衝撃!ブルーザー・ブロディの新日移籍を演出したベートーヴェン「運命」 1985年 3月21日 ブルーザー・ブロディが新日本プロレスに移籍した日

ファンを興奮させた対立構造、猪木の新日か? それとも馬場の全日か?

80年代の初めは、金曜8時のテレビ朝日系『ワールドプロレスリング』と、土曜夕方5時半の日本テレビ系『全日本プロレス中継』が、プロレスファンの大好物だった。“新日派 or 全日派” などという問いかけが、“プロレス好き” と語ったと同時に始まり、どちらのファンであっても、その勢力拡大は止まることがなかった。

アントニオ猪木 vs ジャイアント馬場の構図で開始された両者のライバル関係であったが、個人的にはどちらも好きだ。小柄だがハイスピードの試合が増えてきた新日本プロレスと、大型でパワフルなレスラーが多い全日本プロレスは、それぞれの持ち味を十分に発揮。大いにファンを興奮させてくれていた。

余談だが、国際プロレスも捨てがたく、伝統を感じさせるワンショルダータイツのアニマル浜口と大相撲出身ながらバランスのとれたドロップキックを繰り出す寺西勇が好きだった。

入場曲はクラシック! ベートーヴェン交響曲第5番「運命」

さて、新日と全日のライバル関係が、さらに激烈になる事件があった。それが1985年3月21日のブルーザー・ブロディの新日移籍である。その前年に、長州力率いるジャパンプロレスの面々やダイナマイト・キッド、デイビーボーイ・スミスといった人気レスラーを全日が引き抜いた報復だと噂された(それ以前にも1981年、スタン・ハンセンが引き抜かれている)。

でも、当時、全日のスタイルにピタリとはまり、外国人トップレスラーの座にあったブロディが、まさか新日に登場し、古舘伊知郎のアナウンスでブラウン管に現れるとは微塵も思っていなかった。新日派からは「まさに溜飲が下がる思い」という声が聞こえた。

その日私は、京都のはずれにある国立病院に居た。病室は個室で、夜は誰に気兼ねすることなく大音量でテレビを観ることができる。そして待ちに待ったブロディの登場を迎えた。会場に響き渡ったのは『運命』。そう、子どもの頃から聴きなれたベートーヴェン先生の名曲だ。これには意表をつかれた。まさかプロレス会場にクラシックが流れるとは……。スーツ姿のブロディにもビックリだ!

しかし、冒頭のセンセーショナルなメロディは、ブロディの初登場をさらにドラマチックに仕立て上げた。今でもこの曲を耳にすると、ブロディのことを思い出すのは、私ひとりではないだろう。

※2017年1月7日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 小山眞史

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