[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.14 ドローン点検業務を効率的で安全に行うためのツール

ドローンを使った点検業務

わたしのコラムではこれまで新しいドローンの紹介や機能説明が中心でしたが、今回はいつもと違ってドローンビジネスを展開している皆さんが興味を持ちそうな商品を紹介します。

ドローン業界では日々新たなビジネスが生まれています。風景やPVの撮影に始まり、農業支援、さらには太陽光パネル、屋根、外壁の点検、送電線や橋梁・エネルギー施設などの大規模設備の点検・検査においてもドローン活用は進んでいます。

以前なら専門の職人さんに依頼して足場を組んで行っていたような点検業務を、ドローンが取って代わることでコスト削減はもちろん事故リスクも低減できていると考えます。今回紹介するのは、そんなドローンを使った点検業務を、より効率的かつ安全に行うためのツールです。

Hollyland MARS 400S

Hollylandが販売するMARS 400Sの機能を一言で表現すると「HDMIの無線化」です。これだけでは使用イメージを想像しにくいと思いますのでより具体的に説明します。まずパッケージの内容物をご覧ください。

※パッケージに含まれるアクセサリーは本写真と異なる可能性があります

この製品はTransmitter(送信機)とReceiver(受信機)の2つの主要部品で構成されています。カメラのHDMI出力ポートと送信機をHDMIケーブルで接続します。次にHDMI入力ができるモニターと受信機もHDMIケーブルで接続します。

実際に接続したものが下の写真となります。右側にカメラと送信機、左側にはモニターと受信機という構成です。

それぞれの電源をオンにすると特別な設定をすることなくカメラの映像がワイアレスモニターに映し出されます。このとき送信機と受信機の間は、おおよそ400フィート(約120メートル)まで離すことが可能です。これがこのHollylandが想定する製品の使用イメージです。

それでは一般的な利用イメージを持っていただけた上で、これからこのMARS 400Sをどのようにドローンビジネスに利用するのかを紹介します。肝となるのは上述のカメラ部分を下の写真のDJIスマート送信機にするということです。

DJIのMavic 2 ProやInspire 2はドローン本体と送信機間の映像伝送システムがOcuSync2.0となっており、これらのモデルではDJIから別途販売されているスマート送信機が利用可能です(最初からスマート送信機がセットされたパッケージも販売されています)。

このDJIスマート送信機にはHDMI出力ポートが用意されていますので、上述したカメラの代わりにこのスマート送信機をHDMIケーブルで送信機に接続することで、パイロットの手元の操縦映像を少し離れた別の場所にいる映像監督、プロデューサー、設備検査員に別モニターで確認してもらえることになります。

またこのMARS 400Sはパッケージに含まれる送受信機間での通信だけでなくスマートフォンやタブレットと映像のやり取りが可能です。接続の組み合わせとしては次のようなバリエーションで利用可能です。

  • 送信機1台と2台の受信機
  • 送信機1台と1台の受信機+4台のスマートフォン・タブレット(iOSまたはアンドロイド)

実際の利用イメージを動画

このシステムを活用することでドローンパイロットは操縦に専念し、映像確認のスタッフはドローン映像や被写体に集中することで、高品質映像が撮影可能となり、しかも事故のリスクを最小限に抑えることが可能になると考えます(本製品は日本の技適認証取得済みです)。

Hollyland MARS X

上記で紹介したMARS 400Sに続き、機能を省いて小型化した新製品MARS Xも最近になって発売されています。このMARS XはMARS 400Sを簡略化することでより簡単にシステム構築可能になっています。まず大きな違いはMARS Xは送信機のみで受信機がありません。つまり受信機はスマートフォンやタブレットのみを想定しています。また、送信機は内蔵バッテリーになったことで運用が楽になったのはもちろん、サイズもコンパクトで持ち運びが楽になりました。MARS Xは送信機1台と3台のスマートフォンまたはタブレットが接続可能です。

価格もかなり安価に設定されていますので、スマートフォンやタブレットへの出力で十分で、専用モニターへの接続が不要という方には魅力的だと思います。コロナ禍も落ち着きを見せ始め、出先でドローン撮影を行う際に利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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