防音リフォームの費用や方法、手軽にできる防音対策について解説

「子供がドタバタと走り回り、ご近所からクレームが来てしまった」「マンションの壁が薄く、話し声や生活音が気になる…」ご近所と友好な関係を築くためには、生活の「音」にも配慮しなくてはいけません。そこで人気なのが「防音リフォーム」です。壁や窓に防音対策をすれば、自分が発生させる音や外部からの音を抑え、快適な暮らしになります。この記事では防音対策を検討している人に向けて、場所ごとの防音リフォームにかかる費用や方法、手軽にできる防音対策について解説します。

生活の中で発生する「防音すべき音」

日常生活では、さまざまな音が発生します。防音対策を考える前に、生活の中で発生する音の種類を見ていきましょう。

話し声やテレビの音、足音、ペットの鳴き声などの生活音

家族間での会話や笑い声、子どもやペットがダダダっと走る音など、生活の中で発生する音は「生活音」と言われます。特にマンションなど集合住宅ではトラブルになるケースもあり、子どもが小さい・ペットがいるというご家庭では「我が家は迷惑をかけていないかな?」と心配する人も多いでしょう。生活音は他の音に比べると防音対策が行いやすく、ある程度の障害物を置くだけでぐっと改善します。

電車や車の騒音

線路沿いや高速道路沿いの住宅では、電車のガタンガタンという音や車の走行音にお悩みの方が多いのではないでしょうか。特に寝ている間に騒音が響くと、「なかなか寝付けない」「睡眠を邪魔される」とイライラしてしまうものです。家によっては最初から二重窓にしてあるなど対策していることもありますが、それで十分とは限りません。外からの騒音は、しっかりと防音対策する必要があります。

室外機の低周波音

エアコンを稼働させるときに発生する室外機の音。低周波音は文字通り低い周波数ですが、人によっては大変気になる騒音となります。また、「音」で感じなくても振動で感じたり、なんとなく嫌な感じを受けたりする人もいるのです。さらに低周波音は健康にも影響があり、耳が過敏になる「低周波障害」という症状もあります。

ホームシアター

映画好きの人にとって憧れのホームシアター。「音質にもこだわって、臨場感をたっぷり味わいたい」という人も多いのではないでしょうか。しかしホームシアターで心配になるのが「音漏れ問題」です。防音対策を考えずに大きな音量で再生すれば、近隣の住民から苦情が来るかもしれません。しっかり防音対策して、音漏れを気にせずホームシアターを楽しみましょう。

楽器演奏

ピアノやドラム、ギターなど音楽の趣味を持っている人は、「家でも楽器を練習したい」と思いますよね。しかし楽器は騒音問題に発展しやすく、防音対策が十分でなければ近隣住民の迷惑になりかねません。「楽器可」としている賃貸物件であっても防音は意識したほうがいいでしょう。

壁の防音リフォームの費用相場

防音材を壁に用いる防音施工にはいくつか種類があり、それぞれで特徴も値段も違います。

吸音材、遮音材、防振材の違い

防音材は以下の3つに大別されます。

吸音材:文字通り音を吸収する働きがあります。素材は断熱材でも使われるグラスウールやフェルト、石綿版などがあります。音の振動を熱エネルギーに変えて防音効果を発揮する仕組みで、吸音材を使いすぎると音を吸収しすぎてしまいます。

遮音材:音を反射させることで音漏れを遮断するもの。石膏ボードやコンクリート、鉛シートといった材質があります。金属が含まれるほど重たく扱いが大変なので、プロによる施工がおすすめです。

防振材:遮音材の内側に施工して使われることが多いです。空気の振動を抑えて音の伝わりを防ぐことで、近隣の住宅に音が漏れないようにする仕組みです。柔らかいプラスチックやゴムといった材質が使われます。

吸音材・遮音シートを取り付ける

壁の防音リフォームとして吸音材と遮音シートを施工する場合、費用相場は16平方メートルあたり約18万円~20万円程度となっています。

一般的に防音素材は組み合わせて使うことが多いですが、取り付けにも順番があります。遮音シートは音を反射させるため、音源の近さによってはかなり反響音が大きくなることがあるのです。そのため、壁の内側にまず遮音シートを取り付け、その次に吸音材を貼るのがいいとされています。音源の近くにある吸音材がある程度音を吸収して、そこから遮音シートで反射させることで、快適な防音リフォームとなるのです。

換気口を防音タイプにする

壁や窓以外にも、屋根裏やリビングにある「換気口」を防音仕様にするリフォーム方法もあります。屋外にあるキャップだけを取り換える方法や屋内も防音リフォームするケースがあり、それぞれで費用相場は異なります。

・屋外キャップだけを取り換える場合…7000円/箇所
・屋外キャップと屋内の換気口を取り換える場合…1万4000円/箇所
・防音パイプを取り付ける場合…1万5000円/箇所

