6月27日、いよいよ明治安田生命Jリーグの2020シーズンが再開される。
新型コロナウイルスによる長期中断を経て再開されるJ1とJ2。そしてJ3は、3か月半遅れの開幕を迎える。
7月10日より前の試合までは無観客の「リモートマッチ」での開催を余儀なくされ、その後も様々な制約が課された困難なシーズンとなることは間違いない。
だからこそ、このリーグの再開・開幕は特別なものと言えるはずだ。
Qolyは今回、「DAZN Jリーグ推進委員会」の一員としてメディア連動企画「THIS IS MY CLUB – FOR RESTART WITH LOVE - 」に参画。
リスタートに向けたJリーグクラブの、今だからこそ届けたい“生の声”をお伝えする。
今回はJ2のFC町田ゼルビアでプレーする李漢宰(リ・ハンジェ)。
2014年に町田へ加入し、7シーズン目を迎えた37歳。リーグ再開当日の6月27日に38歳の誕生日を迎えるMFに、ランコ・ポポヴィッチ監督のもと臨んでいる今シーズンや、自らを“拾ってくれた”FC町田ゼルビアへの思いを聞いた。
(取材日:2020年6月18日)
ポポヴィッチ監督と新生FC町田ゼルビア
――今シーズン、開幕直後に中断という形になってしまいました。それを聞いたときはどう感じましたか?
今まで起こったがないことが起こったので、ちょっと現実として受け止められない部分もありました。大変なことが起こっているなという状況でしたし、実際にサッカーをやっていられる状況ではないなと感じました。
――緊急事態宣言の直前まで練習は行っていたとのことですが、宣言が出て、外出自粛となってからの生活はどうでしたか?
トータルで言うと1ヶ月半くらいの自粛期間がありましたが、緊急事態宣言が出た当初は期間がまだ分からなかったので、自分たちは常に「いつ始まってもおかしくない」という準備をしていました。ただ、いつ始まるか分からない不安も正直ありましたね。
――“サッカーのない日々”でした。
僕はプロ20年目になりますけど、今まで当たり前のように生活し、当たり前のように毎日トレーニングをしていました。その当たり前が当たり前ではなくなったことで、サッカーが自分にとってどれだけ大切で重要なのか、改めて実感するきっかけになりました。
――フィジカル面の維持に関してはどんなことに気をつけていましたか?
僕個人としては自粛に入る直前に痛めた部分があったので、それを癒すためのいい時間になりました。また自粛期間でしっかり自分自身を追い込んで個人トレーニングができたことで、今はいいコンディションを保てていると思います。
――すごく昔な気がしますが、開幕戦のヴァンフォーレ甲府戦。あの試合はチームとしてどんな戦い方ができました?
監督がポポヴィッチさんに代わって、結果こそ0-0でしたけど、新生FC町田ゼルビアを存分に見せることができた試合になったと思います。
――ポポヴィッチ監督になって、サッカーのスタイルとしてはどんな変化がありました?
これは僕個人の意見ですが、昨年まで率いていた相馬直樹監督と考え方やサッカーの取り組み方は非常に似ているものがあると感じます。もちろんサッカーに対して戦術面などいろいろな違いはあるものの、考え方や取り組む姿勢はあまり変わらないので非常にやりやすいです。
ただやはり、一つのボールをより大事に扱うことを常に意識していますし、それのみならず、デュエルの部分、戦う姿勢を非常に大事にしている監督だとは思います。
僕は以前、サンフレッチェ広島に所属していたときにポポヴィッチさんと2年近くかかわったことがあります(※ポポヴィッチ氏は2006~2007年に広島でコーチを務めていた)。その当時からイメージはほとんど変わらないんですけど、さらに監督・選手という立場で今年接することができ、より一人の人間として偉大な方だと感じています。
日本人にちょっと似たような“気持ち”を持っている方だと感じる部分がたくさんあります。
――李選手自身はポポヴィッチ監督とどんな話をしていますか?
ポポヴィッチさんには非常によく声をかけていただきます。プレーの面での話ももちろんありますけど、やはりチーム全体のオーガナイズの部分だとか、メンタル的な部分で若手選手を引っ張っていってもらいたいといったことも多いです。
今年キャプテンは水本裕貴選手が務めていますが、「ハンジェにはキャプテンマークを巻いていなくてもキャプテンという気持ちで皆をまとめていってほしい」と、常にリーダーシップの部分が期待されていると思っています。
“拾ってくれた”FC町田ゼルビアとともに
――今年は相当なハードスケジュールになり交代枠も5人になりました。総力戦のなかで、李選手は何を見せていきたいですか?
