大津・比叡山 MaaS 実証の結果公開。アプリ・乗車券とも目標突破

昨年11月1日から12月1日まで、滋賀県大津市内と大津市と京都市にまたがる比叡山で MaaS 実証実験が行われた。同実証を率いた大津市、京阪ホールディングス株式会社、京阪バス株式会社、日本ユニシス株式会社らは6月16日、実証結果を公開した。

実証では、地域内移動の利便性向上、誘客・周遊の促進の効果を検証。スマホ向けの観光 MaaS アプリ「ことことなび」を通じてさまざまなサービスを提供した。例えば、アプリ内で鉄道・バス・ケーブルカー・ロープウェイが乗り放題で、大津市内と比叡山の観光地にスムーズにアクセスできる1日乗車券を販売。そのほか、観光案内やルート検索機能、乗車券エリア内の観光施設などで利用できるクーポンの提供、アプリを活用したスタンプラリーなども実施した。

結果は、ダウンロード数が2,808件、乗車券販売枚数が1,398枚。当初ダウンロード数2,000件、乗車券販売枚数1,000枚を掲げており、それぞれ目標を突破した。

「ことことなび」アプリ画面(一部抜粋)

■実験結果のハイライト

・アプリダウンロード累計数は、1週間ごとの数値を公開。11月3日の516件から最後に計測した12月1日(2,808件)まで、ダウンロード数は右肩上がりに増加した。

・国別では、日本ユーザーが2,345件に及び、全体の8割以上を占めた。国外のユーザーでは中国(38件)・台湾(35件)・香港(11件)が多かったが、これらを含めた国外ユーザーの合計は全体の3%にとどまった。なお、アプリは日本語・英語の2カ国語対応。

・年代別に見ると、50代のダウンロード数が最も多く407件で、乗車券の購入数も228枚と最多だった。一方、ダウンロード数と乗車券の購入枚数から算出する購入率で見ると、60代が91.1%と最も高かった(192件中175枚購入)

・乗車券は鉄道・バス・ケーブルカー・ロープウェイなど、利用可能な交通サービスの範囲によって4種類を販売。全て乗り放題で最も高額の「ことこと 比叡山周遊」1日乗車券(大人3,000円)が698枚と最も購入された。一方、最も安価な700円に設定された京阪電車大津線が乗り放題の「ことこと 大津市内」1日乗車券は56枚の購入にとどまった。

・旅行形態は日帰りの利用が48.9%と全体の半数近くを占めた。次いで宿泊利用で21.7%。地域住民の利用は9.8%だった。

■京阪HD「スマホによる乗車」に手ごたえ

今年1月、京阪ホールディングスの執行役員を務める吉村洋一氏が大阪商工会議所が開催したMaaSフォーラムに登壇した。

その際、実験結果について触れており、「ダウンロード数・デジタルフリーパス(乗車券)の利用数がともに予想を上回った。特筆すべきは、デジタルフリーパスの利用率。ダウンロード数の半分もの利用があり、スマートフォンによる乗車が一定以上受容されることが示された」と手ごたえを得ていた。

一方、今回の実験結果では発表していないが、クーポンの取得率は予想を下回る700件と伸び悩んだことも明かしていた。吉村氏は「もう一工夫必要だった」と振り返り、将来的には、「(都市型など)他のタイプのMaaSにも取り組んでいきたい」と意欲を見せていた。

■実験結果の詳細

(記事/和田 翔)

© 株式会社自動車新聞社