香川の「朝うどん」の謎を追え!午前中しか営業していない人気店も?

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昼過ぎまでしか食べられない?香川のうどん屋の謎

ラーメンそばと並ぶ日本の人気麺料理、うどん。小麦粉と塩、水だけで作られるシンプルな麺ですが、個性的で奥深い食感に多くのファンがいます。

このうどんの本場が、四国にある香川県。県民の年間うどん消費量は日本人平均の7倍にもなるといわれており、県内には600以上のうどん屋が軒を並べています。

しかし、香川を訪れる観光客が戸惑うのが、うどん屋の多くは早朝から昼過ぎまでしか営業していないということ。

居酒屋文化がある日本では、外食は夜にするというイメージがあります。昼までしか開いていない香川のうどん屋は、多くの日本人にとっても不思議です。

今回は、筆者の住む香川県西部の三豊(みとよ)市で、3つの店を取材しながら、この謎を探りました。

1.人気のチェーン店「こがね製麺所 高瀬店」

「こがね製麺所」は、香川県を中心に、四国や岡山県、関東地方などで営業する人気うどん屋チェーン。店舗の多くはフランチャイズで、店ごとに営業時間やメニューは少しずつ異なります。

しかし公式HPをチェックすると、面白いことが分かりました。

18ある香川県内の店舗は、6:00あるいは7:00に営業開始し、15:00~16:00頃に終了します。しかし、他県や東京に関しては、9:00~11:00頃に開店し、夜は21:00前後まで営業している店が多くあります。

香川県と他県で、なぜこんな違いがあるのでしょうか?

今回の取材では、筆者の自宅近くにある「こがね製麺所 高瀬店」にご協力頂きました。

ここは、昼はサラリーマンや家族連れ、近隣の高校生などで行列ができる人気店。筆者もよく食べに行っています。

「こがね製麺所 高瀬店」の営業時間は6:00~15:00。平日の6:00~10:00は、「かけうどん(小)」(※1)が170円(税込。通常価格は230円)となるタイムサービスを実施しています。

「こがね製麺所」のうどんは、適度な弾力とやわらかさがあり、食べやすいのが魅力。おいしさにこだわるため、日本の国産100%の小麦粉を使っているということです。

「こがね製麺所 高瀬店」は、2011年にオープンした当初は7:00~18:00で営業していました。しかし、店長の尾崎さんによると「夕方は人がほとんど来ない上、もっと早くから開けてほしいという要望を多く頂きました」とのこと。

そこで営業時間を現在の6:00〜15:00に変更したところ、お客さんが増えたとのことです。筆者は今回、平日6:30頃に行きましたが、確かに作業着姿の男性や、ご夫婦らしいカップルなどが断続的に入店していました。

朝から来るお客さんには、近くの工事現場などで早朝から働く人が多くいそうです。ただ、「それだけでは他県との違いが説明付かないのでは。朝や昼は、安く早く食べられるうどんで気軽に済まそうというのは、香川の県民性が大きい気がします」(尾崎さん)。

2.郷土食が楽しめる「帰来亭」

朝うどんは、香川県の県民性に由来する文化なのか。次の店で探ってみましょう。

JR本山駅から徒歩10分程度の距離にある「帰来亭(きらいてい)」は、地元出身のご主人が2014年にオープンしました。現在は6:00~14:00で営業しています。

「かけうどん」(小)は通常、220円ですが、6:00~9:00はタイムサービスで160円となります。うどんは、ツルツルしたのど越しの素晴らしさが魅力。

「帰来亭」では、「もっそめし」(税込140円、上の写真右)と言われる、油揚げやこんにゃく、いりこ(※2)などを入れたご飯を提供しています。これは、この地区の郷土料理。

実は「帰来」という店名も、この地区の名称に由来するということです。そんなところにも、地元密着のスタンスを感じますね。

「帰来亭」はなぜ早朝から営業しているのか。ご主人によると、「店を始める前に友人たちに相談をしたところ、『仕事前にうどんを食べたいから、朝早くから開けてほしい』という声が多かったため」とのことです。

筆者が平日6:00過ぎにお邪魔した際には、作業着姿やジャージなどのラフな格好のお客さんが数人いて、うどんを食べながら新聞を読んだり、テレビのニュースを見たりしていました。常連客も多いようで、来店時にご主人に挨拶を交わす人もいました。

