持続化給付金事業、どこが問題?

衆院予算委で答弁する梶山経産相。手前右は自席で腕組みする安倍首相=6月9日

 新型コロナウイルスの影響で資金繰りに苦しむ中小企業などを政府が支援する持続化給付金事業が批判されている。支給の遅れや申請手続きの問題に加え、一般社団法人への事務委託を巡っても不透明さが指摘されている。持続化給付金事業とは一体どんな事業なのだろうか。(共同通信=榎並秀嗣)

 ▽支給遅れ

 持続化給付金の支給対象は、1カ月の収入が前年同月から半減した中小企業やフリーランスを含む個人事業主。中小企業には最大200万円、フリーランスを含む個人事業主には最大100万円を支給する。2020年度第1次補正予算で2兆3176億円を計上した。その後、支給対象拡大などのため第2次補正予算では1兆9400億円を積み増した。

 手続きを迅速にするため、インターネットでの申請を基本とした。電子申請が困難な事業者向けに、全国に支援窓口を設置している。問い合わせに応じるコールセンターも設けた。梶山弘志経済産業相は4月27日の記者会見で給付開始は最速で5月8日になるとの見通しを述べた。

 申請受け付けは5月1日に開始した。ところが、専用ホームページに申請が殺到。一時は手続きができない状態になった。

 さらに多数の支給遅れが判明し、申請した人たちから不満の声が上がった。経産省は6月12日、申請開始の5月1日から同月11日までに約77万件を受け付け、うち6%程度に当たる約5万件が1カ月以上たった6月12日時点で支給されていないと明らかにした。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は6月10日の衆議院予算委員会で「中小企業などへの給付遅れによって倒産、廃業したら人災だ」と対応の遅さを厳しく批判した。

 安倍晋三首相は6月15日の参院決算委員会で「全てが経済産業省側の手落ちだということではない。(給付事務の)現場がぼーっとしていて、何もやっていないのではない」などと釈明した。一方で「(申請)書類の中に、さまざまな課題、問題があった」とも発言した。

「持続化給付金」の電子申請を支援する会場=5月18日午前、東京都千代田

 ▽「丸投げ」、繰り返される委託

 事務委託のあり方を巡ってもさまざまな問題が判明している。

 事業は一般社団法人サービスデザイン推進協議会が769億円で受託した。が業務の大部分が電通へ749億円で再委託された。さらに電通は人材派遣大手パソナやIT大手トランスコスモスに外注している。野党からは「丸投げで不透明だ」と批判が上がった。

 こうした給付業務は、上記の企業からさらに別の企業に委託が繰り返されていることも判明。一方、梶山経産相は6月9日の衆院予算委員会で、事業に関わる業者の構図を示す最新資料を前日の8日になってようやく入手したと認め、政府が全体像を把握していなかった実態が浮き彫りになった。国民民主党の渡辺周氏は「再委託、再々委託する手間暇をかけなければもっと早く、広く給付金が届いたはずだ」と指摘した。

 自民党内からも問題視する声が上がっている。石原伸晃元幹事長は「公金であり、行政には説明する義務がある。政策を作っても、運用が駄目では国民の信を得られない」と強調。額が適正かどうかも検証が必要だとした。石破茂元幹事長も「無駄遣いせず、本当に困っている人に届くのか。国民の不信を招いてはならない」と述べた。

 梶山経産相は6月15日、委託契約のルール見直し案を策定する考えを示した。

一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が入る建物=6月2日夜、東京都中央区

 ▽寄付や助成金減少は給付対象外

 活動自粛による事業休止などで多くの団体が収入を減らしている特定非営利活動法人(NPO法人)も影響を受けている。

 NPO法人は中小企業を支援する「持続化給付金」の対象だが、支給を受けるのに必要な売り上げの減少に、寄付金や助成金は含まれないからだ。

 それぞれの事業は、困っている人に可能な限り早く支援を届けるためにあるはずだ。政府に本来の目的に沿った対応が求められることは言うまでもない。

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