県内観光回復へ期待 新型コロナでの県境またぐ移動解除

県境をまたぐ移動自粛要請の全面解除を受け、県内の在来線特急を通常ダイヤに戻すJR九州。宮崎駅も利用者の増加が期待される=18日午後

 新型コロナウイルス感染拡大で制限されていた都道府県をまたぐ移動の自粛解除を受け、県内の観光業界は旅行需要の回復に期待を膨らませている。公共交通機関は解除日の19日以降、再開の動きが広がる見通しで、「感染防止策を取って近隣県から客を呼び込みたい」と観光関係者。一方で人の動きが盛んになれば、感染リスクも高まり「足を運んでもらえるだろうか」と懸念する声も交錯する。
 宮崎と福岡を往復する高速バス「フェニックス号」は通常の半数の28便(14往復)に減便していたが、同日から34便(17往復)に増やす。宮崎交通乗合業務課は「6月上旬の乗車率は昨年の2、3割程度。移動の緩和が少しでも利用者増につながれば」と前を向く。
 JR九州も同日から、一部運休していた県内の在来線特急を通常ダイヤに戻し、観光列車「海幸山幸」も20日から再開。空の便では、全日空(ANA)や日本航空(JAL)が7月に約50%の便数に戻る見込みだ。
 県をまたいだ移動の復活が見込まれる中、熊本県境に近い五ケ瀬ワイナリー(五ケ瀬町)の宮野恵支配人は「今月の来場者は例年の5割に満たない。19日を境に近隣県からのお客さんが少しずつ戻ってほしい」と切実な思いを語る。
 鹿児島県と本県を周遊する行楽客らの利用が多い高千穂牧場(都城市)。営業部の馬場俊一次長は「夏にかけて来場者が戻り、地域の観光施設にも人が流れてほしい」と願いを込めた。
 一方、新型コロナ収束のめどは立っておらず、感染第2波も懸念される。「観光客が警戒心を持ち続ける中で、どれだけの人が遠出を決め、足を運んでくれるだろうか」と不安を口にするのはサンメッセ日南(日南市)の井上利明総務課長。いまだ先行きを見通せない様子だった。

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