<いまを生きる 長崎コロナ禍> ひとり親家庭「貧困」の現状と展望 山本氏 インタビュー

 新型コロナウイルスの感染拡大で、経済的に苦しい状況に追い込まれるひとり親世帯が増えている。長崎市で食料品の提供など総合的な支援をする一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさきの山本倫子事務局長(51)に、現状と今後の展望を聞いた。

▼ひとり親世帯の状況は。
 ひとり親はいくつもパートを掛け持ちしながら子どもを育てているケースが多い。このためコロナ禍で仕事に入れずに収入が減り、食料や下着などの生活必需品が買えない状況に陥っている。電話相談が増えており、「コロナで仕事がなくなり食料を買うことができない」と助けを求めるものや、私たちが定期的に続けている食料支援の頻度を上げてほしいとの訴えもあった。

「自分たちの力では解決が難しい人たちを支援していきたい」と語る山本事務局長=長崎市社会福祉会館

▼ひとり親家庭福祉会ながさきは「つなぐBANK」を立ち上げ総合的に支援している。
 取り組みの一つがフードバンク。昨年12月から2カ月に1回、拠点に食料品や日用品を取りに来てもらい、106世帯に無償提供している。新型コロナで深刻な状況にあることを踏まえて、新たに120世帯に食料品などを配布する取り組みを5月に始めた。
 先日、つなぐBANKを利用する人にアンケートをしたところ、「新型コロナで生活が苦しくなった」と回答した人が8割に上った。「イライラや不安が増えた」と回答した人は6割超。給料が減った不安に加え、この先どうなるのか分からない不安がのしかかっているようだ。これからも自分たちの力だけではどうしても解決が難しい人たちを支援していきたい。

▼新型コロナ感染拡大の前後で感じる変化は。
 今まで多くの人が気付かなかった「貧困」に意識が向くようになったと感じている。これまでは特定の団体からの支援が多かったが、一般の市民の方からも寄付をしたいと連絡をいただくようになった。休業中に販売できなかった菓子などを廃棄せずに寄付してくれた企業もある。
 貧困家庭の人たちは自ら「助けてほしい」と声を上げにくい。コロナ禍で、行政機関や民間からの問い掛けが増え、困っていることや不安なことを発しやすくなった点はある。長崎の課題は長崎の人たちで解決できる。長崎の貧困家庭を支援できるのは長崎の人たちであることを伝えていきたい。

▼今後の展望は。
 つなぐBANKは、フードバンクのほか子ども食堂を開いたり福祉相談に応じたりしている。三つの機能が独立せずに連携していることがポイントで、全国にも例がない。今後3年間で県内の全市町につなぐBANKのノウハウを伝え、各自治体にあった方法で取り組みが根付いていくようサポートしていきたい。


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