW未満の太陽光発電では自家消費で余った分だけを買い取る「余剰買取」がルールですが、産業用として10kW以上の出力を確保できる場合は、すべてを売電する「全量買取」ができます。

売電目的で巨大なソーラーパネル「メガソーラー」を多く設置する企業や投資家も多いものです。しかしその設置場所や方法について、住民とトラブルに発展する事例もあります。「反射光で熱中症になった」「太陽光発電設置のために行った除草対策で、農作物に被害が出た」などで裁判に発展した例も少なくありません。そこで多くの自治体が個別にガイドラインを定めることでトラブルを防ごうとしているのです。

太陽光発電のメリットとデメリット

投資効果があるといわれるが、メンテナンス費用に注意

「投資効果がある」「売電収入がある」といわれる太陽光発電ですが、メンテナンスに費用がかかるなど注意点もあります。

太陽光発電の収支をシミュレーション

太陽光発電に興味はあっても、「リフォームして初期費用が回収できるのか?」と心配する人は少なくありません。

しかし「太陽」という自然の力で発電する仕組み上、精度の高いシミュレーションは難しいのです。またソーラーパネルの大きさや性能、パネルのコンディションなどで発電量は大きく変わるため、一概には言えません。

一般的な年間発電量としては、以下の計算式があります。

パネルの出力電力(kW)×1か月の日射量×損失係数×12(か月)

損失係数とは、発電量を下げる要因となるものを言います。たとえば気温が25度を超えると0.5%ずつ発電量が下がるといわれていますので、夏以降は損失係数がかかります。そのほか、ソーラーパネルの経年劣化や汚れなども関係するのです。

太陽光発電のリフォーム業者にシミュレーションを依頼することもできます。また、ソーラーパネルを製造しているメーカーの多くがシミュレーションサイトを公開しているので、概算したいときには活用してみてはいかがでしょうか。

京セラ「住宅用ソーラー発電シミュレーション」

Panasonic「エネピタ(簡易版)」

太陽光発電システムのメリット

家庭用の太陽光発電を設置すると、以下のようなメリットがあります。

・光熱費の削減
作った太陽光を自家消費すれば、電力会社から電気を購入する必要がありません。つまり光熱費が削減できるため、月々のランニングコストで見るとかなりお得になるのです。

さらにリフォーム後は売電のために太陽光発電向けのプランを契約しますが、夜間の電気代が格段に安くなります。「昼の電気代が高い時は自家消費、夜は電力会社から安く買う」という仕組みで、「電気代0円」を謳うメーカーも少なくありません。

・売電による収入
太陽光発電の大きな魅力といえば「売電」です。自家発電で消費しきれなかった電力は、国が定めた「固定価格買取制度」(FIT制度)という仕組みによって電力会社に買い取ってもらえます。

FITでは家庭用で10年間は固定価格で買い取るというルールがあるため、10年間は価格が変わりません。節電して自家消費量を減らせば、ソーラーパネルが発電するだけで収入が発生するのです。

・災害時対策
自分の家で電気を作れたら、災害時に電力会社がダウンしても心配することがありません。もちろん夜間やくもりの日は電気が不足してしまいますが、スマホを充電したり冷蔵庫を稼働させたりといったことができます。

太陽光発電システムのデメリット

・安定性はない
太陽光発電のシミュレーションでも紹介しましたが、太陽光発電は文字通り「太陽」の出方次第で発電量が変わります。真夏で毎日強い日差しが降り注いでも、ソーラーパネルが25度以上になると発電力は下がるのです。

また売電価格も年々下がってきています。そのため、「毎月○万円は必ず利益が出る」「電気代が絶対0円になる」という保証はありません。

・設置費用がかかる
太陽光発電は光熱費が大幅に下がるので、ランニングコストは安くなります。しかし設置費用は高額なイニシャルコストが発生するため、導入を躊躇する人も少なくありません。

・悪質業者に注意が必要
電力自由化によって、多くのリフォーム業者が太陽光発電のリフォームを請け負っています。しかし中には悪質な太陽光発電業者もいるので、業者選びには慎重にならなくてはいけません。

経済産業省の調査によると、2015年度には3,300件を超える相談が国民生活センターに寄せられていました。「電気代がかからない」「太陽光発電の設置は義務になる」などと嘘の情報を言われたり強引な契約を迫ったりする業者もいるのです。

参照:経済産業省資料「太陽光発電に関するトラブルにご注意ください」

設置費用の相場はいくら?

