コロナ禍の就活最前線!打ち切り・長期化・採用担当AI!? けいナビ

今週のテーマは「就職活動」。ことしのスケジュール(政府指針)は、3月に説明会解禁、6月に面接などの選考解禁。新型コロナウイルスの感染が広がり始めたのが2月頃で、学生や企業は影響を大きく受けている。

就職活動をしている札幌の大学生たち。左から和田さん・内村さん・森木さん

札幌の大学に通う和田さんは、「企業によって新型コロナウイルスの収束の見込みが違う。長期化すると思っているので、『夏ごろには業績は大丈夫』と言っている企業は疑いの目で見てしまう」と話す。

選考の途中で採用を打ち切った企業も

東京のITベンチャーへの就職を目指す内村さん。面接がいち早くオンラインに切り替わり、3月以降、対面での面接はしていないそう。こうした対応からも、ベンチャー企業の対応の早さを感じたという。一方で、ベンチャー企業は採用人数が多くないのも特徴。選考の途中で複数の企業から、採用を打ち切るというメールが届いた。内村さんは「採用打ち切りの連絡がきたことで、自分の考えが甘かったことに気づかされた」と話す。

道外企業への就職を目指す森木さんは、感染のリスクを考え、4月に東京であった面接を辞退したという。Webでの面接に切り替えてもらえないか交渉したが、受け入れてもらえなかったそう。森木さんは「自分が面接に行って、帰ってきて周りの人にうつしたら怖い」と心境を話してくれた。

ことしの就活の大きな変化は、面接などの「オンライン」化。交通費や移動の時間がかからない利点もあるが、前例が少なく先輩からの助言も受けづらい。学生たちは工夫を重ねているようだ。内村さんは、これだけは伝えたいということをメモにしてパソコンに貼っている。森木さんは、表情が明るく見えるよう、窓の前で、昼でも電気をつけて面接をしているという。

観光系の専門学校は、売り手市場が一変した

一方、ブライダルや観光業界を目指す学生が通う、札幌ブライダル&ホテル観光専門学校。去年までの売り手市場が一変。例年、6月にはおよそ半数の学生が内定をもらっているというが、ことしはほとんどの学生の進路が決まっていないという。

ホテル・エアトラベル科2年の南舘さん。航空会社のグランドスタッフを目指しているが、採用計画が見えず困惑しながら就職活動を続けている。南館さんは「エントリーした企業が今一時中断という形で、就職活動自体ができないという状態はとても不安だが、まずは(観光)業界に就職することを目指している。まずは行動するのみということで動いている」と話す。

マイナビ北海道支社の川原田崇支社長

就職情報大手のマイナビ。川原田北海道支社長は、近年の傾向として就活の早期化を挙げた。要因の一つは、3年生の夏ごろから行われるインターンだ。川原田支社長は「去年から一生懸命動いていた学生は、企業との接触も当時はリアル(対面)でできていた。3月から始めようとした学生は、いきなりオンラインになってしまった。そこでとまどいもあり、例年以上の二極化が大きく進んでしまった」と話す。

就職活動の早期化とコロナ禍で例年以上の二極化が進んでいる

一部の企業ではインターンが実質的な選考となり、内々定の早期化が進んでいる。一方、新型コロナウイルスの影響で選考を後ろ倒しする企業が増え、早期化の波に乗れなかった学生は内々定が得づらく、長期化は避けられないという。川原田支社長は「去年までとはまったく違う、厳しい状況。秋くらいまで長期化すると考えていた方がいい」と話す。

東京・港区のデータアーティスト

一方で、採用活動にAIを活用する動きも。広告の効果分析など、マーケティングにAIを活用する事業を手掛けている「データアーティスト」。コロナ禍で採用イベントが続々と中止されている情勢を受け、AIを使った採用活動を企画した。

会社の情報や募集要項など、学生の質問に答えるAIだ。文章で会話ができる「チャットボット」という技術を応用している。AIとなった社長を24時間働かせるという、ユニークな設定だ。会社の情報などだけではなく、日常会話もできるようにした。旭川出身で、開発者の岩元さんは「我々が言語処理に強いという強みがあったので、それを生かせないかと試みている。コミュニケーションを取りながらどういう会社か知れたら楽しいのでは」と話す。

モデルとなった山本社長

モデルとなった山本社長は「かなり広い範囲でいろいろなことを答えられるようになっていて、僕より優秀。AIならではの、人間ができていなかったことができているのではないか」と話す。こうした採用に活用するAIは開発の余地が大きいという。既に他人のエントリーシートを転用する不正の防止や、学生と面接官が同じ大学出身といった“縁故”を避ける仕組みなど、採用に生かせるAIを開発してきた。

開発者の岩元さん

山本社長によると、採用などの人事に生かすAIは「HR(ヒューマンリソース)テック」と呼ばれ、ここ2年ほどで注目されている分野だという。山本社長は「非常に伸びしろがある。HRテックと言っても、現状データを蓄積するアプリしかできていない。データを蓄積するだけでなく、課題解決のためのAIを部分的に依頼を受けている状況」と話す。

この危機を乗り越えるためには、学生・企業双方の努力が必要だ。
(2020年6月27日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)
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