二番目でもいいと思った34歳女性がレシートをみて、恋愛関係に冷静になることができた

「セカンド」でもいいから彼と一緒にいたい、つきあっていたい。そう思う女性もいます。それでも好きであればあるほど日々、ストレスは募っていく。自分の気持ちに正直に生きようと決めたとき、何かが変わっていきます。


セカンドでいいと思っていたけれど

友だちづきあいから始まったものの、気がつけば彼のことが大好きになっていた。そこで自分から告白したというのは、ハルコさん(34歳)です。

「ネットのコミュニティから派生したグループがあって、みんな気が合ったので月に1,2回会っていたんです。2歳年下の彼とはそこで出会いました。帰宅する方向が一緒だったので、いつも帰りはふたりでもう一軒飲みに行ったりして。すごくいい友だちで、本音を言い合える関係だった。なのにある日、ふと気づいてしまったんです。私は彼のことが好きなんだ、と」

それが2年半ほど前のこと。当時、彼女はつきあっていた恋人と別れたばかりでした。自分の気持ちを検証してみると、彼のことが気になって恋人への気持ちが疎かになっていったと認めざるを得ませんでした。

「それからは彼の顔を見るのもつらくなっていって……。彼には恋人がいるのも知っていましたし。だけど好き。その思いが募って、ついに告白したんです。つきあってくれなくてもいいけど気持ちを知っておいてほしくて」

彼の返事は、「僕もハルコさんとの関係は大事にしたい。でも恋人がいるのも事実。もしそれでもいいならつきあいたい」というものでした。

「普通だったら、ふざけるなと言いたいところですが、私、それでもいいと言っちゃったんです。友だちでいることが苦しくなっていたので」

それでもしばらくは「友だち以上恋人未満」の関係は続きました。あるとき、彼女は彼と飲みに行った帰りに、少し強引に彼の部屋に押しかけます。

「きれいな部屋でした。彼女がときどき来ているみたいで、洗面所には彼女の化粧品などもありましたね。それを見ると胸が痛くなったけど、やっぱりセカンドでもいいから彼とつきあっていきたい。そう思ったんです」

彼女にしてみれば惚れた弱みがあったのでしょう。そして、ハルコさんが本気で自分を好きなのだとわかった彼のほうは、少しずつ態度が大きくなります。惚れられているがゆえに傲慢になっていったのです。

夜中に呼び出されても駆けつけた

自ら「都合のいい女」と納得した上で、不公平な関係に飛び込んでいったハルコさん。

「それでも彼とふたりで食事に行ったり飲みに行ったりすることもあるし、ふだんは自分がないがしろにされているとは思えませんでした。普通の恋人みたいだった。週末、彼から映画を観に行かないかと誘いの連絡があったりしたし」

それでも、やはりいちばんではないと痛感させられることもあったと言います。たとえば彼の誕生日、クリスマスなどは一緒に過ごせません。

「それはちょっと寂しかった。だから日付けが変わって彼の誕生日になった瞬間、メッセージを送っていました。彼はありがとうってうれしそうだった。私の誕生日は彼がレストランを予約して祝ってくれましたよ」

ただ、1年半ほどたったころ、彼は転職し、ひどく忙しくなっていきました。なかなか会う時間がとれず、会ってもげっそりしていて以前ほど楽しい時間が過ごせなくなっていきます。

「私にできることはない? といつも尋ねていました。彼から夜中に『すごく熱がある』と連絡を受けて、家にあった解熱剤や保冷剤などをもって駆けつけ、朝まで看病したこともあります。朝、熱が下がっているのを確認、野菜ジュースとおかゆを作ってそっと部屋を出ました。鍵をかけて部屋の新聞受けに鍵を落とし、一度、家に帰ってから出社。私、何をやっているんだろう、決して正式な恋人にはなれないのにと涙がこぼれました」

彼は少しずつ、彼女に甘えるようになっていきます。夜中に電話をかけてきて、「タクシー代、出すから今から来ない?」ということも増えました。彼女がタクシー代をもらったことは一度もありません。

「それでもいいんです、私がそれをよしとして幸せだったんだから」

〇〇の鰻が食べたい、買ってきてくれないかな、一緒に食べようよ。そんなメッセージが来たときも、彼女は彼が指定した店でいちばん高い鰻を買って飛んでいきました。

大事なときに気がついて

ハルコさんは自分が具合が悪くても寂しくても、彼に何かを要求したことはありません。ところが昨年暮れ、ハルコさんの大好きな祖父が急逝したと母親から連絡がありました。祖父は遠方に住んでおり、夜中だったためどうすることもできません。

「お正月に帰ることを楽しみにしてくれていたのに。ショックすぎて涙も出なかった。ひとりではどうにもならない気持ちだったので、彼にメッセージを送ったんです。でも朝まで返信はありませんでした」

朝イチで家を飛び出して空港に行った彼女、そこで彼からの返信を読みました。慰めの言葉は書いてあったものの、彼女の心には届いてこなかったといいます。

「なぜか祖父が、そういう関係はやめなさいと言っているような気がしました。そうだね、やめる。それきり彼に連絡するのはやめたんです。彼からは心配するメッセージが来ていましたけど返信しませんでした」

冷静になって

数日後、帰宅してから彼女はいろいろ考えたそうです。自分もひとり暮らしなのに、彼は私のところには一度も来なかった。夜中のタクシー代も頼まれて買っていったものも、一度も払ってもらっていない。

「別に請求する気はなかったけど、彼関連のレシートや領収書をひとつの封筒に入れておいたんですよ。最初の1年は奢ったり奢られたりだったんですが、その後はレシートがやたらと増えている。それを全部、計算してみたら1年弱で90万円近くなっていました。虎の子の貯金もほとんどなくなっていた。彼の家の往復のタクシー代だけで1万円になっちゃうし。彼のほうがずっと高給とりなのに。しかも彼、親に買ってもらったマンションに住んでいるから家賃もいらないんですよね」

どうして自分だけがこんなに身も心も削ってしまったのか、と彼女は笑いがこみ上げてきたそうです。

「しょうがない、ここですべてチャラにしてまた出直そうと思ったら、すっきりしました」

そのとき、チャイムの音がしました。彼がやってきたのです。彼女は玄関ドアを開けませんでした。

「私がいるのはわかったんでしょう。彼はドアの向こうで、『ハルコと連絡がとれなくなって、オレにとっていちばん大事なのはハルコだったってわかったんだ、これからはちゃんと恋人としてつきあおう。彼女とは別れてきた』って。本当なら喜ぶところなんでしょうけど、そのときはすでに気持ちが冷めていた。彼がいちばんだって言ってくれていると自分を奮い立たせようとしましたが、それでも無理だった」

帰っていく彼の姿を、彼女は窓から見送りました。

「遅かったよ、ごめんねってメッセージを送って、彼の連絡先を削除、全部ブロックしました」

セカンドでもいいと始まった恋ですが、セカンドだからこそ彼の言いなりになってしまったと彼女は感じました。次の恋は、きちんと向き合って、気持ちもお金も対等な関係を作っていきたいと思っているそうです。

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