なぜ栗原を2番で起用した? 劇的サヨナラ勝ちの開幕戦で見えた工藤監督の“変化”

2年連続で開幕戦延長サヨナラ勝ちを決めたソフトバンク【写真:藤浦一都】

大方の予想と違い、工藤監督は「2番・一塁」で栗原を起用した

2年連続で開幕戦で劇的な延長サヨナラ勝ちを収めた昨季の日本一球団ソフトバンク。昨季の天敵ロッテとの一戦で勝負を決める一打を放ったのは、今季のブレークが期待される6年目の栗原陵矢捕手だった。

この日「2番・一塁」に抜擢された栗原は同点で迎えた延長10回2死三塁で打席へ。2球で追い込まれ、3球目のフォークを必死にファウルにしてからの4球目、ロッテの小野が投じた149キロの真っ直ぐを中前へと弾き返した。三塁走者の明石が生還し、劇的なサヨナラ適時打となった。

この日のスタメン発表。やはり注目はこの日がプロ入り初の開幕スタメンとなる見込みだった栗原の打順だった。大方の予想では「7番・一塁」だったが、蓋を開けてみれば、練習試合でも1回しか試していない「2番・一塁」での起用に。この大胆な決断に工藤監督の“変化”を感じた。

就任5年で4度の日本一、そして3年連続で日本一に輝いている工藤監督だが、昨季まではオーソドックスな打順を組むことが多かった。1番には主に俊足のタイプ、2番にはバントの出来る繋ぎの選手を置いてきた。近年で言えば、この日9番に入った牧原が1番、そして、7番だった今宮が2番で起用することが主だった。そして、先頭が出塁→送りバントの流れも多かった。

「最初からバントはしない、繋がりのある打線でどんどん点を取っていこう」

だが、今年は長打も期待できる上林を1番に据え、そして開幕戦という大舞台でプロ初の開幕スタメンとなる栗原を2番に置いた。意外というのが正直なところだった。工藤監督は試合後、栗原を2番に起用した狙いを「彼が残してきた成績、調子も含めて、ですね。繋がりも考えて、攻撃的な打線を組みたいという思いもあった。打撃コーチ、ヘッドコーチも含めてですね、話をした。最初からバントはしない、繋がりのある打線でどんどん点を取っていこうという思いで2番にさせてもらいました」と語った。

この采配が的中した。8回は上林が二塁打で出塁し、栗原が左前安打でチャンスを拡大。柳田の犠飛で先制点を生んだ。延長10回は代打の明石が出塁すると、牧原が犠打。上林の二ゴロで走者が三塁に進み、最後は栗原が決めた。思惑通りの“大量点”ではなかったものの、この上位打線がこの日の全得点を生んだのは事実だ。

昨季は、得点力の少なさが優勝を逃した一因でもあったソフトバンク。調子の良い打者を上位に置く、繋がりを重視し複数得点を狙う、簡単にバントはしない……。今季のスタートを切った2020年開幕戦。劇的なサヨナラ勝ちは、工藤監督とソフトバンクの大きな変化を感じる1勝だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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