名前はランチ。でも朝ご飯にぴったり!「ランチパック」大解剖

おいしい朝食で新しい一日を迎えよう

あなたは、朝食に何を食べますか? 筆者の母国・タイでは、自炊するなら白米にカイジオ(タイ風オムレツ)でしょうか。あるいは、家から少し出かければすぐにムーピンカオニオ(豚串の炭火焼き&もち米)やナムタオフ(豆乳)などの屋台があちこちにあります。またたくさんのおかずが並ぶお惣菜の店に行って、好きなものをご飯にかけてもらって食べるのもあり!

一方、日本人は朝食に何を食べるのでしょう。以前、日本人の友人宅に泊まったとき、朝ご飯に友人のお母さんが焼き魚と付け合わせの野菜、玉子焼き、ご飯、味噌汁をセットで用意してくれました。日本のドラマで見たのと同じでした!

でも実際は、忙しい日本の朝に、全員がこのようなものを作れるわけではありません。中には朝食の時間すら取れない人もいます。

旅行者の皆さんは、早朝から出かけないといけないことも。レストランもまだ開いているところは少ない。そんな時にはどこでも買えて、持ち運びも簡単で、手軽に食べられるものを選びたいところ。

そこでピッタリなのが、ランチパック (Lunch Pack)です!

種類豊富な携帯用サンドイッチ「ランチパック」

子どもの頃は、食パンを食べるたびに、何よりもパンの耳にうんざりさせられました。どうしてパンには、あの固くてパサパサな耳が必ず付いてくるんだろう? 三角形のサンドイッチを買ってきても、耳の無い真ん中の部分からかじっていって、最後に残った耳はそのまま残してしまったものです。

その後、10年前に初めて来日した時にもっともハマったのが、このランチパックのサンドイッチです。

袋を開けると、四角いサンドイッチが2枚入っています。食パンは重ねて四辺を圧着されているので、手を汚さず食べられます。もちろん、耳もありません!

袋の中はエアーで満たされて膨らんでいるので、買った後かばんにしまっても、パンが潰れたりフィリングが漏れたりする心配がありません。何より気に入ったのは、パンの柔らかさです!

スイーツ系と惣菜系

ランチパックのもう1つの特徴は、スイーツ系から惣菜系までたくさんの種類があるフィリングです。

まずはスイーツ系。ジャムやカスタード、チョコレート、さまざまな味のクリーム、小倉あんや抹茶クリームなど和風のフィリングもあります。

続いては、「商品担当者はどうやって作ったんだろう?」と思わせる惣菜系。ハム&エッグ、ツナマヨネーズ、メンチカツなどよくある具材もありますが、ハンバーグやナポリタン入りのものまであるんです!

ご当地ランチパック

日本全国で売られているレギュラー商品の他にも、地方ごとにしか売られていないご当地限定のフィリングもあります。その地方の名産品や名物グルメがパンに挟まれているのです。写真は、九州地方限定の「熊本県産トマトのカレー」です。

地方に観光に行ったら、ぜひ探してみてください。他では売っていない味に出会えますし、同時にその土地の名物が何かも知ることができますよ。

ランチパックは全国のコンビニやスーパーで買うことができますが、今回は秋葉原駅構内にあるランチパックの専門店をご紹介したいと思います。

ランチパックSHOP TX秋葉原店

ランチパックSHOP はランチパックの専門店で、TX秋葉原店と池袋店の2店舗があります。今回はつくばエクスプレス(Tsukuba Express)秋葉原駅のB1F改札近くにある「TX秋葉原店」をご紹介します。

店の屋根にいる2人の子供たちは、ランチパックのマスコットキャラクターを務めるランチちゃんとパックくんです。ランチパックを日本語風に発音すると「ランチパック」になり、2人の名前もここから来ています。

お店の中は色とりどりのランチパックでいっぱい。圧倒されて目が眩んでしまいますね。

店内では、商品の売れ筋がランク付けされています。上の写真にあるPOPをちょっと見てみましょう。写真左上から甘味部門、右上は総菜部門、左下は新商品、右下は限定取り寄せです。

