定期預金の利率の引き下げ、今どこに高い金利がある?他国の高金利の理由とは

4月、大手銀行や地方銀行が定期預金の利率を引き下げました。それ以前は預入期間の長短、預入金額の多寡に関係なく年0.01%だったのが、新しい利率は年0.002%になりました。果たして今、どこに高い金利があるのでしょうか。


100万円を10年預けた利息がたったの200円?

現在、多くの銀行が扱っている定期預金に適用されている年0.002%という利率がいかに低いかは、実際に金利計算をすれば分かります。

たとえば手元の100万円を10年間預けた場合に得られる利息は、たったの200円にしかなりません。それも税引き前です。時間外や休日にATMから現金を引き出したら、あっという間に利息分など吹き飛んでしまいます。

しかも「10年間預けて……」の話です。この超低金利が続く限り、銀行預金はお金を置いておく場所に過ぎず、お金を殖やす金融商品としての機能は期待できません。

でも、この状況は日本に限った話ではなく、すでに多くの先進国が同じような状況に陥っています。新型コロナウイルスのパンデミックによる景気低迷リスクを最小限に抑えるため、米国やユーロ圏の中央銀行が量的金融緩和に踏み切った結果、欧米先進諸国でも金利がほとんど付かない、もしくはマイナスという状況になっています。

最も利回りの高い国債は?

では、どこにお金を持って行けば金利が得られるのでしょうか。

掲載した表を見てみましょう。これは国債を発行している国の長期金利を比較したものです。長期金利はその国の金利のベースになるもので、多くの国では償還までの期間が10年の国債利回りを「長期金利」としています。ちなみに10年物国債が発行されていない国については、現在発行されている国債の中で最も償還期間の長いものをピックアップしました。

表は、左の上から下、右の上から下という順番で、徐々に長期金利が低くなるように並べています。つまり左側の一番上にあるアルゼンチンが最も高く、右側の一番下にあるスイスが最も低いということになります。

さて、こうしてみると金利の高い国はまだまだあることが分かります。ここで取り上げている長期金利は2020年6月12日現在のものです。アルゼンチンなどは償還期間4年の国債で利回りは年48.880%です。そしてウガンダの年15.290%、エジプトの年14.316%、トルコの年12.365%と続きます。利回りが年48%だとしたら、100万円が1年で148万円になるわけですから、これはかなり魅力的です。

貸したお金が返ってこないリスク

でも、高い金利には相応のリスクがあります。

どうして日本の10年物国債利回りが年0.010%なのに、アルゼンチンだと4年物国債で年48%超というとんでもない利回りになるのでしょうか。

国債は国の借金です。お金を貸す側からすれば、返してもらえなくなるリスクがある相手には、できるだけ貸したくないと考えるでしょう。それでも貸すとするならば、何か見返りが欲しいところです。つまり高い金利は、貸したお金が返ってこないかも知れないリスクを負うことに対する見返りなのです。

掲載表の利回りの横にある「自国通貨長期格付」を見て下さい。これは格付会社であるスタンダード&プアーズ(S&P)のもので、最も高いAAAからAA、A、BBB、BB、B、CCC、CC、C、Dという10段階で、元利金返済の確実度合いを示しています。この格付でBB以下の債券を「投資不適格債(もしくはジャンク債)」といって、BBB以上の債券に比べて貸したお金の返済が滞るリスクが高いと考えられています。

なお、アルゼンチンの場合は「SD」と表記されていますが、これは「選択的債務不履行」のことで、同国が国債を発行して調達した資金の一部がすでに焦げ付いていて、返済出来なくなっている状態であることを示しています。アルゼンチンはある意味、債務不履行の常習者のような国で、5月22日に約5億ドルの国債利払いが出来なくなったことから、2014年以来、何と9度目(!)の債務不履行に陥りました。だからアルゼンチンの国債は、年48%超もの高利回りになっているのです。

どんな国債でも買えるわけではない

「それでもイチかバチかでアルゼンチン国債を買いたい」という人も、ひょっとしたらいるかも知れません。

今のテクノロジーをもってすれば、海外の債券市場でも、株式市場と同様に個人の売買注文を出せそうなものですが、実は債券市場は機関投資家中心のマーケットであり、最低の売買ロットが株式とは比べ物にならないくらい高額だという現実問題にぶつかります。つまり、個人投資家が債券市場で取引されているさまざまな債券を自由に売買するのは、現実的に不可能です。

それでも時々、インターネット証券会社が高利回り外貨建て債券を個人向けに販売しているのは、その証券会社が在庫として確保している債券を、個人でも買えるように小口に切り分けているのです。トルコ・リラ建て債券やロシア・ルーブル建て債券、南アフリカ・ランド建て債券などは、表面上の利回りが高いという理由で購入する個人もいますが、これらの外貨建て外債も、販売している証券会社が在庫として抱えているものを、個人向けに小口分売しているだけの話です。

したがって、確かにアルゼンチン国債やウガンダ国債の利回りは魅力的ですが、証券会社に在庫が無ければ、いくら利回りが魅力的であっても個人は買うことができません。それに、そもそも「SD」などという低格付けの債券を、日本の証券会社は個人向けに販売しないでしょう。

なぜなら後々、顧客との間でトラブルのもとになるリスクがあるからです。実際、アルゼンチン国債が2001年に債務不履行に陥った時は、日本の個人もそれを買っていたため、ちょっとした騒動になりました。

人気の高利回り外債のリスク

前出のトルコ・リラ建て債券やロシア・ルーブル建て債券、南アフリカ・ランド建て債券などは時々、個人向けに販売している証券会社を見かけますが、これらについても格付はBBBもしくはBBなので、債務不履行になるリスクが小さいわけではありません。

それに、この手の低格付け・高利回り債券には、債務不履行以外のリスクも存在します。具体的には為替のリスクに加えて、リスクとは意味合いが異なりますが、高いコスト負担を強いられます。つまり総合的に考えると、高利回りの外貨建て債券は、投資しても割に合わないということになるのです。

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