アーユルヴェーダの本場、インドのケララでのパンチャカルマ体験レポート【前編】

こんにちは。わたしは、東京三鷹でカウンセリングやヨガなどを提供するホリスティックヘルスカウンセリングルーム「Helix Centre(ヘリックスセンター)」を主催しています。

この度、南インドのケララでアーユルヴェーダの治療を体験する機会がありましたので、その中身と体験を皆様にご紹介したいと思います。

前編の今回は、アーユルヴェーダとの出会いや、パンチャカルマに関する基礎知識についてお話します。

カラダの状態とココロは密接な関係がある


私はカウンセラーをしていますが、心理の世界では一般的にカラダが私たちのココロに与える影響が軽視されがちだと感じています。

けれど、個人的にはカラダの状態とココロは密接な関係があり、お互いに強く影響し合っていると感じています。

ですから、カラダが元気に健康であるためには、ココロの元気と健康が重要ですし、逆にココロが元気で健康であるためには、カラダの元気と健康がとても重要だと思います。

私のカウンセリングのベースとなっている「サイコシンセシス」の人間観はとてもホリスティックで、カラダが私たちのココロやスピリットに与える影響を重要視します。

アーユルヴェーダとの出会い


以前、ホリスティック医療の集まりで出会ったインドの女性がいました。その方は、ご自分が少し前にうつ病になられたこと、そしてその治療のために息子さんがアーユルヴェーダの治療センターに連れて行ってくれたことを話してくれました。

彼女は、たくさんのオイルマッサージを受け、裸足で芝生の上を歩き、美味しくてヘルシーな食事をとり、五感を刺激するような様々なプログラムを行ったこと。家族の温かいサポートもあり、少しずつ回復して行ったことを嬉しそうに語ってくれました。
また、アーユルヴェーダでは、身体と精神と魂、この3つが健康で初めて健康だと言えると考えるのだとも。

それを聴き、ものすごく羨ましく感じたのを覚えています。自分が治療を受けるなら、絶対にそれがいい!とも思いました。

長年、日本や英国などのクリニックやカウンセリングルームの治療現場で働くなかで、ココロやカラダの病気にかかり、お薬を飲み休養するだけの治療で、苦しみ続けているたくさんの患者さんたちと出会いましたが、身体と心と魂を本当の意味で統合したホリスティックな治療を受けておられる方は、とても稀です。

何かもっと他にできることは無いのだろうかと思い悩んでいた時に出会ったアーユルヴェーダから、本当のホリスティックな治療として強い印象を受けました。

それ以来、アーユルヴェーダは私にとって理想的なホリスティックな伝統医療として憧れのような気持ちがあり、機会があればワークショップなどに参加してきました。

また、自分でもヨガを練習し教えてもいますが、ヨガとアーユルヴェーダも親和性の高いものです。

アーユルヴェーダの治療を受けた目的


今回、私がアーユルヴェーダの治療を受けた目的は、「パンチャカルマ」を受けることでした。

日本でもアーユルヴェーダという言葉は浸透していますので、アーユルヴェーダという言葉を聴いたことがある方は多いと思いますが、「パンチャカルマ」は初めて耳にする方もいらっしゃるのではないでしょうか。

アーユルヴェーダというと、カラダのオイルマッサージや、頭にオイルを垂らすシロダーラという施術をイメージする方もいるかと思いますが、これらはパンチャカルマのほんの一部です。

後ほど詳しく説明しますが、ものすごく簡単にいえば、パンチャカルマとはデトックス(毒出し)のプログラムです。

2〜3週間かけて体内に溜まった毒素を、カラダの外に出すことが目的と言えます。なぜなら、この体内に溜まった毒素こそが体調不良の原因と考えられているからです。

なぜインドのケララか?


