「やるしかないと分かっていた」 西武ニールの躍進を支えた覚悟と不屈の精神

西武のザック・ニール【写真:荒川祐史】

米紙「NYタイムズ」が助っ人として西武投手陣を牽引するニールを特集

プロ野球は19日に開幕し、リーグ3連覇を狙う西武は開幕戦でザック・ニール投手が6回無失点の好投で初勝利をマークした。昨季から続く連勝は12に伸び26日には2度目の登板に挑む。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は海を渡り日本で活躍する右腕を「大幅に遅れた末に訪れた日本での栄誉」と特集している。

移籍1年目の昨季は12勝1敗、防御率2.87と圧巻の成績を残しリーグ優勝に貢献したニール。11連勝を飾るなどエース級の活躍をみせ、今シーズンは西武の辻監督から開幕投手に指名された。

メジャーでは通算31試合に登板し2勝4敗、防御率4.94と活躍できず日本球界に挑戦したニールは「(2016年5月11日の)フェンウェイパークでのメジャー初登板をも凌ぐね」と語っている。2010年にドラフト17巡目でマーリンズに指名され、6年間のマイナーでの下積みを経て実現した大リーグ初登板をも上回る喜びだったようだ。

新型コロナウイルスの影響で開幕は91日遅れだった。プロ野球以外にも高校野球の甲子園が中止になるなど、自粛期間は長く、かつて経験したことのない調整も続いた。「球場入りする前に、僕たちは皆体温を計らないといけなくてね。ウェイトルームではマスクをつけて、消毒もあちこちに置いてあるんだ。毎晩メールで(体調を確認するための)質問を受けたりもしている」とニールも語り、プレー以外の面でも厳格に管理されている状況の中でこぎ着けたシーズン開幕だった。

「野球はこの国にとって娯楽の一つ。だから野球をついに始めることができるのは、この国にとって実に象徴的なこと。(気持ち的な面での)高ぶりは計り知れないものがある。監督から(開幕戦の)ボールを託されることはとてつもなく栄誉なことだよ」

アスレチックス時代の恩師も認めるニールの精神力

だが、日本でのキャリアは万事順調だったわけではなかった。昨季は4月2日のロッテ戦で初登板初勝利を上げたが、その後は1軍登録を抹消され2軍で調整。ニール自身も日本の中5、6日の登板間隔には「いつ、どれくらい投げるべきなんだろうか」と戸惑っていたことを明かしている。それでも「ここに残りたかったらやるしかないということは分かっていた」と“異国の地”で自身の居場所を確立するために覚悟を決めたという。

日本で生き残るため、投手コーチに助言を求めることも厭わなかった。カットボールに磨きをかけることの重要性を説かれた。自身のプライドを捨て日本の野球に適応するためにトレーニングを続け、結果的に11連勝をマークするなどニールはチームに必要不可欠な存在となった。

そしてニールの躍進を支えているのが“辛抱強さ”だという。2016年から2年間所属していたアスレチックス時代について、現在もチームの指揮を執るボブ・メルビン監督は「彼は不屈だ。それには精神的な強さが要る」と明かし、ニールを語るうえでメンタルの強さは欠かせなかったとしている。それを示すかのように、2月に開幕投手に抜擢されてから4カ月の間気持ちを切らすことなく調整を続け、開幕戦では無観客の中で堂々のピッチングを披露した。

2020年シーズンも最高のスタートを切ったニール。持ち前の“精神力”と“順応力”を武器に、来日2年目も先発ローテの柱としてチームをリーグ3連覇に導く活躍を期待したい。(Full-Count編集部)

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