換気口の状態によっても施工方法は変わるので、プロに判断してもらいましょう。

窓の防音リフォームの費用相場

窓からも音は漏れるので、防音対策が必要です。防音リフォームの方法と費用相場についてご紹介します。

内窓を設置

窓が1枚だけなら、新たに内窓としてもう1枚窓を取り付ける方法が人気です。内窓として使うガラスは一般的な物ではなく、「防音合わせガラス」という素材が良く使われます。

防音合わせガラスは2枚のガラスを合わせて作られていますが、中にフィルム状の防音材を挟んでいます。しかし音の周波数によって適切なフィルム材は変わるので、防ぎたい「音」によって最適なガラスを選ばなくてはいけません。まずはプロに、どんな音を防ぎたいか相談してみましょう。防音合わせガラスの内窓を新たに設置した場合の費用相場は、約7万円~15万円前後/箇所です。

防音機能窓ガラスに交換

内窓を設置せず、既存の窓を防音機能が付いた窓ガラスに取り換える方法もあります。先ほどご紹介した防音合わせガラスの他に、厚さの違うガラスを合わせた「異厚複層ガラス」などがあり、各社が様々な防音機能ガラスを販売しています。費用相場としては、施工費込みで一箇所約5万~13万円程度です。

床の防音リフォームの費用相場

集合住宅で特に意識したいのが床の防音リフォームです。「子供やペットがドタバタと走り回る」「打楽器を演奏したい」という場合、まずは床の防音リフォームから行うといいでしょう。

遮音性能、L値とは?

床で使われる防音材には、遮音性の高さを表す値として「L値」というものがあります。L値は人の足音などの重量衝撃音である「LH」と、落下音などの軽量衝撃音である「LL」という2つの値を総合したものです。L値はあくまでも推定値ですが、値が小さいほど遮音性能も価格も高くなります。そのため、防音効果を高めたいならよりL値が低い床材を選びましょう。たとえば、以下のように分類されています。

L-40:走り回る音がかすかに聞こえる程度。落下音などの軽量衝撃音はほぼ聞こえない
L-60:走り回る音がよく聞こえる。落下音もかなり気になりストレスを感じる

防音に特に気を付けたいマンションでは、管理規約で床材のL値は「45」以下など数値を指定しているケースも珍しくありません。リフォーム前にぜひ一度確認してみましょう。

床材を防音機能のあるものに張り替える

「防音対策はしたいけれど、床材はメンテナンスが楽なフローリングがいい」という方は多いのではないでしょうか。床材で人気のフローリング材に、防音性をプラスしたものもあります。費用としては1㎡あたり約7000~1万円前後が相場なので、14㎡(約8畳)の場合約9万8000~14万円前後が相場です。前述したように、L値が下がるほど費用は上がっていきます。

防音機能が高いフローリング材は、表面にクッション性を持たせています。そのため、歩き心地がフカフカと柔らかくなり、今まで硬いフローリング材で慣れている場合は歩きにくいと感じるかもしれません。リフォーム業者にサンプルを触らせてもらったり、できれば実際に歩かせてもらったりするといいでしょう。

吸音材・遮音マットを敷く

走り回る音や落下音といった生活音を防ぐために、吸音材・遮音マットを敷き詰めるリフォーム方法も人気です。いずれも表面は防音機能のある仕上げ材を施工するので、一般の床材と比べて見た目は大きく変わりません。

10㎡(約6畳)をリフォームする時の費用相場は、以下の通りです。
・吸音材を敷き詰める場合:約20万~30万円程度
・遮音マットを敷き詰める場合:約30万~60万円程度

防音室の設置費用相場

「ホームシアターを作りたい」「家で楽器を演奏したい」という場合は、しっかりした防音室を作ることをおすすめします。

一部屋を防音室にリフォーム

壁や窓、床や天井に至るまで、すべて防音対策を施した「防音室」を作る場合は、広さにもよりますが、一般的な費用相場としては約150万円以上かかります。ホームシアターとして使う場合は約150万~300万円程度ですが、楽器の中でも音漏れの大きいドラム演奏部屋として使う場合は、約500万円以上かかることもあります。一部屋まるごと防音室にリフォームする場合は、ドアや換気扇などもすべて防音仕様するためどうしても費用は高くなるのです。

組み立て式の防音ボックスを置く

一室まるごと防音室にリフォームするとなると、費用は高額になります。「もっと手軽に防音対策したい」「あまり広いスペースは必要ない」という場合は、組み立て式の防音ボックスを置くことで解決するケースもあります。2畳以下の小型の防音ボックスなら約50万~140万円程度、4畳ほどの大型のタイプなら約120万~250万円程度が費用相場です。

組み立て式の防音ボックスなら家の工事を行う必要もなく、簡易的なものなら自分で組み立てることもできます。部屋が狭くなるというデメリットはありますが、賃貸の場合や引越す予定がある場合も便利に使えるでしょう。

楽器の種類によって防音レベルが異なる

楽器によって音の大きさや高さが違うので、防音リフォームを行う時は「どんな楽器なのか」という点も影響します。一般的な目安として、以下のように分類されます。

楽器の種類音の大きさ(dB)弦楽器80木管楽器90ピアノ110金管楽器120ドラム130## マンションの防音リフォームの注意点

特に防音対策を行いたいマンションですが、実はマンションのリフォームには注意点があります。よかれと思って行ったリフォームでも、結果としてトラブルに発展しかねません。

