MVPとサイ・ヤング賞の受賞回数は殿堂入りの目安となるか

全米野球記者協会(BBWAA)の投票によって選手へ与えられるアウォードとしてMVP、サイ・ヤング賞、新人王がある。しかし、これらの各賞を受賞した全員がアメリカ野球殿堂入りを果たすわけではない。メジャーリーグ公式サイトのサラ・ラングスは、MVPとサイ・ヤング賞の受賞回数が殿堂入りの目安となるのかどうかを分析している(BBWAAによるMVP投票が開始された1931年以降が対象)。

MVP、サイ・ヤング賞、新人王のうち、最も新しいアウォードは1956年に制定されたサイ・ヤング賞である。この1956年以降に引退して殿堂入りを果たした110人のメジャーリーガーのうち、これらの各賞の受賞経験がない選手は44人もいる。つまり、これらの各賞を受賞することは、殿堂入りのための必須条件ではない。

しかし、MVPを3度以上受賞した選手に目を向けると、ヨギ・ベラ、ロイ・キャンパネラ、ジョー・ディマジオ、ジミー・フォックス、ミッキー・マントル、スタン・ミュージアル、マイク・シュミット、バリー・ボンズのうち、ステロイド問題を抱えるボンズ以外の7人が殿堂入りを果たしている。「MVP3度以上」は殿堂入りの切符と呼ぶことができそうだ。

★MVP3度以上のその他の選手
アレックス・ロドリゲス(2022年から投票対象)
マイク・トラウト(現役・エンゼルス)
アルバート・プーホルス(現役・エンゼルス)

MVP受賞回数が2度の選手では、過去15人のうち、フアン・ゴンザレス、ロジャー・マリス、デール・マーフィーの3人を除く12人が殿堂入りを果たしている。しかも、カール・ハッベル(4年目)、ハンク・グリーンバーグ(10年目)、ハル・ニューハウザー(15年目)を除く9人が有資格初年度での殿堂入りを達成。「MVP2度」は殿堂入りが確実とまでは言い切れないものの、その可能性は極めて高いと言える。

★MVP2度のその他の選手
ミゲル・カブレラ(現役・タイガース)

MVP受賞回数が1度になると、殿堂入りしている選手(42人)の数を殿堂入りしていない選手(47人)の数が上回っている。もちろん、イチローのようにMVP受賞回数が1度だけでも殿堂入りを確実視される選手もいるが、過去のデータから判断する限り、「MVP1度」の選手が殿堂入りする可能性は五分五分だ。

では、サイ・ヤング賞の場合はどうだろうか。3度以上受賞した投手では、ランディ・ジョンソン、スティーブ・カールトン、グレッグ・マダックス、サンディ・コーファックス、ペドロ・マルティネス、ジム・パーマー、トム・シーバー、ロジャー・クレメンスのうち、ステロイド問題を抱えるクレメンス以外の7人が殿堂入りを果たしている。MVPの場合と同様、「サイ・ヤング賞3度以上」は殿堂入りの切符と呼ぶことができるだろう。

★サイ・ヤング賞3度以上のその他の投手
マックス・シャーザー(現役・ナショナルズ)
クレイトン・カーショウ(現役・ドジャース)

ところが、サイ・ヤング賞受賞回数が2度になると、殿堂入りしている投手の割合が大幅に低下する。ボブ・ギブソン、トム・グラビン、ロイ・ハラデイ、ゲイロード・ペリーの4人が殿堂入りしているのに対して、デニー・マクレーン、ブレット・セイバーヘイゲン、ヨハン・サンタナの3人は殿堂入りしていない。

後者3人は故障などにより全盛期が短く、勝利や奪三振といったスタッツを十分に積み上げることができなかった。2022年から投票対象となるティム・リンスカムも全盛期が短かった投手であり、残念ながら後者3人の仲間入りを果たす可能性が高い。「サイ・ヤング賞2度」の投手が殿堂入りできるかどうかは、過去のデータから判断する限り、五分五分と言わざるを得ない。

★サイ・ヤング賞2度のその他の投手
ジェイコブ・デグロム(現役・メッツ)
コリー・クルーバー(現役・レンジャーズ)
ジャスティン・バーランダー(現役・アストロズ)

サイ・ヤング賞を1度だけ受賞した投手では、殿堂入りした投手が10人であるのに対し、殿堂入りしていない投手は34人もいる。殿堂入り投票の対象とならなかった投手すら3人もおり、「サイ・ヤング賞1度」は殿堂入りの行方を判断するうえで何の参考にもならないことがわかる。2021年にバリー・ジート、2022年にジェイク・ピービー、2023年にR・A・ディッキー、2024年にバートロ・コローン、2025年にCC・サバシアが投票対象となる予定だが、このなかで殿堂入りできるのは、おそらくサバシアだけだろう。

© MLB Advanced Media, LP.