国連も把握しながら何もできない…中国のウイグル弾圧の真実

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。6月2日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、元財務官僚でニューヨーク州弁護士の山口真由さんが“中国のウイグル弾圧”について述べました。

◆中国によるウイグル弾圧、その真相は?

米議会下院は、中国政府によるウイグル族などイスラム教の少数民族弾圧に関与した人物に制裁を科すようトランプ政権に求める法案を可決。上院はすでに全会一致で可決済みで、法案は今後ホワイトハウスに送付。トランプ大統領の署名を経て、成立する見通しということです。

ウイグル問題とは、中国西部ウイグル自治区のイスラム教徒ウイグル族に対し、中国政府が行った共産主義の再教育などを理由に教育施設に送る弾圧のこと。そして、今回の制裁法案は「ある意味で香港に対するものよりも重いと言われ、去年のものよりもさらに強い」と山口さんは言います。

そんな山口さんの学生時代の同級生にウイグル出身者がおり、彼女の両親が卒業式に突如来られなくなったことがあったそう。その理由は、彼女の弟がアメリカから帰国後すぐに行方不明になってしまったから。両親は不安にかられ、アメリカに行ったら攻撃される、娘も被害に遭うのではないかと思い渡米を断念したそうです。

◆不当な拘束は「珍しいことではない」

結果的に弟は15年の懲役刑を受けていて、それを彼女が知ったのは今年1月。それも両親のもとではなく、アメリカの議員に連絡があったそう。その後、彼女は山口さんなど友人に全てを話し、世界に向け声を上げ始めたのですが、中国に住んでいる両親に迷惑がかかるかもと、とても悩んだそうです。

ちなみにMCの堀潤がウイグルの方から聞いた話によると、現地では現状を国外に伝える手段は全てモニタリングされている可能性があり、実に苦しい状態にあると言います。

この件で山口さんが特に驚いたのは、彼女の弟が本当に何もしていないということ。アメリカのさまざまな場所で写真を撮ったり、民族衣装を着てアメリカ議会の人と撮ったりした写真が中国版SNSに流れ、それだけで連行されたそう。さらに、これを国連の方に話しても「かわいそうだけど珍しいことではない」と言われたことにも驚愕。そもそも中国では何の理由もなく勾留された人が1万~100万人いると言われ、極論「イスラム教徒ということだけで突然連れていかれる恐怖のなかにいる」と山口さん。

そんな現状に、「中国は今いいところばかり報道し、私たちも普通の国と思い始めている。でも、決して普通じゃないことが現代社会で行われていることは絶対に忘れてはいけない」と山口さんは主張します。

作家の田中康夫さんも「中国に多くの問題があることは明らか。ひどい話でもある」と言い、「中国は自治区と言いながら自治になっていないし、本来連邦制にすべきなのに、それをしたら崩壊してしまうと思い込んでいる」と持論を展開。

実態を把握しながら対処できているのか危うい国連に対し、堀、山口さんともども「常任理事国以外の国々の活動が必要」と指摘しつつ、さらに山口さんはイスラム教徒の国が中国との貿易の関係でこの問題にほとんど声を上げないことも嘆きます。そして、この問題は米中対立の真っ只中、アメリカの大きな権力構造内で深刻化していることではあるものの、「私の友人にしてみればそれだけが希望なので、一人ひとりが絶対に忘れないことで繰り返し声を上げていくことが大事」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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