好雨と膏雨を

 きのうは梅雨の晴れ間に青空を仰いだが、天気はまた下り坂らしい。蒸し暑さに弱りがちな時節、「雨のことば辞典」(講談社学術文庫)をぱらぱら繰ってみる。例えば「好雨(こうう)」とは「程よい時に降る雨。よい潤いをもたらす雨」と知って、心もいくらか潤う▲好雨のそばに「膏雨(こうう)」がある。これも「草木を育成させる、程よい雨」をいい、恵みの雨と呼ぶにふさわしい▲程よい時、必要な時に、潤いをもたらしているか。コロナ危機に対応する政府の給付金、助成金の支給が遅い、と批判がやまない。中小企業向けの持続化給付金は、申請からひと月たっても届かないケースが5万件あるという▲安倍晋三首相は国会で「現場が何もやっていないのではない」と給付の事務に関わる側をかばい、「書類に問題がある」と語気を強めた。申請した側の不備だと言いたいらしい▲申請者と連絡がつかない、求めた通りに修正されない-と事情はあるらしいが、逆に給付を待ちわびる人が電話で問い合わせても一向につながらず、不安がる声も強い。乾いた土地に好雨、膏雨が降り注がない▲給付を「一生懸命やっている。評価してほしい」と首相が言い残し、通常国会はきょう幕を閉じる。政治が議論から遠のく間に、悲しみの涙雨が世で大降りにならないか。天を仰ぎ見る。(徹)

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