外国人枠の拡大効果は「リリーフ」に出る? 元捕手が予想する各球団の“明暗”

DeNAのエスコバー(左)と阪神のエドワーズ【写真:荒川祐史】

特例ルールとして外国人枠が「5」に拡大、恩恵を受ける球団は…

わずか1枠。されど1枠――。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた特例ルールとして外国人枠が「5」に拡大され、19日にプロ野球は開幕を迎える。各球団の首脳陣にとっては、手腕の見せ所。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2017年から2年間ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、効果的な活用ポイントのひとつに「リリーフ投手」を挙げる。さらに、コロナが収束して入国制限が緩和された際、緊急補強が増える可能性にも触れた。

外国人枠が4人から5人に増えることに伴い、チーム全体の出場選手登録も29人から31人に。ベンチ入りも25人から26人にそれぞれ増えた。野口氏は「今まで通り全体が29人で外国人枠だけ増えたというなら困るが、31人になったのはすごく助かると思います」と強調。首脳陣目線で考えたときに、選手の入れ替えや起用法で柔軟性が出てくるのは間違いない。

ベンチ入りが最大4人なのは変わらないが、いったん登録を抹消してしまえば最低でも10日間は再昇格できない従来シーズンと比べると、その効果は小さくないという。特に今季は23試合少なく、加えて6連戦が続く過密日程。そんな特異な状況を乗り切る方策として、野口氏は「特にリリーフタイプのピッチャーを多く持っているチームは助かると思います」とみる。

好例として挙げたのが、開幕時点で外国人5選手を登録したDeNA。タイラー・オースティン、ネフタリ・ソト、ホセ・ロペスの野手3人はいずれも状態が良く、新助っ人のマイケル・ピープルズ投手が開幕ローテ入り。残り1枠はリリーフのスペンサー・パットン投手が入った。昨季リーグ最多の74試合に登板した左腕のエドウィン・エスコバー投手が外れる形になったが「野手3人を削ることなく、投手3人を入れ替えしながら回すことができる」と野口氏。日本人投手たちの状態次第で「先発1、救援1」「救援2」というオプションも可能になってくる。

助っ人の多い阪神にも追い風、一方で“宝の持ち腐れ”となるのは…

さらに、阪神にも追い風になると野口氏は見通す。開幕時点では「野手2、先発1、救援2」と配分したが、チームの大きな課題は得点力。開幕2軍となった新助っ人のジェリー・サンズ外野手の状態が上がってきたときに「野手3」になるケースは十分想定できる。その際に先発のオネルキ・ガルシア、ジョー・ガンケル両投手と、リリーフのロベルト・スアレス、ジョン・エドワーズ両投手を、登録と抹消を繰り返して起用できる。「首脳陣のやりくりは難しそうですが、恩恵にあずかれると思います」。

一方、現時点でそれほど効果を発揮しない“宝の持ち腐れ”状態になっている球団もあると指摘。例えばヤクルトは、在籍する外国人自体が5人で「野手1、先発2、救援2」の状況。想像できるのは先発2人のやりくりで、起用の柔軟性は高くないのが現実だ。

そこで野口氏は、国内外でのコロナ収束具合で各国の往来が可能になった場合、助っ人の緊急補強が出てくる可能性を挙げる。「特に野手。ヤクルトなどは、獲得すると大きいかもしれませんね」と言う。ただ、最初に登録を「野手4、投手1」「投手4、野手1」とした場合、その後の比率変更はできないため、運用は難しい。また、コロナは国内だけの問題でなく、世界情勢は流動的。それだけに「外国人選手を獲得しておいて良かったという球団と、獲得しておけば良かったなという球団の差が如実に出ると思います」と異例ずくめのシーズンを展望した。(Full-Count編集部)

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