太陽光発電は、ソーラーパネルなどの専用機器が必要

太陽光発電は、ソーラーパネルやパワーコンディショナーをはじめ専用機器が必要です。太陽光発電へのリフォームがいくら必要なのか見ていきましょう。

散太陽光発電の設置費用

ソーラーパネルのメーカーやモデル、大きさによって設置費用は大きく異なります。

1kWあたり約24万円~35万円前後が相場といわれているため、4kWの太陽光発電を搭載する場合は約96万円~140万円前後となります。

たとえば、Panasonicの「HIT」という太陽光発電の場合、装置の価格は以下の通りです。

装置型番価格(税抜)太陽光モジュール(P255αPlus)VBHN255WJ0117万6500円/枚パワーコンディショナー(3.0kWタイプ)VBPC230NC225万円発電モニターWQH7001W9万6000円 合計 52万2500円

参照:Panasonic公式サイト 住宅用太陽光発電システムより

上記のように装置だけで見ると、費用は約50万円ほどです。しかし実際は電気工事費や諸経費、取り付ける部材の調達などで費用が発生します。

また、太陽光発電は基本的に屋根に取り付けるため、足場代も忘れてはいけません。見積もりを依頼する時は、足場代を始め設置に必要な項目をすべて入れてもらうようにお願いするといいでしょう。

蓄電池を併せて設置

太陽光発電は、単体では電池を貯めておけません。そこで役に立つのが蓄電池なのです。蓄電池のメリットは、電力を貯められる点です。太陽光を蓄えておけば夜間にも使えますし、万が一の災害にも備えられます。

東日本大震災後の2012年からは蓄電池導入のための補助金制度が始まったこともあり、一気に普及が進んでいます。市場規模で見ると2017年度には800億円程度でしたが、2023年度には1200億円にまで成長すると見られています。

参照:財形新聞 家庭用蓄電池市場 2023年に1200億円規模に

10年の固定買取期間が終わったら売電をやめ、すべて自家消費に回すという人も多くいます。その場合は、蓄電池の取り付けが必須です。

蓄電池設置の初期費用は、安いものなら60万円からありますし、高性能なものなら200万円以上するものもあります。蓄電池の容量やメーカーによって大きく変わりますので一概には言えませんが、設置費用も合わせると費用相場は約100万円~200万円程度でしょう。

太陽光発電システム設置の条件

太陽光の当たり具合で発電量が変わる太陽光発電ですから、その設置方法にもポイントがあります。

屋根の面積と角度

たとえば年間3.3kWの太陽光発電を設置するためには、およそ10坪程度の屋根面積が必要といわれています。

また、効率よく太陽光を吸収させるためには角度も大事ですが、全国どこも同じわけではありません。一般的にソーラーパネルの角度は「30度」が良いとされていますが、土地の緯度が影響するので北上するほど適切な角度は上がります。

当然ながら、ソーラーパネルは大きいほど発電量が上がります。しかし、どれくらい搭載できるかは家の屋根面積に大きく左右されます。わかる範囲で、家の屋根の範囲について確認しておきましょう。

「もっとソーラーパネルを増やしたい」という人には、「ソーラーカーポート」が人気です。カーポートに太陽光パネルを設置した製品で、屋根以外にもパネルの積載面積を増やせます。ただカーポートは屋根より低いので影になりやすく、発電効率が落ちることもあります。

海沿いの家は要注意

海から近い住宅の場合は、「塩害」に注意しなくてはいけません。太陽光発電に必要な機器は潮風にさらされると錆びやすくなるので、対策が必要です。特に海岸から500m以内の住宅は「重塩害地域」とされ、太陽光発電の設置ができないケースもあります。