アーユルヴェーダといえば、インドやスリランカが有名ですが、インドのケララは、他の場所とどう違うのでしょうか。

実は、日本ではあまり知られておらず直行便もないケララですが、アーユルヴェーダ治療が大きな広がりをみせ、治療を受けるのに最適な場所と言われているのです。

そこには地形の特徴が関係しています。ケララ州は南インドの西海岸にある細長い州ですが、その東には高いもので標高3000メートルにもなる山脈があり、その一帯はハーブやスパイスなどのプランテーションが盛んで、そこから運ばれる新鮮な薬草をふんだんに治療に使うことができます。

また、カシューナッツやココナッツ、バナナやお米、生姜や胡椒、多くの野菜の栽培も盛んに行われ、医食同源と考えるアーユルヴェーダで重要視される、栄養価の高い新鮮な食材もふんだんにあります。

そんな訳で、ケララ州には、アーユルヴェーダ病院で受ける本格的な治療から、リゾートタイプのホテルで受ける癒し感覚のトリートメントまで、幅広いタイプのアーユルヴェーダ施設があり、要望に応じて様々な体験が出来ます。

私が今回滞在したのは1938年から8世代に続く伝統を持つ家族経営の、アットホームなアーユルヴェーダ治療施設「Madukkakuzhy Ayurveda」です。

病院のような堅苦しさは嫌だけれど、リゾート施設よりも、より本格的な治療を受けたいという方にはピッタリです。

またインドの6月〜9月は雨期となり、観光的な観点ではオフシーズンとなるのですが、このモンスーンの時期がアーユルヴェーダの治療には最高の時期となります。高い湿度で開いた毛穴から、薬草オイルが体内に吸収されやすくなるらしいのです。

今回私は、友人が、この施設でパンチャカルマとヨガを組み合わせたリトリートプログラムをモンスーンの時期に開催することになり、誘ってもらっての参加だったのですが、友人はこの施設でパンチャカルマを受けて以来、すっかりファンになってしまい毎年通っているそうです。

その魅力を、友人は、ドクター達の人格の素晴らしさだと言っています。後ほど詳しく紹介しますが、代々続くアーユルヴェーダ医の家族経営で、そこを訪れる患者たちのことを真剣に考えながら、周囲の村人たちも共に豊になっていけるような経営をされています。

パンチャカルマとは?


では、少し長くなってしまうかもしれませんが、下記の流れでパンチャカルマとは何なのかを説明していきます。

①アーユルヴェーダとは

②アーユルヴェーダの基本的な考え方

③アーユルヴェーダの基本的な治療法とパンチャカルマ

1:アーユルヴェーダとは何か

・なんとなくカラダがだるい
・頭が痛い
・いつも眠くて頭がスッキリしない
・肩や腰などの何処にいつも痛みがある
・足がだるい
といった、大小様々な体調不良があり、カラダに痛みやつらさを抱えながら生活されている方は多いかと思います。

私も、普段は元気にしていても、少し多忙な日々が続いたり、免疫が落ちたりすると、咳が止まらなくなり1ヶ月から2ヶ月近く咳をし続けるといったカラダの不調がありました。

ところが、こうした体調不良を病院で訴えても、現代西洋医学では、特定の原因がある疾病でないと対処してくれないのが現状です。

そうした現代西洋医学ではどうにもできない様々な不調がある時、代替療法に頼ることになります。そうした代替療法の一つに、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダがあります。

サンスクリット語で、「生命の科学」あるいは「長寿の科学」を意味するアーユルヴェーダは、インドで5000年に渡り継承されてきたインドの伝統的医療であり、様々な病気の治療法だけでなく、健康で長生きするための叡智(えいち)がつまっています。

つまり、ただ単に病気を治すだけでなく、現代西洋医学では教えてくれない、より健康に元気に長生きするための秘訣が伝えられているのです。

アーユルヴェーダ治療の基本は、カラダが本来持っている「浄化作用」をサポートして、「活力の回復」をすることです。この「浄化作用」あるいは「消化力」こそ、現代西洋医学が軽視していて、逆にアーユルヴェーダでは重要視しているものです。

生き物の基本は、食べることです。しかし、食べたものは、消化されることではじめて栄養として体内に取り入れられます。だからこそ、消化力が落ちてしまっていては、どんなに栄養素の高いスーパーフードを食べても無駄になってしまうのです。

また人間のカラダは、たくさんの「管」でできています。その「管」で、食べ物を消化し、必要な栄養を取り入れ、不要なものを排泄していくわけですが、そうした「管」の流れが滞ってしまったら、当然ながら活力も落ちてしまいます。