ここでいう限定取り寄せ (限定取り寄せ) とは、前述のご当地ランチパックの一部を、各地からこの店に取り寄せたもの。置かれている商品はどんどん変わっていきます。その月々にどんな商品が入って来るのかは、店内左側に貼り出されているお知らせでチェックできます。

筆者が訪れた時には中部地方のタレカツ、九州地方の福岡県産あまおう苺ジャム&ホイップなどがあり、ひと月に10種類ほどが集められます。

レギュラー商品を含めると、この店では毎月約40種ものランチパックを取り扱っているそう。日本の中で一番ランチパックが集まっている場所に違いないでしょう。

ランチパックSHOP TX秋葉原店の特別なところは、スタンプカードを集めるとクリアファイルセット、タンブラーなどのグッズがもらえることです。スタンプカードを7冊集めたら、オリジナルトースターがもらえちゃいますよ!

これほどの品揃えを見ると「ランチパックのフィリングは全部で何種類あるのか」「それぞれのフィリングは誰が考えているのか」などの疑問が湧いてきます。これらの質問に答えてくれるのは、生産者の方しかいないでしょう。

山崎製パンにお邪魔して聞いてみよう!

部屋に入ると、さっそく10種ほどのランチパックが私たちを出迎えてくれました。ここはランチパックを製造している山崎製パン(Yamazaki) です。1948年創業の日本の大手製パン企業で、日本でその名を知らない人はいません。

1,600種類、4億個

「1,600種以上です」。これが、知りたかった質問「フィリングは何種類あるのか?」への回答でした。

今回取材に協力いただいたのは、ランチパックの商品開発に携わる保田さんと赤井さんです。保田さんが話した1,600という数字は、記録が残っているものだけの数で、初期に生産されたものは記録が残っていないため把握できていないそうです。

毎月のように新商品が発売されており、新しい味のフィリングや、季節限定の商品(春にはさくらあん、秋にはスイートポテトなど)、また、過去に人気だった味が再発売されたりしています。

全国で毎月40~50種のランチパックが販売されており、2019年は年間約4億個も生産されたそうです!

これまで販売されてきた1,000にものぼるフィリングの中で、ピーナッツ、たまご、ツナマヨネーズはいつでも買えるレギュラー商品。長年売上トップ3の地位を守っている人気のフィリングです。

特にピーナッツは、1984年のランチパック誕生からのロングセラー商品です。発売開始当初は、ピーナッツ、小倉、ヨーグルト、青りんごの4種類のみでした。

パンに付いたマークにも意味がある

ピーナッツクリームが入ったパンの表面にはピーナッツマークの焼き印があります。これはピーナッツアレルギーを持つ人が誤って口にしてしまうのを防ぐために、ピーナッツが入っていることを知らせているのです。それにしても可愛さを隠しきれません。

もう1つの食パンマークは、1つの袋に2種類のフィリングが入っているランチパックに付いてきます。写真の商品「フィッシュフライとたまごマカロニサラダ」は、パッケージに、食パンマークのパンがたまごマカロニフィリングであることが表記されています。

1袋に2つの味があるなら、1袋に4つの味を詰めれば嬉しさ倍増! こちらはそれぞれのフィリングが通常の半分サイズになって、見た目も何とも言えない可愛らしさです。フィリングはたまご、ツナ、ロースハム、ソーセージが入っています。

訪日外国人旅行者に向けた英語表記も

外国人である筆者も、漢字が読めないことがたまにあります。日本語がまったく分からず写真やイラストに頼らざるを得ない外国人旅行者のために、ランチパックは2020年1月から、6種類の商品パッケージに英文の記載を始めました(2020年4月にさらに8種追加)。

2020年5月には、日本の味や文化を感じられる「ランチパック 抹茶板チョコと抹茶クリーム」、「ランチパック かつ煮風」が登場。これらもパッケージに英文で記載されています。すべての商品ではありませんが、これによってかなり旅行者の皆さんが手に取りやすくなりました。

ただ、何も分からないまま買うのもいいものです。一体自分がどんな味を買ったのか、ゲームみたいでわくわくしてきませんか?

