斉藤和巳氏、ホークスに太鼓判も日ハムが「不気味」 混セは中日に投手王国復活の予感

元ソフトバンクの斉藤和巳氏【写真:松橋晶子】

古巣ソフトバンクで期待するのは「東浜ですね」

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今季開幕が延期されていた日本プロ野球。緊急事態宣言が解除され、6月19日に待望の開幕を迎えることになった。自主練習で体力と技術を磨いていた選手たちは、練習試合でチームとしての結束を高め、12球団はそれぞれ優勝を目指して最終調整を行っている。

開幕が待ちきれないファンのために、今シーズンのセ・パ両リーグの展望を元ソフトバンク右腕で野球解説者の斉藤和巳氏に語ってもらった。斉藤氏は2月1日から15日まで宮崎と沖縄を訪れ、12球団すべてのキャンプを視察。沢村賞を2度獲得した元エースは、各チームの仕上がり具合をどう見るのか。

まずは、パ・リーグから。昨季は西武がリーグ2連覇を飾ったが、クライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜き、日本シリーズを制覇したのは斉藤氏の古巣でもあるソフトバンクだった。ソフトバンクはキャンプイン後に故障者が相次いでいるが、「全体的な戦力の厚みはあると思います」と話す。

オフには、昨季までヤクルトの打線を支えたバレンティンを獲得。「実績のある選手。リーグは変わっても交流戦で十分な免疫はできていると思います。守備はね……目をつぶりましょう(笑)」。昨季FA権を獲得したため外国人枠の対象とならないことも、デスパイネ、グラシアル、モイネロ、バンデンハーク、サファテ、新加入のムーアら外国人選手を多く抱えるソフトバンクにとっては大きい。

今季、斉藤氏が注目したいのは「東浜(巨)ですね」。2020年は29歳右腕にとって「大きな分岐点になるんじゃないか」と見ている。

「2017年最多勝を獲った後、昨年、一昨年と悔しい思いをした。昨年は手術もしていますから、プロ野球人生の中でも大きな分岐点になるんじゃないかと。本人もそれは重々承知しているようです。投手陣に怪我人が出てきているので、実績のある投手への期待は高まってくるはず。ここで頑張ってほしいですね」

戦力補強に励んだ楽天とロッテに隠れて「不気味な感じがする」球団は…

大きな打撃となりそうなのは、2年目右腕・甲斐野央の故障だ。昨季はルーキーながら8回と9回を任され、日本一に貢献したが、キャンプ中に右肘を痛めて開幕は絶望となった。ソフトバンクは最近、岩嵜翔や加治屋蓮などセットアッパー経験者に故障が続いており、斉藤氏は「魔の8回」と呼ぶ。

「ホークスは8回を投げていたピッチャーが毎年潰れている。そこは正直、考えないといけないと思いますね。甲斐野はルーキーですけど、岩嵜にしても加治屋にしても、1軍でなかなか結果が出なかったところで大抜擢されてハマった。監督やコーチが勝ちたい、使いたいのは分かりますけど、選手は『大丈夫か?』と聞かれたら『大丈夫』と答える生き物。だから、3年連続で怪我を出してしまったら、そこの責任は感じないといけないと思います」

故障者は多くても層の厚さでカバーできるであろうソフトバンク。ここへオフに大戦力補強を行ったロッテと楽天がどう絡むのか。「積極的に補強した選手がどれだけ機能するか、補強で激しくなるチーム内のポジション争いが他の選手にどう影響を与えるのか、それがチームとしてどう上手く機能していくのかが楽しみ」とする一方で、気になるのが日本ハムだという。

「他のチームよりも目立たないポジションにいる日本ハムが怖いんですよ。なんか不気味な感じがしますね。大体ノーマークの年に来るんですよ(笑)。今年一番の補強は小笠原(道大)ヘッドコーチというくらい、選手の動きは少なかった。ただ、新外国人選手たちが機能すると面白くなりそうです。3年目の清宮(幸太郎)も、ヤクルトの村上(宗隆)があれだけ活躍したから刺激になっているでしょうし、彼の能力を考えればそろそろ1軍での定着を期待したいところですね」

リーグV3を狙う西武は秋山翔吾がメジャーへ旅立ち、松坂大輔が加入。米通算282本塁打を誇るアダム・ジョーンズを加えたオリックスの奮闘にも期待したい。

混戦模様のセ・リーグで活気を感じた中日の投手陣「競争が始まってきた」

続いて、セ・リーグに話題を移すと「う~ん、混戦ですね……。抜けているチームはどこもないですよね……」と、困った様子の斉藤氏。だが、これまでにない活気を感じ取ったのは、中日の投手陣だったと明かす。

「6年前のキャンプで、引退して初めて見た時のブルペンは(山本)昌さんや(川上)憲伸さんといったベテランの方がいらっしゃって『これはいいブルペンだな、絵面がいいし活気があるな』と思ったんです。でも、ここ数年は『大丈夫かな、これは監督もコーチも大変やな』って思っていたところに、今年は久々にブルペンを見て活気を感じたんですよ。若い投手が出てきて競争が始まってきた。昔の投手王国と呼ばれた時の匂いを僕は感じました。メンバーを見ても、ボールを見ても、順調にいけば面白いなって」

昨季はリーグ4連覇を逃し、新たに佐々岡真司監督を迎えた広島は「悔しい思いをして、戦力がまずまず整っている状態」と分析。「注目のドラフト1位・森下(暢仁)がローテーションに入れるか。カープは大卒投手の使い方が上手いですからね」と期待すると同時に、遊撃手事情にも注目している。

「まずはセカンドに菊池(涼介)が残ったことが大きい。そしてショートが田中(広輔)と小園(海斗)でどうなるか。去年辛い思いをした田中は30歳で、まだまだ選手として脂が乗っている。ただ、小園も成長してますから、そこは競争させると思いますが、小園をベンチに置くのはもったいない。どういう判断になるのか気になりますね」

元投手の斉藤氏らしく、ヤクルトと巨人に関しては「先発ローテに誰が入るのか、少し考えないと出てこない」と指摘。どちらも「打線は頑張れそうなので、シーズンを通して投手がどこまで頑張れるか」と話す。

外国人選手が鍵を握りそうなのがDeNAと阪神だという。DeNAは新加入のオースティンが練習試合でも好調なバッティングを維持。「ソトが外野に回ることもあると思いますが、ロペスと合わせて、3人の外国人野手をどう起用するかですね」という。阪神期待の新外国人ボーアは昨季、大谷翔平と同じエンゼルスに所属。その姿をたびたび中継で見た斉藤氏は「僕は空振りしか見たことがないんですよね」と笑うが、侮れない存在だと見ている。

「実は楽天のブラッシュも同じだったんですよ。日本に来る前は『空振りばかりしてボールが当たらないな』と思っていたら、大活躍しましたからね(33本塁打・95打点)。どうなるかは分からない。阪神の打撃コーチ、井上一樹さんに聞いたら『パワーはある』とは仰有ってましたし、可能性はありますよね」

6月19日に開幕する2020年シーズン。セ・パ12球団それぞれ、今年もまたエキサイティングな戦いで観る者を楽しませてくれることだろう。(Full-Count編集部)

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