「収入3割以上減」なら申請すべき、コロナの影響に伴う国民健康保険料減免制度

コロナによる経済難の影響を受けやすいフリーランスや非正規雇用の人たちにとって、国民健康保険料の納入はかなりの負担ですが、今年はコロナウイルスの影響で収入が減少した人を対象に、保険料の減免措置が行なわれています。

条件によっては、保険料の全額免除や80%免除もありうるこの措置は、知っておくに越したことはありません。


コロナの影響で国民健康保険の支払いに負担も

コロナ禍で長く続いた自粛要請により、飲食店やサービス業のみならず、レジャー産業やエンターテイメント産業、スポーツ業界など、さまざまな業界が売り上げ面で深刻な影響を受けました。

上記のようなサービス業の人たちは、正社員として社会保険に加入していないケースも多く、かなりの人が国民健康保険に加入しています。6月になって、今年分の国民健康保険の保険料納付書が送付されはじめていますが、この納付額は昨年の収入をもとに算出されるため、今年の経済状況では払うのが困難だと途方にくれた人もいるのではないでしょうか。

社会保障費の増大を背景に、国民健康保険の保険料は年々増大しています。日本の国民皆保険制度は、誰もが公平な医療を受けるために必要な制度ですが、普段病院にほとんどかからない人にとっては、過大な負担と考えられるもの無理のないことです。

フリーランスで働く人たちは、実際の仕事を行なってからギャラの支払いまで数ヶ月のタイムラグがあるのが普通ですし、収入の減少は今年一杯続くという人も多いはずです。

1,000万円以下の前年所得から3割減が条件

そのような人たちのために、実は、国民健康保険料の「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う減免」が行なわれています。しかし、行政による告知があまり積極的に行なわれているとはいえず、知らない人が多いのではないでしょうか。収入減少のために保険料の支払いが困難になっているのなら、ぜひ利用するべき制度です。

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う減免対象となる世帯には、二通りの条件があります。

ひとつは、
①新型コロナウイルス感染症により、主たる生計維持者が死亡又は重篤な傷病を負った世帯
です。

もう一通りの条件は次の通りです。該当する人数としてはこちらのほうが多いでしょう。
②新型コロナウイルス感染症の影響により、主たる生計維持者の事業収入の減少が見込まれ、次の(ア)から(ウ)までの全てに該当する世帯
(ア) 主たる生計維持者の事業収入等の減少額が前年の額の10分の3以上
(イ) 主たる生計維持者の前年の合計所得金額が1,000万円以下
(ウ) 主たる生計維持者の(ア)以外の前年の所得が400万円以下

(ウ) が少し分かりにくいですが、これは事業収入等以外の収入、つまり、本業以外の株や不動産などによる前年の所得が400万円以下であること、という意味です。

つまり、世帯の主な稼ぎ手の前年の所得が1000万円以下、かつ、株や不動産などによる所得が400万円以下で、前年にくらべて事業収入が3割以上減、いいかえれば7割以下になっていれば減免の対象になるということです。

ホームページから申請書をプリントできる自治体も

具体的な申請の方法や、申請書の様式は各自治体によって異なるので、自治体のホームページなどを確認していただきたいのですが、一例として渋谷区の場合を見てみると、

・保険料減免申請書
・申請要領に記載された添付書類
・本人確認書類(運転免許証、パスポート等)

を役所の窓口まで持って申請に行くようになっています。このうち、保険料減免申請書は役所のホームページからプリントできます。

申請の日付と申請者の住所、氏名、電話番号を記入し、減免申請事由としては、
(1) 新型コロナウイルス感染症により、主たる生計維持者が死亡し、又は重篤な傷病を負った。
(2) 新型コロナウイルス感染症の影響により、主たる生計維持者の事業収入等の減少が見込まれる。
のどちらかを選んでチェックするようになっています。

この申請書には添付書類をチェックする欄もあり、
(1) 主たる生計維持者の死亡又は重篤な傷病の場合は新型コロナウイルス感染症の影響により死亡又は重篤な傷病を負ったことを証する書類

そして、(2)事業収入の減少 の場合は申立書、事業等の廃止、失業、所得の減少を証する書類にチェックするようになっています。

このうち、申立書はこれも区役所のホームページからプリントできるようになっていて、その用紙には、氏名、住所などのほかに、新型コロナウイルス感染症の影響があった(始まった)時期や、新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少の具体的な内容を記入する欄があります。

さらに、世帯の収入状況を記入する欄があり、そこには世帯主の令和2年の収入見込と、令和元年中の収入を記入する欄があります。令和元年の収入は確定申告の書類に書かれている数字を、令和2年の収入見込は、コロナ禍が始まったあとの任意の月の収入を12倍した数字を書いておけばいいでしょう。

全額や10分の8減免のケースも

添付書類のもう一点、事業等の廃止、失業、所得の減少を証する書類としては、正式な帳簿があればそれが一番いいでしょうが、なければ、収入をエクセルに打ち込んだものや、預金通帳のコピーを用意していって、それでもいいか窓口で聞いてみるといいでしょう。

昨年の収入を証明するために、確定申告書の写しがあればそれも持っていったほうがいいでしょう。

窓口に行かなくても、これらの書類を郵送しても申請できることになっていますが、その場合は、書類に不備がある場合は返却されてきます。窓口に行けば、不備をその場で指摘してもらって訂正することもできるので、なるべく窓口に行ったほうがいいでしょう。(ホームページには混雑緩和のため、なるべく郵送申請をご利用下さい、と書いてありますが)

窓口では、申請が受理されて減免されるかどうかをその場で聞くことはできません。申請結果と新しい納入通知書が郵送されてくるまでには、4週間程度かかる見込みです。

減免割合については、渋谷区、大阪市、厚木市などのホームページによると、主たる世帯主が死亡又は重篤な傷病を負った世帯は全額免除。

世帯主の収入が減少する世帯については、前年の合計所得金額が300万円以下で、10分の10減免。400万円以下で10分の8減免。550万円以下で10分の6減免。750万円以下で10分の4減免。1000万円以下で10分の2減免 となります。

対象となる保険料は、平成31(令和元)年度分9期・10期と、令和2年度1期から10期です。

減免割合としてはかなり大きいので、相当家計の助けになるはずです。以上を読んで該当すると思った人は、自分の住んでいる市区町村の役所に行くか、電話で問い合わせてみるのがいいでしょう。制度できる制度はすべて利用し、コロナによるこの経済危機を乗り切ってください。

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