『いつくしみふかき』実話とは到底思えないすごすぎる話

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 劇団チキンハートを主宰する遠山雄の知人とその父親をめぐる実話をベースにしたドラマです。こんなことがあるの!? 事実は小説よりも奇なりといいますが、実話だとはとても信じられない話です。監督を務めた大山晃一郎はゆうばり国際ファンタスティック映画祭をはじめ多くの映画祭で、高い評価を集めました。

 多くの人が関わっているこの実話を映画化するのはとても大変だったようで、チキンハートの劇団員たちが熱心に通ったことで映画化の許可が下りたのだそうです。渡辺いっけいが演じる主人公の広志は、妻が出産中に妻の実家に盗みに入ります。ですが、盗みはすぐにバレてしまい、彼は悪魔として村を追い出されてしまいます。30年後、村で連続空き巣事件が起こり、村人の容疑は、広志の息子である進一に向けられてしまいます。父と同じように村から追い出された進一と、広志は一体どこで出会うことになるのか? それは、ぜひ映画で! ちなみに進一役は、遠山本人が熱演しています。切ってもきれない父と息子の関係はもちろんですが、自分自身、母親の私としては、息子を信じない母親に対する怒りが大きかったんです。映画によって誰に共感するかというのは本当に人それぞれで、感じることも、全て十人十色なんだろうなと映画の面白さを改めて感じることができました。田舎町の風景の美しさ、そして、進一と広志の周りの人々のあたたかさがスクリーンのこちらまで伝わってきて、暖かい気持ちになれる映画でした。荒削りな中に、なんとしてでも、物語を伝えたいと最後まで熱を持ってこの作品を届けようとした俳優、スタッフの思いがスクリーン越しに伝わってくる素晴らしい作品でした。★★★☆☆

監督:大山晃一郎

出演:渡辺いっけい、遠山雄

6月19日から全国順次公開

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