日本におけるレクサスブランドの創業時から販売されている、スポーティFRセダン「IS」の新型が世界初公開されました。発売はまだ先ですが、見た目以上にその走りには多くのこだわりがあるようです。
実はマイナーチェンジ
今回公開されたISはクルマとしてはマイナーチェンジに該当します。「なんだ、マイナーチェンジか」と思われた人も多いかもしれません。しかしこれまで海外も含め20年以上にわたって累計109万台を販売してきた人気と実績は伊達ではありません。実際クルマのプラットフォームはこれまでと同じですが、デザインや先進安全装備、そして何よりもそのハンドリングから予想されるのは「フルモデルチェンジ並み」という仕上がりなのです。
全く新しいデザインはアグレッシブ
今回公開された情報は北米仕様のプロトタイプです
新型ISの写真を見る限りでは旧型とは大きく異なることがわかります。念のために現在販売されている写真も載せておきますがその差は歴然です。
2018年8月に発売されたIS350の特別仕様車です
デザイン上のコンセプトは“Agile(俊敏)& Provocative(挑発的)”。昨今発表になったばかりの新型ハリアーでもそうですが、SUVでも4ドアセダンでもそのスタイリングは「クーペ的」なエッジの利いたものになっているのがトレンドのひとつです。
ボディ寸法も現在販売されているモデルよりホイールベース以外は若干拡大されており、金属の持つ質感やシャープな造形。後述する新しいハンドリングに相応しいデザインとなっています。
旬のトレンドはリアにあり?
新型ISのデザインはどのアングルから見ても流麗でいて攻めのスタイリングであることがわかります。
その中で、特に目を引くのがリア周辺、もう少し細かく言えばリアコンビネーションランプのデザインです。
ここに新型ハリアーとリアの写真を並べてみました。ハリアーも含め、キレのあるランプは左右がつながっており存在感は抜群です。
リアコンビネーションランプはレクサスの“L”文字をモチーフにしています
ハリアーでも人気の横一文字のリアコンビネーションランプは今後流行りそうです
フロントのデザインはメーカーごとに統一感を出すために意図的に似せる車種もありますが、逆にリアはデザイナーの腕の見せ所とも言えます。
もちろん単一で比較することはできませんが、新型ISを見ても鍛えられたアスリートのように今にも走り出しそうなデザインとなっています。
最先端のインフォメーション技術
インテリアに関しても同様です。基本デザインに大きな変更はありませんが、昨今のクルマでは当たり前になりつつあるスマートフォンとの連携、具体的にはAppleの「CarPlay」やGoogleの「Android Auto」にも対応しました。元々ISのディスプレイは10.3インチとかなり大きいのですが、今回そのディスプレイ自体もタッチ式を採用したことで誰もが直感的に操作することが可能になりました。
10.3インチのワイドディスプレイはタッチ式に進化しました
またインパネ上部やドアパネルに有彩色を設定しツートーン配色とすることで拡がり感だけでなく、上質感も向上、また新しいハンドリングを期待させる高揚感もプラスした、とのことです。
先進安全装備は世界トップレベルに進化
先進運転支援システムであるADAS(エーダスと読みます)。これらのシステムは元々のクルマの構造と大きく関わってくるのでマイナーチェンジで進化させるのは難しいのですが、新型ISでは従来までのシステムの性能を大きく向上させることで現在販売されている最新モデルと同等の性能を搭載しています。
高速道路などで同一車線内の中央を常に走行できるようステアリングを支援する「LTA」と呼ばれる機能があるのですが、新型ISにはこのLTAと連動する「ドライバー異常時停車支援システム」が搭載されています。例えば運転中にドライバーが何らかの理由(心臓発作など)で無操作の状態が続いた時、ドライバーにまず音と表示、そして緩減速で警告を促します。
LTA(レーントレーシングアシスト)には新たにAI技術を組み込んでいます
それでも反応が無ければハザードを点灯させホーンを鳴らし車外に異常を知らせ自車線内に減速して停車。状況に応じて救命・救護要請も行ってくれます。ちなみにこの機能は国内仕様のみの設定、レクサス(トヨタ)ならではの細かい部分まで気配りされたシステムとも言えます。
あの“新テストコース”で走りを磨いた
技術的な進化はもちろんですが、新型ISのハンドリング性能を従来より大きく引き上げた理由に新テストコースの存在はかかせません。
愛知県豊田市下山地区に2019年4月に新設されたのが「Toyota Technical Center Shimoyama」です。自動車開発の聖地とも言われるドイツにある「ニュルブルクリンク」を走り込んできたノウハウをこの新コースに投入、全長約5.3km&高低差約75mという自然の地形を生かした自慢のコースです。
新型ISはここで徹底的に鍛え上げられました。マスタードライバーである豊田章男氏(社長でもありますが、トヨタ最強のテストドライバーでもあります)によれば「ドライバーの運転感覚を磨き上げる砥石のようなクルマ」とコメントしています。
搭載されるパワートレーンは3種。これはV型6気筒の3.5Lエンジン
豊田社長にそこまで言わせるキレの良いハンドリングとは一体どのようなものなのでしょうか。まさに「日本で鍛えた世界レベルのハンドリング」とも言える仕上がりなのかもしれません。まだ発売には時間がありますが、熟成を超えた進化を手に入れた新型ISは欧州勢とも勝負できる期待のモデルと言えそうです。