なお、うどん好きの筆者の友人に聞いたところ、「田舎のうどん屋の場合、農家の人が早朝の仕事を終えた後にうどん屋に来る場合がある」ということです。「帰来亭」の周辺にも農地が多くあることから、農家の方も多くいらっしゃっているのかもしれません。

3.老舗中の老舗!「上杉食品」

最後に訪れたのは、老舗中の老舗であるうどん屋です。

「上杉食品」は1907年の創業。もともとうどんの麺や日用品を販売する小売店でしたが、2000年頃から食堂を開いて、茹でたてのうどんを直接提供するようになったということです。

日本の人気映画『UDON』(2006)にも登場することから、今は常連客だけでなく、多くの観光客も訪れます。

「上杉食品」のオフィシャルな営業時間は、土日祝日は6:30~9:00。平日は6:30~8:00とたったの1時間30分だけ。もっとも、うどんの麺が残っていれば、昼頃まで開けている日もあるということです。

多くのファンを惹き付ける「上杉食品」のうどんは、コシの強さが魅力。歯応えのしっかりした麺を食べていると、なんだか元気になってきそうです。

「上杉食品」では、「かけうどん」や「醤油うどん」、生卵を入れる「かまたまうどん」のほかに、ユニークなメニューとして「納豆うどん」を提供しています。

日本人には、朝から納豆を食べる人が多くいます。「上杉食品」で以前、お客さんの要望によりうどんと納豆を一緒に提供したところ、好評だったことから、今では定番メニューとなったとのこと。

筆者はあまり納豆が好きではないのですが、納豆を醤油うどんにトッピングして食べてみたところ、歯ごたえのあるうどんの麺と、ねばねばした納豆が絶妙なハーモニーを生み出し、予想外のおいしさに驚きました。

「上杉食品」が朝だけ食堂を空けているのは、もともと食堂に特化したお店ではなく、現在も午後は近隣の市場などで販売する乾麺を製造しているという事情もあるようです。

ただ、店の方に話を伺ったところ、やはり「朝から食べたい、という地元の声が多いから」という事情もあるとのこと。

今回、筆者が土曜日の朝9:00頃に訪れたところ、常連客らしき地元の方の姿を多く見かけました。

ちょうど筆者がうどんを食べていた時、小さな子ども連れの夫婦が入ってきました。夫婦はうどんを食べながらご主人と世間話をし、子どもは学校で覚えた歌を歌って聴かせる。そんな光景を見ていて、筆者は暖かい気持ちになりました。

関東地方で育った筆者は、子どもの頃、休日の朝は自宅で家族で団らんしていました。しかし、うどん屋で朝、家族団らんをする。これが香川県民の姿なのかもしれません。

香川県に来たら、早起きしてうどんを楽しもう!

なぜ香川県では、朝から昼までしか営業していない店が多いのか。結論としては、朝、外食するのが好きだという県民性に由来するということになりそうです。

団らんする家族、仕事前に気合を入れる労働者、早朝仕事を終えた農家……。朝のうどん屋に行くと、通常の観光地ではまず見られない日本の一面を目の当たりにするでしょう。

皆さんも、香川に来たら、いつもより少し早起きしてみてはいかがでしょうか? 湯気の立つ朝のうどんを食べれば、きっと素敵な1日を始められますよ!

うどん屋を巡るツアーも

香川県には、公共交通機関だけではアクセスが難しいうどんの名店も多くあります。そんな隠れた名店を巡りたい方は、便利なツアーがオススメです。

琴平バスが運営する「うどんタクシー」では、うどんに詳しい運転手兼ガイドが、ガイドブックには載っていないような名店を案内してくれます。うどんのどんぶりのオブジェが乗った「うどんタクシー」に乗ること自体も、「うどん県」香川の観光のすばらしい思い出になるでしょう。

UDON HOUSE」は、うどん打ち体験に特化した、日本でも珍しい宿泊施設。1日かけてうどんの作り方や歴史を学べるほか、農園ツアーにも参加できます。

この「UDON HOUSE」の体験プログラムに含まれているのが、朝の「うどんホッピング」。知る人ぞ知るうどんの名店を朝巡り、朝うどんの文化を丸ごと体験できます。

「うどんタクシー」「UDON HOUSE」はどちらも英語に対応しています。また、両者を一度に楽しめるツアー「Kagawa Gastro Tours」もあるので、以下の記事もぜひ参照してくださいね!

In cooperation with こがね製麺所 高瀬店、帰来亭、上杉食品