『エイリアン』(1979年)をはじめ、『炎のランナー』(1981年)など数々の作品に出演、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001年〜2003年)や『ホビット』シリーズ(2012年〜2014年)ではビルボ・バギンズを演じた名優イアン・ホルム氏が、2020年6月19日に亡くなった。88歳だった。
ホルム氏の代理人は、「悲しいことですが、俳優サー・イアン・ホルムが今朝、88歳で亡くなりました。病院で、家族や介護担当者に囲まれて、穏やかに息を引き取りました。」と発表した。死因はパーキンソン病に関連する症状による関連死とのこと。
ドミニク・モナハン(『ロード・オブ・ザ・リング』メリー役)
「イアン・ホルム氏は灰色港へと旅立った。ピーター・ジャクソン監督は、イアンが今まで一緒に仕事をした中で最高の俳優だと言っていました。僕は可能な限り彼を研究しました。セットでもオフでも、彼は魔法のような男でした。優しくて輝いていて、全てにおいて優れていました。Namarie、ビルボおじさん。」と偲んだ。
(灰色港は、死後の世界へつながるエルフの港を指し、“Namarie”はエルフ語で“さようなら”を意味する。)
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ピーター・ジャクソン監督(『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』)
自身のFacebookで、撮影時のオフショットとともに追悼のコメントを投稿し、賛辞を贈った。監督はイアンのことを「彼の演技から学ぶことは多かった」と回想した。
「2000年の初め、『ロード・オブ・ザ・リング』でイアンとの撮影を始める前は、彼のような偉大な俳優と仕事をすることにとても緊張していた。でも、彼はすぐに私を安心させてくれたんだ。初日、カメラが回る前にバックエンドに立っていると、彼は私を端の方に連れて行き、“テイクごとに違うことを試すけど心配しないで欲しい”と言って、もし5、6テイクで私が必要としている演技でなかったら、改めて具体的な指示を出す方向で撮影を進めた。でも信じられないことに、彼の変化に富んだセリフの読み方や演技はどれも素晴らしく、結果的にほとんど指示する必要がなくて、編集作業では、彼のおかげで驚くほど幅広い選択肢の中から選ぶことができたんだ。」と偲んだ。
リドリー・スコット監督(『エイリアン』)
「私の唯一の後悔は、もう二度と彼と一緒に仕事ができないことだ。イアンは製作中にたくさん話をしてくれたので、とても参考になっていたんだ。才能豊かな偉大な男だった。彼がいなくなるのはとても寂しいよ。」
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エドガー・ライト監督(『ベイビー・ドライバー』
「イアン・ホルム、安らかに。面白い役から、悲痛な役、恐ろしい役までも演じることができ、存在感をもたらした天才的な俳優だった。ビルボやナポレオン、『スウィート ヒアアフター』(1997年)、『シェフとギャルソン、リストランテの夜』(1996年)、『未来世紀ブラジル』(1985年)、そしてもちろん(『エイリアン』で演じた)象徴的なアッシュに感謝している。“君たちにチャンスがあるとウソは言えない。だが……君たちに同情はするよ”」とイアンが演じた作品を取り上げ、『エイリアン』でイアンが演じたアンドロイド、アッシュの名言を引用して偲んだ。
名優の死に、多くの映画人が悲嘆にくれている。彼の輝かしい功績とその演技は人々の心に残り続けるに違いない。イアン・ホルム氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。