「人類はコロナに勝てる」未収束でも株価が上がる2つの理由

世界各国で起きた新型コロナウイルスによる株価暴落は大きく値を戻しました。日経平均は6月23日時点で2万2,549円と暴落前の90%ほどまで回復しています。一時は1万6,000円台まで下落しましたから、そこからすると40%ほど値上がりしたことになります。

日本以外の各国、特に先進国の株価指数は大きく値を戻しています。中でも際立つのが米国のナスダック総合指数で、23日時点で1万0,131ポイントと暴落前の株価を上回って1万ポイント台をつけ、史上最高値を更新しています。

感染拡大の第二波への警戒も残り、まだまだ経済への悪影響も大きいとみられるなか、なぜこんなにも株価は戻しているのでしょうか?果たして今はいわゆる「バブル」なのでしょうか?


株価反発の2つの背景

筆者は足元の株価上昇の理由には大きく2つあると考えています。

1つ目は感染拡大の収束期待です。ブラジルなど感染拡大防止のための施策が手薄な一部新興国ではいまだに感染拡大が続いているものの、米国や日本、欧州の多くの国などの先進各国では都市封鎖などの施策が功を奏し、感染拡大ペースは大きく鈍化しました。日本でも緊急事態宣言が解除され、経済再生の方向に舵が切られたのは皆様ご存知の通りです。

さらに新型コロナウイルスに対処するためのワクチンの開発や治療薬の研究も進んでおり、この秋にも有効なワクチンの供給が始まるとの期待感も高まっています。
大げさな言い方かもしれませんが、人類は新型コロナウイルスに勝てるのだとの期待が株高の1つ目の背景です。

そしてもう一つが世界各国の未曾有の財政支出の拡大と金融緩和の実施です。国際通貨基金(IMF)の集計によれば、世界各国の新型コロナウイルスに関連した経済対策の規模が10兆ドル(1,070兆円)に達しました。

また、米FRB(連邦準備制度理事会)や欧州中央銀行、日本銀行など世界の主要な中央銀行はリーマンショック後を上回る大規模な金融緩和を実施しています。

こうして世界にあふれた大量のマネーは行き先を探します。当然まずは人々の生活の支えとなったり企業の資金繰りに使われたりした後に、リスク資産に流れ込んでいくことになります。それが株高のもう一つの背景にあると考えられます。

<写真:ロイター/アフロ>

V字回復は起こるのか?

ここまで株価が戻る以上、マーケットは世界経済がV字回復すると見込んでいるということでしょう。果たしてそれは本当に起きるのでしょうか?

米国の経済指標をチェックすると確かにすでに大きく改善したものが散見されます。6月5日に発表された5月の雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月から75万人減るとの予想に反して250万人増と大きく回復しました。住宅販売件数や企業の景況感指数なども大きく回復してきています。

また、日本企業が発表している月次売上高にも良い兆候が現れてきています。子ども向けの暮らし用品を展開する西松屋チェーンが発表した6月(20日締め)の既存店売上高は、前年同月比33.8%の大幅増となりました。

衣料品チェーンのしまむらが発表した6月の既存店売上高も、前年同月比27%増と大きく増加しました。しまむらの既存店売上高が前年比プラスだったのは10ヵ月ぶりのことです。4月は前年比28.1%減、5月は23.4%減でしたから、まさにV字回復を達成しています。緊急事態宣言中にたまっていた需要が爆発しているというところでしょう。

このようにV字回復は少しずつ起こり始めています。経済がこのあと順調に回復するというシナリオをマーケットは織り込んでいるようです。

今は“バブル”なのか?

経済は回復に向かっていきそうですが、足元の急激な株価反発を受け、「今はバブルではないのか?」と心配されている投資家の方も多いようです。

筆者は株価にはやや割高さを感じますが、いわゆる“バブル”からは遠い状態にあると考えています。新型コロナの影響で今期は業績予想を未定にしている会社が多く、当てにしづらいものの現在の日経平均の予想PERは18倍強、PBRは1.1倍です。アベノミクス相場入り後の日経平均の予想PERはおおむね12倍〜15倍程度だったので、確かにやや高い数字になっています。

ただ、今期の企業業績が新型コロナの影響で悪くなることは誰にでもわかっている話で、来期以降の回復が見込めるならば許容範囲と言えそうです。1989年・1990年頃の日本の不動産バブルの時代には日経平均のPERは80倍程度ありました。そういったレベルのバブルとは現在は全く程遠い状態にあることがわかります。

前述したとおり世界各国で大規模な金融緩和や財政支出が行われている以上、景気の押し上げ効果が相当にありますし、来期以降の企業業績の回復は想定できそうです。もちろん一時的な感染数の増加や米中対立などで株価が若干調整する局面は当然ありえますが、そういった際には下値を拾っていくスタンスで良いと考えています。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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