リフォームできるのは専有部分のみ!管理規約をチェック

たとえ分譲住宅であっても、マンションで防音リフォームが行えるのは「専有部分」のみです。専有部分とはコンクリートで囲まれた住居スペースで、天井や床、壁などがあります。専有部分は入居者のものなので、制限を気にすることなくリフォームが可能です。床材を防音タイプに変えたり、天井や壁のクロスを変えたりといったことは問題なくできるでしょう。

共有部分とは、一般的に専有部分以外の場所全てを指します。マンション全体の入居者が共同で使う部分なので、勝手にリフォームすることはできません。たとえ自分しか使わないような部分であっても、共有部分をリフォームする場合は管理組合などが総会を開き、決議を取る必要があります。

たとえば自分の部屋に設置されている「窓サッシ」は自分たちしか使いませんが、マンションの共有部分となります。そのため勝手に取り換えることはできません。また、ベランダや家の前の廊下、宅配ボックスも共有部分です。しかし専有部分と共有部分の区別はマンションごとに違うので、リフォーム前にはかならず管理規約をチェックしましょう。

賃貸でも手軽にできる防音対策

「賃貸物件だから防音リフォームが難しい」という場合でも、防音グッズを活用することである程度音漏れを防ぐことができます。リフォームを行わず、手軽にできる防音対策についてご紹介します。

防音カーペットを敷く

防音カーペットは裏にウレタンなどを貼り付け、一般のものよりも厚みを持たせてあります。音を吸収する効果があり、落下音や足音などの生活音を防ぐことができます。カーペットはもともと防音性があるアイテムですが、防音に力を入れた製品なら遮音性能を表す「L値」の記載があります。一般的なカーペットよりも価格は高くなりますが、防音目的の場合はL値の記載があるか、防音に配慮されているか確認しましょう。

防音カーテンを取り付ける

音の発生源が窓に近いなら、防音カーテンを取り付ける方法もおすすめです。防音カーテンは特殊な織り方で生地を作り、吸音するように作られています。防音カーテンは高い音を防ぐ効果が高く、犬の鳴き声や女性の声を防音したいときにおすすめです。しかし振動を伴うような工事の音、電車の音などはあまり効果を発揮しません。

家具の配置を変える

防音グッズを新しく買わなくても、家具の配置を意識するだけでも防音対策になります。まずテレビやピアノなど音の発生源となるものは、隣人の部屋と隣接する壁には置かないようにしましょう。これだけでも隣家への振動が減るので、防音効果が期待できます。さらにおすすめなのは、隣人との間にある壁を壁面収納にする方法です。自分の家の収納スペースを増やしながら、隣家への防音対策もできます。壁面収納が難しくても、なるべく背の高い家具を置くだけでも音の伝わり方が違います。

防音リフォームに補助金が出る場合

自分が発生させる音ではなく、外部からの音が気になるケースもあります。騒音が発生しやすい場所なら、防音リフォームに対して補助金が出ることもあるのです。

幹線道路の近くにお住まいの方

昼夜問わず交通量が多い幹線道路沿いの住宅は、一日中騒音に悩む人も少なくありません。たとえば東京都建設局では昭和55年から「幹線道路の沿道の整備に関する法律」が制定されていて、防音リフォームを行った場合助成金を受けることができます。助成を受ける条件としては、騒音の大きさが夜間に65デシベル以上、または昼間に70デシベル以上などがあります。ほかにも条件がありますので、詳しくは東京都建設局HPをご参照ください。

参照:防音工事助成

東京都以外にも、幹線道路近くに居住している場合は自治体のHPをチェックしてみましょう。

空港の近くにお住まいの方

近年、航空機の静粛性のレベルは高まっていますが、それでも空港近くに居住している人にとって、離発着時の騒音は気になるものです。国が第一種区域として騒音が著しいと定めた区域なら、防音リフォームの一部を補助してくれるケースがあります。たとえば大阪国際空港周辺や福岡空港周辺で、昭和57年3月30日までに建築された住宅などが対象になります。ただし毎年公募制であり、申し込みには期限があります。詳しくは、それぞれのHPをご覧ください。

・福岡空港周辺にお住いの方はこちら(独立行政法人 空港周辺整備機構HP)

・関西国際空港周辺にお住まいの方はこちら(関西エアポート公式HP)

自衛隊、在日米軍基地の近くにお住まいの方

住宅が自衛隊や在日米軍基地周辺にある場合も、防音リフォームで補助金が支給されるケースがあります。しかしリフォームは防衛省が定めた「住宅防音工事標準仕方書」を元に行わなくてはいけません。
参照:防衛省・自衛隊HP 防音事業工事標準仕方書

原則として住宅防音工事にかかった費用は100%補助してもらえますが、限度額もあります。さらに自己都合で防音材をアップグレードする場合は、その分は補助対象外です。

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