DeNA新助っ人オースティンは「ソト、ロペスの上をいく可能性」 ラミレス監督が予言

DeNAのタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】

ラミレス監督はズバリ「ソトの本塁打王をおびやかす存在になる」

2020年型のベイスターズ打線の形が見えてきた。開幕カードの広島3連戦を右肘の張りでスタメン落ちしていた新外国人のオースティンが、23日の中日戦に3番・右翼で出場し、4打数4安打1打点の活躍でチームの勝利に貢献した。25日の中日戦では今季1号も飛び出した。2018年にメジャーで17本塁打を放った新助っ人は、チームの4連勝に貢献した。

開幕戦の試合前、ラミレス監督は今季の打線の基本型について話した。2年連続本塁打王のソトを2番に起用する意図を問われると「ソトは3番の適性があるが、今年はオースティンが入団して、彼をベースに考えると3番はオースティンという結論になった。オープン戦などでいろいろ試した結果でもあり、今季のチームにとってポイントになる」と、打線のキーマンであることを明言した。

キャンプ、オープン戦を通じての印象として、指揮官は「2年前にソトを見た時と同じ感覚があった。今年、ソトのホームラン王をおびやかす選手がいるとすれば、オースティンなのではないか」と高い評価を与え、「才能のある選手。今のところは日本にアジャストしている」と期待を寄せた。

開幕戦でオースティンは代打で出場。1点ビハインドの8回、1死三塁の場面で登場したオースティンは、好投を続けていた広島先発・大瀬良の2球目のストレートをジャストミートしたが、打球は三塁手の正面をついた。

守備固めに入ったばかりの三好の好守もあり、来日初安打初打点とはいかなかったが、試合後にラミレス監督が「いいスイングだった。不運だったというか、三塁手がいいプレーをした」というインパクト十分の一打だった。

オースティンは、日本の投手の速球系の球種には、アジャストしているように見えた。

速球系に対応、スライダーも本塁打、現時点で課題は縦の変化球

初スタメンとなった23日の中日戦。初回の第1打席で、2死走者なしの場面で、中日先発・柳の146キロの直球をセンター前に放った。初球の145キロのストレートを見送った後、2球目の高めに浮いた球だった。第2打席は同じ2死無走者の場面で今度は右前に落ちるヒット。6球目のカットボールを逆らわず逆方向に打ち返した。

5回の第3打席は1死一、二塁と得点圏の打席で、カウント2-2から先制点となるタイムリーヒットをレフト前に放った。2球で追い込まれた後、ワンバウンドになる変化球を2球、見送った後、真ん中高めに入ったストレートを三遊間に打ち返した。7回の第4打席は鈴木の149キロの速球をセンターにはじき返し、4打数4安打、1打点と文句なしのスタメンデビューとなった。

試合後の会見では「全打席いい感じだった。チャンスの場面でもいいスイングができた」と派手な言葉はなく、最後は「アリガトウゴザイマス」と日本語で挨拶する生真面目さも見せた。ラミレス監督も「今日はパーフェクト。これ以上ないスタートを切ってくれた」と新外国人を絶賛した。

そして、25日。オースティンは初回2死で右越えへ1号ソロ。中日・岡野のスライダーを反対方向に飛ばした一発がV弾となった。しかし、そのあとは、相手投手陣のフォークについていけず、外のボールになる変化球に対応できず。3打席連続三振に打ち取られ、課題が浮き彫りとなった。

ストライクからボールになる変化球を振ってしまうという外国人打者の典型的な課題が露呈されたが、まだ出場5試合とあり、これから修正していけるだろう。ラミレス監督もヤクルトでの日本球界1年目も同様で、日本投手への研究を重ね、名実ともに優良助っ人の称号を得た。ヤクルト、巨人、DeNAと渡り歩いたが、日本にやってきた外国人選手には日本の野球観や他国との違いなどをアドバイスしてきた。

何人もの成功例の道標となってきたラミレス監督の手腕にかかれば、変化球の見極めはしっかりとできてくるはずだ。オースティンについてラミレス監督は「選手、監督と何年も日本でやってきたが、自分が見た中でも一番のインパクトがある選手。ソト、ロペスの上をいくレベルの可能性を持っており、外国人としてスーパースターになり得る選手」と、新たなスター誕生を予言した。

指揮官は「これで1番から6番までがかなり強力な打線になる。90パーセント、理想のラインアップになった」と自信を見せる。かつての「最強助っ人」が絶賛する新戦力が、ベイスターズを98年以来となる頂点に導く“Vの使者”となるか。これからのカギは変化球の対応とラミレス監督の教えが握っている。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

© 株式会社Creative2