子育てと”憧れの仕事”両立 県警鑑識課・山口さん 女性警察官増え 環境整備進む

特技の似顔絵を描く山口涼子さん=県警本部

 長崎県警で女性警察官が年々増え、子育てをしながら働く環境の整備が進んでいる。事件現場で証拠を集め、科学的知識や技術を使って容疑者特定に結び付ける鑑識係。県警鑑識課の山口涼子さん(34)は、3人の娘を育てながら、憧れだった仕事に励んでいる。
 23歳で警察官を拝命し、長崎署や大浦署などの勤務を経て、鑑識課は2年目。7歳、6歳、4歳の娘を育てながら働く。憧れたきっかけは刑事ドラマ。何もない所から事件に関わる資料を集め核心に迫る。ひたむきに資料を探す鑑識の姿は、細かな作業が好きで、目立たないところで努力できる自分の性格と重なった。
 もともと、子どもが好きで大学では幼児保育を専攻。保育士資格と幼稚園教諭二種免許も取得した。大学後半、ニュースで児童虐待など、子どもが被害に遭う犯罪が大きく取り上げられるようになった。「未来を阻む大人から子どもを守りたい」。今でも児童虐待が疑われる場面は、子どもの発達状態や心理を理解する上で、大学で学んだことが役に立っている。
 山口さんは機動鑑識隊に所属する。鑑識課によると、隊では初めての子育て中の女性警察官。事件現場に出動し、火事や殺人など凄惨(せいさん)な事件も扱う。夜間の呼び出しや当直などがあり、体力的にも厳しい環境。勤務時間が不規則だったこともあり、かつては子育てとの両立が難しかった。現在は、育児中の女性警察官は日中に限定した勤務にしたり、子どもの風邪や授業参観でも休暇が取りやすくなったりするなど、無理なく働ける環境になってきた。
 育児と家事は看護師をする夫と協力し合っている。朝はバタバタと娘たちを送り出して出勤する。共働きでも休暇を活用し、子どもの行事は必ず参加。仕事と子育てが忙しくても「スキルアップができる今だけの期間」と前向きに捉えている。
 県警鑑識課の山口和樹次席は、育児中の女性ならではの視点や子どもへの接し方が事件解決を左右することもあると指摘。子育て中の女性警察官の存在は「従来の固まった思考を柔軟にし、職場環境を考え直すきっかけになる」と話す。
 山口さんは「目標はこの人がいれば現場は大丈夫と、信頼される鑑識係」と笑顔を見せた。

◇長崎県内の女性警察官
 県警警務課によると、県警が初めて採用したのは1992年。近年は、ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカーなどで女性が被害に遭う事件が増え、活躍の場が増えている。県内の女性警察官の割合は2019年1月末時点で8.3%。18年の7.8%から0.5%増えた。県警は23年までに10%を目指している。

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