withコロナ時代はマスクもおしゃれに パーソナルカラーや伝統生地が人気

 「白いマスク飽きたなぁ」「せめて何かかわいいものを身に着けたい」と思っている人が多いらしい。新型コロナウイルスの感染拡大でマスクの着用が日常になる中で「おしゃれ」なマスクの人気が高まっている。似合う色で顔映りを良く見せる「パーソナルカラー」を取り入れたカラフルなものや、伝統ある高級生地までさまざま。なじみがなかった商品に挑戦するチャンスかもしれない。(共同通信=当木春菜)

パーソナルカラーのマスクを販売する「Style Works」の三輪詩織代表(提供写真)

 ▽メークの代わりに

 肌や瞳、髪の色などと調和し、その人の魅力を引き立てるパーソナルカラーは「春・夏・秋・冬」の四つのタイプに分類され、近年、衣服や化粧品の色選びに悩む女性を中心に関心を集めている。

 カラー診断などを手掛ける「Style Works」(東京都港区)は6月1日、四つのタイプ別布マスクの販売を始め、直後に千セット以上を売り上げた。自分に合った色のマスクを身に着けると血色がよく見え、顔立ちが引き立って見えるなどの効果があるという。

 三輪詩織代表(32)は普段、来店者のパーソナルカラーを診断するサロンを経営、化粧品や服の色についての助言をしている。「マスクをしながら血色を良くできないか」との相談が増えたが、マスクは顔の大半を覆ってしまうため限界がある。そこで「メークの代わりになるマスクを作ろう」と考え、製作にとりかかった。

 ▽理想の色

 各タイプに合い、暑い夏でも着けやすい、涼やかな色を考えていた。思い描いた絶妙な色のマスクを既成の生地から作るには限界があったため、色作りを一緒に進めてくれる染物屋を探し、染めから縫製までをオーダーメードで引き受けている京屋染物店(岩手県一関市)に出会った。

 オンライン会議を重ね、日常使いしやすい「ベーシックカラー」と、彩りで気持ちを前向きにする「アクセントカラー」の2色1セットをタイプ別に作り上げた。

「Style Works」が販売するパーソナルカラーマスクの「春」タイプ。上が「珊瑚」で下が「卯の花」(提供写真)

 鮮やかな色が似合う「春」タイプは、肌なじみの良い淡い黄色の「卯の花」とオレンジがかったピンクの「珊瑚(さんご)」。春タイプと診断された記者も購入したマスクを着けてみると、白いマスクより肌が明るく見え、目の下のくまも薄く見えた気がする。肌触りも良く、不織布のマスクで肌荒れに悩む人にはうれしい。  

 三輪さんは「気持ちが上向く明るい色を選んだ。彩りの力で前向きになってほしい」と話している。2枚1セットで2970円。

 ▽伝統工芸も

 普段の生活ではなじみの薄い高級生地もマスクなら手を伸ばしやすいようだ。茨城県結城市の「結城つむぎセンター」は機械を使って織る「石下結城紬(つむぎ)」を用いた約50種類(1200円~)を販売中だ。当初は2種類だったが、生地の種類を増やし対応している。

結城つむぎセンターが販売するマスク(提供写真)

 京都市の「加地織物」は8種類の西陣織マスク(2千~2500円)を用意している。特製の生地に金色と白色の糸で施したバラの柄が人気だ。予想以上に注文が入ったため種類を増やしており「伝統的なものに触れる機会が減っている中で、マスクは挑戦してみるのにちょうどいいのかも」と担当者は語る。

加地織物が販売するバラ柄の西陣織マスク(提供写真)

 天然の藍染めを手掛ける栃木県足利市の風間幸造さん(55)は、藍草を使ってさらし木綿を濃紺に染めたマスクを2200円で販売している。藍草を発酵させた「すくも」と、木灰などの素材を加えた染め液を使った天然藍染めは、抗菌作用に加え、長時間使用しても防臭効果が続くという。この性能が注目を集めてか、一時注文が殺到した。

 藍染めは江戸時代に広く流行したが、現在は化学繊維などの台頭ですくもの生産者自体が減っているという。風間さんは天然藍を残そうと、染め液を作るための発酵の手順をまとめた「レシピ」の作製を進めており、「マスクを長時間着けた時の肌の調子が違うはず。この機会に天然藍の魅力を知ってもらえたら」と話している。

天然藍染めのマスクを販売する風間幸造さん

 ただでさえ暑苦しいマスク。お気に入りの一品を身に着け、気分転換してみてはいかがだろうか。

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