WorldRX:eシリーズ第2戦は開幕勝者SVGに雪辱したBMWのトム・ブロンクビストが初優勝

 6月21日(日)にノルウェーのヘルで開催されたWorldRX世界ラリークロス選手権の新eシリーズ『WorldRX Esports』第2戦は、開幕戦で初代ウイナーの称号を得たVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの元王者、SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンに対し、雪辱を期したBMWファクトリー契約ドライバーのトム・ブロンクビストが参戦2戦目で早くも初優勝を飾っている。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策でシリーズ開催が延期されている期間、WorldRXプロモーターのIMGが仕掛けたeスポーツ・イベント『World RX ESports Invitational Series』がグローバルな反響を得たことを受け、シリーズは新たに全4戦の本格的バーチャル・シリーズ開催を決定した。

 その開幕戦アブダビでは現WorldRX世界チャンピオンのティミー・ハンセンを筆頭に、弟のケビン・ハンセン、アンドレアス・バッケルド、ティモ・シャイダーらWorldRXレギュラー勢に加え、現役F1ドライバーの跳ね馬乗り、シャルル・ルクレールの電撃参戦など大きな盛り上がりを見せた。

 今回の舞台となる北欧の伝統的ラリークロス・トラックのヘル戦にも、開幕に続きWTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のエステバン・グエリエリが、ALL-INKL.COM Muennich Motorsportのセアト・イビーザRXスーパーカーで参戦。コードマスターズが提供するゲーミングプラットフォーム『DiRT Rally 2.0』を採用した仮想空間での勝負に臨んだ。

 まず4セッションが行われた予選ヒートで最速を分け合ったのは、現役WorldRX王者ティミーと、このラリークロスeシリーズ初参戦初表彰台からわずか2戦で勝利を飾っている開幕戦勝者SVGのふたり。ドライだったQ1、Q2ではティミーが、ウエットに変貌したQ3、Q4ではSVGがトップタイムを記録し、合算の中間リザルトではティミーがTQ(top qualifier)となり、セミファイナル1のポールポジションを確保した。

 そのままウエット路面で始まったセミファイナル1は、弟のケビン・ハンセンを従えたティミーが終始レースを支配し、勝利を挙げ早々にファイナル進出を確定。一方、セミファイナル2のポールシッターSVGも順当に決勝進出を決め、DTMドイツ・ツーリングカー選手権やWEC世界耐久選手権でBMWを操ってきたブロンクビストに加え、RX2 International Series参戦中のヘンリック・クログステッドに、こちらも地元のラリークロス・ドライバー、マリウス・バーミングルーのプジョー208WRX計6台がファイナルへと進んだ。

決勝早々にジョーカーを消化し、現WorldRX王者ティミーを仕留めたSVGだったが……

 そのオープニングラップでは、インサイド2番手発進だったSVGが真っ先に外周“ジョーカーラップ”消化へ飛び込み、ティミー、ブロンクビストの2台が先行して集団を引っ張る展開に。しかしレースはすぐさま動きを見せ、2周目にジョーカーを回ったティミーが合流してくると、続く左ヘアピンではSVGが首位ティミーのインサイドに並びかけ、2台のプジョーはドリフト状態でわずかに接触しながらSVGが前に出てコーナーを立ち上がっていく。

 オーストラリア大陸のツーリングカー王者ながら、このロックダウン期間中にあらゆるカテゴリーのeスポーツで腕を鳴らしてきた仮想空間マイスターは、このヘルでもコース幅を一杯に使った盤石のドライビングを披露。背後にいるティミーをラップごとに突き放し、まだジョーカーを使用していないブロンクビストとの直接対決に向け、見た目上のマージンをじりじりと削っていく。

 そして6周目のファイナルラップ。ブロンクビストがドライブする漆黒のプジョーがジョーカーへ向かうと、その進入でガードバンクにわずかにテールを接触させたブロンクビストが失速。これでSVGに勝機あり……かと思われたが、合流路へ向け立ち上がったブロンクビストが辛くも首位ポジションをキープ。そのままSVGのチェイスを振り切ったブロンクビストが、薄氷のWorldRX Esports初勝利を手にした。

「正直言って、この日はウエットの路面に苦戦していたんだ。練習のドライでは良いタイムが出ていたからね」と振り返ったイギリス出身のブロンクビスト。

 実際、ウエットだったこの日のセミファイナル1では最下位に終わっていたものの、2位のケビン・ハンセン以下3台がバトル中の接触による5秒加算のタイムペナルティを受けたため、ファイナルでは3番手からスタートを切っていた。

「そう、決勝スタートでまともなポジションを得て、ティミーがジョーカーに去ってからはクリーンエアのなかハードなプッシュを続けた。それでいくらかマージンを稼ぐ良いラップができたはずだ」と続けるブロンクビスト。

「シェーン(ヴァン・ギズバーゲン)が強いだろうことは分かっていたが、僕自身の最速ラップを重ねることで、なんとかまとめることができた。ジョーカー進入はすべて台無しになりそうなミスだったけど、それ以外はうまくいったね。彼らと戦えたのは最高だったし、本当にクールなイベントだったよ」

 その他、開幕戦に続いて参戦したこちらもVASCレギュラーのスコット・パイは、中間リザルトで11位と健闘。南アフリカ出身のケルビン・バン・デル・リンデやWRC世界ラリー選手権で優勝経験を持つヘイデン・パッドン、ERCヨーロッパ・ラリー選手権参戦のタマラ・モリナーロらは惜しくも予選ヒート敗退となっている。

 一方、別クラスとして開催されたプロのシムレーサー10名による勝負は、開幕戦勝者の兄クエンティンを降した、現DiRT Rally 2.0世界王者でもあるキリアン・ダロルモが勝利し、こちらも雪辱を果たしている。

2019年はIMSAを主戦場に、BMW M8 GTEで戦ったトム・ブロンクビスト

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