ところでパンの耳は一体どこへ?

ランチパックをつくる際に切り落としたパンの耳。これも無駄にはしません。さまざまな味のラスク(Rusk)になるのです。

確かに、パンの耳でできています。見てください、パンの角の部分もありますよ。ちょっとしたおやつにぴったりですね。

保田さんと赤井さんに外国人旅行者にオススメしたいフィリングを尋ねたところ、お二人そろってピーナッツを挙げました。まだ食べたことがない人は、日本に来た時にぜひお試しあれ!

ランチパックを作る上でもっとも大変なことは何でしょうか? 「サンドイッチに合う、新しい味のフィリングを考えること」と保田さんと赤井さんは答えます。筆者も思わず頷きました。すでに1,600種以上も販売されているので、アイディアも出尽くしてしまっていることでしょう。

保田さんが所属する新商品を企画するチームだけでなく、他のチームからも「こんなフィリングを作ってほしい」と意見が出ることもあるそうです。

そこで私も、ガパオライスを入れてみませんかと提案してみました。過去に韓国のチーズタッカルビや、グラタンやスパゲティなどイタリアンが出ていたので、タイ料理のフィリングはまだ出ていないだろうと思ったのです。ところがどっこい、すでにグリーンカレーのランチパックが2017年に発売されていました!

保田さん曰く、検討したいところですが、まずはタイ人が食べる本場のガパオライスを食べてみて、どんな味かを知りたいとのことでした。これぞ本物のプロフェッショナルです。

ランチパックのさまざまな楽しみ方

お暇する前に、ランチパックをよりおいしくする食べ方も忘れずに聞いてきました。どんな食べ方があってどうなるのか、要チェックですよ。

トースト

2分ほどトースターで焼くだけ、表面に軽く焼き色が付けば完成です。外はカリッと、中はしっとり、焼かずに食べるのとはまた違ったおいしさです。1枚はそのまま、もう1枚を焼いて食べると、1度で2通りのおいしさを楽しめるのでオススメです。この食べ方は惣菜系とスイーツ系どちらもいけますが、ホイップクリームが入っているパンは、クリームが溶けてしまうのでご注意ください。

ホテルにトースターがない旅行者の皆さんは、ランチパックSHOP池袋店に行けば、店内にトーストのサービスがありますよ。

ベトナム風サンドイッチ バインミー

バインミーまたはベトナム風サンドイッチはバゲットで作るものですが、今回はピーナッツとたまごのランチパックで代用します。材料はお好みの野菜と肉を用意してください。

一口かじると、最初はピーナッツクリームの甘じょっぱさと、たまごサラダのまろやかな味わい、生野菜の歯触りのそれぞれの味が別々に感じられます。けれど咀嚼していくとすべての味が上手く混ざり合い、さっぱりしたおいしさを楽しめます。スイートチリソースをちょい足しして、甘辛さをプラスするのもおいしそう。

フレンチトースト

最後はフレンチトースト風です。

卵1個、牛乳、砂糖を混ぜてバニラエッセンスを少量加え、そこにピーナッツのランチパックを浸します。フライパンの上で、表面がきつね色になるまで弱火でじっくり焼き上げます。周りにあるのはバナナです。

シナモンパウダーとナッツを散らし、最後にメープルシロップかはちみつをかけて完成です。熱々のピーナッツクリームは、この上ないおいしさですよ。

ほかにもランチパックを使って、スイーツやサンドイッチにアレンジするレシピがあるので、こちらの公式HP「ランチパック de おうちカフェ」をチェックしてみてくださいね。

ランチパックで日本の朝食を楽しんで

「ランチ」の名を持つランチパックですが、朝から旅路を急ぐ人でも、昼にお腹を空かせた人でも、常に皆さんのお腹をたくさんの味でおいしく満たしてくれます。地方に遊びに行ったら、ご当地ランチパックを探してみるのも忘れないでくださいね!

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