しかしメーカーによっては塩害対策を施した太陽光発電機器もあります。海沿いに住んでいる場合は、一度リフォーム業者に相談してみましょう。

太陽光発電システム設置までの流れ

何から始めればいいのかわからない太陽光発電リフォームですが、簡単な流れは以下の通りです。

①業者選定
複数のリフォーム業者から相見積もりを取り、依頼先を検討します。

②契約
依頼するリフォーム会社を決め、契約します。

③電力会社に申し込み
電力会社ごとに太陽光発電のプランが違うので、よく見くらべてから申し込みましょう。

④設置事業計画の申請と認定
リフォーム業者が設置事業計画を提案してくれます。その内容を元に、設置者は経済産業省に事業計画書を申請します。認定されるまで固定買取価格制度が適用されませんが、3か月以上かかることもあるので早めに申請しましょう。

申請はインターネットから行えます。
再生可能エネルギー電子申請:https://www.fit-portal.go.jp/

⑤工事開始
いよいよ太陽光発電のリフォーム工事がスタートします。長くても1週間ほどあれば取り付け工事は完了します。

⑥発電運用スタート
電力会社やリフォーム会社立会いの下試運転を行い、異常がなければ発電開始となります。

参照:太陽光発電協会「設置までの流れ」より

太陽光発電システムの設置でもらえる補助金

高額な費用がかかる太陽光発電リフォームですが、条件を満たせば国や自治体から補助金を受け取れます。

ZEH補助金

ZEH(ゼッチ)とはゼロエネルギーハウスのことで、太陽光発電のような再生可能エネルギーを導入することで年間のエネルギー消費量の収支をゼロに近づけることをいいます。

参照:資源エネルギー庁公式サイト

毎年資源エネルギー庁・国土交通省・環境省の3つが連携して「ZEH支援事業(補助金)」制度を実施しています。

ZEHを目的としたリフォームであれば補助金が出るので、リフォーム前はぜひ条件をチェックしてみましょう。毎年環境共創イニシアチブ公式サイトで公募情報が公開されています。

環境共創イニシアチブ ZEH支援事業公募情報

各自治体の補助金

太陽光発電へのリフォームは住宅性能を上げることにつながるので、各自治体も補助金制度を用意しています。

たとえば東京の場合は「住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進事業」として、太陽光発電1kWあたり10万円の補助金を出していました。

参照:クール・ネット東京 住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進事業

条件を満たせば、国と自治体の両方から補助金を受け取ることができます。ぜひお住まいの自治体の補助金制度が利用できないか調べてみましょう。

太陽光発電システムの設置で起こりうるトラブルと注意点

太陽光発電システムは屋根に取り付けるため、設置には注意点もあります。

雪止めなど地域に合った施工か

ソーラーパネルなどの太陽光発電機器は、それ自体に重さがあります。だいたいソーラーパネル1枚で20㎏前後といわれていますが、その上に積雪するとさらに家に負荷がかかってしまうのです。

その結果、家が重さに耐えきれず損傷したケースもあります。また、雪がソーラーパネルを覆ってしまうと発電も効率的に行えません。雪が多い地域なら、雪対策をしっかり行ってくれるリフォーム業者を選びましょう。

業者選びは施工実績が多い会社を選ぼう

前述したように、太陽光発電では悪質な業者のトラブルもあります。リフォームを検討する時は、実績が多く評判のいいリフォーム会社を選ぶことをおすすめします。

太陽光発電のリフォームは家の立地や環境などたくさんの条件が影響するので、リフォーム業者の「経験値」が重要です。経験豊富なリフォーム業者なら、最適なリフォームを行ってくれます。

太陽光発電システムを導入したら確定申告が必要?

売電によって発生した収入は、場合によっては確定申告の対象となります。

会社員の場合は、給与以外の年間所得が「20万円」を超えると確定申告の対象となります。しかし家庭用として発電している場合、売電価格だけで年間20万円を超えることは滅多にありません。

太陽光発電の売電以外に副業による収入がある方は、確定申告の対象にならないかチェックしたほうがいいでしょう。

条件によって運用方法は大きく異なる

太陽光発電の仕組みや費用、メリットやデメリットなどを紹介しました。昨今のトレンドともいえる太陽光発電ですが、屋根や立地条件、土地柄によってその運用方法は大きく違います。リフォームを検討するなら、一度専門家に相談してみましょう。

家で電気を作れると光熱費の削減にもなりますし、災害時の停電対策もできます。売電の固定価格買取は10年という期間がありますが、収入以外にもメリットがあるのでぜひ検討していただきたいリフォームの1つです。

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