佐々木朗希は「日本の宝」 沢村賞2度の斉藤和巳氏も驚嘆「久々に見ましたね」

元ソフトバンクで現在は野球解説者の斉藤和巳氏【写真:松橋晶子】

“令和の怪物”のキャッチボールを目撃し「大谷の1年目よりスゴイ」

今年、新たにプロ野球の門を叩いたのは、支配下74人、育成33人、合計107人のルーキーたちだ。ドラフトでは12球団のうち7球団が高校生を指名するなど、高卒選手が“豊作”の年となったが、その中でも最も大きな注目を集めているのがロッテの佐々木朗希投手だ。

大船渡高時代から150キロを超える本格派投手で、ついた渾名は“令和の怪物”。ドラフトでは4球団が競合した逸材を、ロッテは焦らずじっくり育成する方針だが、キャンプではキャッチボールをするだけで周囲から驚嘆の声が止まらず。キャンプを訪問した球団OB、解説者はもちろん、他球団の選手たちをも唸らせた。

かつてソフトバンクのエース右腕として活躍し、2度の沢村賞、3度の最優秀投手賞などに輝いた斉藤和巳氏もその1人だ。2006年には史上7人目の投手5冠(最多勝、最高防御率、最多奪三振、最高勝率、最多完封)を達成したレジェンドは、2月に石垣島でのキャンプを訪れ、そこで見たキャッチボールに唖然としたという。

「ブルペンは見られなかったんですけど、キャッチボールは見ました。いやぁ、ちょっとスゴイです。大谷(翔平)の1年目より、ピッチャーとしてはスゴイです」

思い返すだけでも言葉に熱を帯びるくらい、18歳右腕から受けた衝撃は大きかった。

「投げるボールはもちろんですけど、投げる姿やフォームも含め全体的に、1年目のキャンプ時の大谷よりいいと思います。大谷が1年目の時、キャンプでブルペンを見て『おぉ速いな』って思いましたけど、佐々木は『速いな』プラス『近いな』って感じました。少し近めの距離でキャッチボールをしていると思っていたら、終わった後で聞いてみるとマウンドからホームまでと同じ、18.44メートルで投げていたんですよ。横から見ていたら、いやいや、めっちゃ近く見えましたね(笑)」

斉藤氏が感心するバランス感覚「あれだけ足を大きく上げても体がブレない」

驚きのあまり笑いさえ起きてしまう斉藤氏だが、佐々木のキャッチボールはなぜ距離が近く見えたのか。指を離れたボールが相手のグラブに届く速さなのか、投げるボールが持つキレなのか、はたまた投球フォームなのか。

「全部ですね。投げる姿もフォームも全部。久々に見ましたね、18.44が近く見える選手は。僕はあまりそう感じることはないんですけど。確かに背も高いですけど、それ以上のものがある。僕は真後ろからではなく、真横からしか見なかったんですが、それだけでも十分衝撃でした」

となれば、バッターボックスに立って対戦する打者には、佐々木との距離がさらに近く感じられるのではないだろうか。

「打席に立ったら、かなり近く感じると思います。傍から見ている僕らは楽しみでしかないですけど、監督やコーチの責任は大きいですね。これまでの指導者も大変だったと思いますよ。チームだけの問題じゃない。日本の宝ですから。これは潰さないように、しっかり育てなければ」

投手を見る時、斉藤氏はまず投げる全体像を見てから、細かな技術的な部分をチェックするという。佐々木の投げ姿の中でも、特に目を引いたのが「バランス感覚」だ。

「あれだけ足を大きく上げても体がブレない。まだ体が出来ていないと言われながら、あれだけ足を上げても大丈夫なのは、彼の中でのリズムがしっかりあるから。軸がブレない彼なりの強さも持っているんでしょうね。ランニングをしても足が速くしっかり走れるので、周りが思っているほど弱くないと思います。ただ、まだ18歳。まだまだ成長しますね」

投手コーチとして佐々木を育成するとしたら…「絶対に嫌です(笑)」

プロの世界に足を踏み入れた佐々木は、どんな投手に成長するのか。その過程を間近で見られる監督やコーチは楽しみでしかないだろう。

「楽しみでしょうね。でも、僕がコーチなら嫌です。絶対に嫌です(笑)。責任がものすごいので。ただ、相手チームとして戦うのも嫌ですけど(笑)。もちろん、ああいう選手と関われるのは野球人冥利に尽きると思います。でも、投手コーチは他のピッチャーのことも考えないといけない。40人近くいるピッチャーはみんな平等に考えないとチームの輪がおかしくなりますから。佐々木専属コーチでいいというならやらせてほしいですけど、それくらい責任重大だなと思います」

佐々木は大谷をも凌ぐ投手になる可能性はあるのだろうか。斉藤氏は「今までにない投手になる雰囲気がある」と話す。

「いろいろ上手くいったら、想像を遥かに超えるピッチャーになる可能性があると思います。もちろん、難しい部分も出てくるでしょう。それでも期待をしてしまう選手。いろいろと想像を広げさせてくれますよね」

この先、“令和の怪物”はどんな進化を遂げるのか。プロとして歩む道を見守りたい。
(Full-Count編集部)

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