今シーズンは過去にないくらいの過密日程でリーグを消化していかなければなりません。僕も今年で38歳になり若い選手ではありませんが、必ず僕にもチームを助けなくてはいけないときが来ると思います。
そのときこそ、僕が今回の自粛期間、何をもってトレーニングをし、何をもって苦しいときにチームを助けるための準備をしてきたかお見せしたいです。
――町田に来て今年で7シーズン目になります。李選手にとってFC町田ゼルビアはどんなクラブ?
僕が来た2014年はJ3元年でした。サッカーができなくなるかもしれない状況のなか、FC町田ゼルビアに拾ってもらった。そういう思いがあります。ですので、当初から「このチームを必ずJ2へ昇格させるんだ」という強い気持ちを持っていました。
ただ強い気持ちを持つだけでなく、自分の全てをかけて、全てをこのチームに捧げていきたいという思いでやっていますし、その熱意は今も変わっていません。逆に、年々増していっているかもしれませんね。
――FC町田ゼルビアが“マイクラブ”だと感じる瞬間は?
昨年もそうでしたが、やはり嬉しいときもあれば苦しいときもあります。そうしたなかで、いつも色々な方に声をかけていただき、そして僕が試合に出たとき、勝利したときに、皆が自分のことのように喜んでくれる。
そういう皆さんの笑顔を見たときはやはり「あ、ここが自分のホームなんだな」と感じます。特に昨年はそういう機会が多かったです。
――27日の再開初戦では近隣の東京ヴェルディと対戦します。町田の一員として東京ヴェルディと戦うのはどんな気持ちですか?
J2へ昇格してから毎年のように対戦しているクラブではありますけど、「東京クラシック」という名のもと、常に気持ちの入る相手です。再開初戦が東京ヴェルディということで意味のある試合になることは間違いないかなと思います。
残念ながら無観客での対戦になりますけど、僕たちのみならずお互いが今まで準備してきたことを100%出すことで、視聴者の方々に熱いプレー、そして少しでも希望と勇気を与えられるような試合にしたいです。
――東京ヴェルディの次は7月4日、ホームでのモンテディオ山形戦ですね。
これもまた僕個人の意見になりますが、相手はあまり気にしていないです。
ポポヴィッチ監督も常々言っていて、今年のFC町田ゼルビアはもちろん相手の戦術への対策も怠りませんが、まずは自分たちの土俵でサッカーをする。自分たちが準備したものをしっかり出していくことを心がけています。
――昨年、J1ライセンスを取得し、FC町田ゼルビアはJ1昇格を目指せるチームになりました。そのなかで迎える今シーズンへの思いを聞かせてください。
僕が来た7年前のFC町田ゼルビアはJ2昇格が第一の目標でしたし、J1は頭の片隅にはありましたけど現実的な目標ではなかったです。それが7年のときを経て今、J1の目の前まで来ている、間近な目標だととらえています。
そういう意味では今シーズン、新しい監督のもとJ1昇格への足掛かりをしっかり作っていきたいです。
――今シーズン、特にここを見てほしい!というところはありますか?
攻守両面において魅力的なサッカー。あとはやはりこういうときだからこそ、FC町田ゼルビアのサッカーを見て勇気や元気を少しでも与えられるようなゲームを毎試合見せたいです。
――最後にファン・サポーターへのメッセージをお願いします。
FC町田ゼルビアを応援してくださっている皆さま。世間的に今こういった状況のなか、やはりいろいろと苦しい思いをされている方も多いと思います。そして、サッカーがない日常がどれだけ寂しいのかというのも今回改めて感じました。
そのなかで僕たちはリーグ再開に向けて、最高の準備をしています。リーグ再開後は皆さまに希望と勇気と元気を少しでも与えられるよう、熱いプレーを一丸となって披露したいと思います。
また皆さまとスタジアムで会える日を心よりお待ちしています。
李 漢宰(リ・ハンジェ)
1982年6月27日生まれ(37歳)
FC町田ゼルビア所属
2020 明治安田生命J2リーグ 第2節
東京ヴェルディvsFC町田ゼルビア
6月27日(土)18:00キックオフ