では、何が消化力を落としてしまうのでしょうか。

結論から言うと、消化力の低下の原因の一つには「ドーシャの乱れ」があります。ドーシャとは体質のことです。

それを理解するために、アーユルヴェーダの基本的な考え方をみてみましょう。

2:アーユルヴェーダの基本的な考え方

アーユルヴェーダは、体質の医学とも言われ、私たち一人一人の体質を重要視します。この体質によって、消化力も適した食べ物も違ってくるからです。

アーユルヴェーダの伝統では、誰のなかにもヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)と呼ばれる3つの体質(ドーシャ)が有ると考えられていて、この3つのバランンスによって、各個人の体質が決まると言います。

ヴァータが強い人は、風のように、心も軽く快活で、好奇心も強く、理解も素早いけれど、気分や考えも変わりやすく、物事の体験も広く浅くなりやすい傾向があります。また、皮膚は乾きやすく、手足が冷えやすいのも特徴です。

ピッタが強いかたは、火のような情熱と集中力があり、行動は正確で規律生があります。リーダー気質を持ちますが、やや短気になりやすく人とぶつかりがちです。暑さにも弱く汗っかき。

カパが強いタイプは、水のように潤い、湿っていて、冷たく、重い性質があります。カラダも重く、太りやすく、どっしりした体格をしている傾向があり、動作もゆっくりで、こころも同様に落ち着いていて、のんびり寛大です。

こうしたドーシャがその人本来のバランスに保たれていれば健康でいられますが、
・不健康な食生活
・精神的ストレス
・睡眠不足
・消化機能の低下
・老廃物の不完全な排出
といった様々な原因が重なって、ドーシャに乱れが生じます。

こうしたドーシャの乱れによって、消化されずに体内に残った未消化物は「アーマ」と呼ばれる毒素として、体内に蓄積することによって、カラダの不調や病気を引き起こすと言われています。

ですから、この体内に蓄積された毒素をカラダの特定部位に集めて、外に押し出し、本来のバランスを取り戻すことが、治療の大きな役割になります。

3:アーユルヴェーダの基本的な治療法とパンチャカルマ

アーユルヴェーダの治療は、大きく2つに分けられます。一つは、すでに症状が強く現れている病気を治療する「サムシャマナ」と呼ばれるものです。

もう一つは、様々な体調不良を治療し、病気の予防だけでなく、より健康で長生きすることを目的とした「サムショーダナ」と呼ばれる、体内の浄化療法です。

このサムショーダナ(浄化療法)のメインとなる療法が、「パンチャカルマ」と呼ばれるものです。

アーユルヴェーダ
—病気の治療(サムシャマナ)
—病気の予防・健康増進法(サムショーダナ)
—浄化療法(パンチャカルマ)

通常、パンチャカルマは2週間から3週間かけて「プールヴァカルマ」→「プラダーナカルマ」→「パシチャートカルマ」3つのステップを踏んで行われます。

第1ステップの「プールヴァカルマ」は、パンチャカルマの準備段階のようなものです。

第2ステップは「プラダーナカルマ」と言われ、これがメインの浄化療法となり、各自に合わせて5つの浄化療法から治療を受けます。

そして最後の第3ステップ「パシチャートカルマ」は、浄化療法のあとのステップで、家での養生となります。ドクターたちは、ここが実は治療の成否を決めると言っていました。
つまり、施設での治療が終わり家に帰った後に、治療にかけたのと同じくらいの期間、食事や生活習慣に気をつけて過ごすことがとても重要になります。

このプロセスを分かりやすく言うと、メインとなる「パンチャカルマ」の施術の前後に「準備段階」と「施術後の養生」があるということになります。

いかがでしょうか。次回は、実際に私が受けた2週間の治療の流れと、体験についてお話します。

この記事を書いた人:

五味佐和子

臨床心理士。カウンセリングルームHelix Centre 代表。https://helix-centre.com 心療内科、精神科での長年の臨床経験を経て、企業でのEAP(従業員支援プログラム)と教育研修(ストレスマネジメント、コミュニケーション等)の企画と実施、NPOでの就労支援など様々な場面で臨床経験を積んできました。

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