ホテルビュッフェの達人が「コロナ禍の今、シティホテルが狙い目」と語る理由

リノベーション──一般的には「住まいの改修・改善」のことをこう呼びますが、空間環境だけではなく日常生活全般をもリノベーション(改革・刷新)すると、QOLはよりいっそう向上していくはず。LogRenoveは、日々の何気ない暮らしのなかで、我々が直面するさまざまな悩みの解決策を、斯界の識者とともに探っていきます。さあ、私たちと一緒に「ライフスタイルのリノベ術」を追究していきましょう。

Q.東京都内に在住しております。10月から「Go To トラベル」キャンペーンが東京も対象になって、もうすぐ結婚する彼女と「どこか旅行に行きたいよね」などと話してはいるのですが、正直まだ遠出するのは怖くて……。そんな私たちでも身近で旅行気分を堪能できる方法があれば、教えてください。(31歳・未婚男性/機械メーカー勤務)

空間に余裕があるシティホテルは、じつは非常に安全なスポット

10月1日から東京都も「Go To トラベル」キャンペーンの対象となり、皆さんもワクワクしながら家族で、夫婦で、カップルで、友人同士で……国内旅行のプランを立てはじめているころではないでしょうか。でも、いっぽうで「まだ遠出するのは、いろんな意味で躊躇してしまう…」という人も多いようです。とくに、新型コロナウィルス感染者数が、いまだ突出している東京近郊に在住する人たちは「もうちょっとの期間は近場で大人しくしておこう…」と自主的な自粛を継続している傾向が強いと聞きます。だけど、やっぱり家にずっといるのも、なんとなくつまらない……。

そんなあなたにイチ押しなスポットが、すぐそばにあります。「都心型のシティホテル」です。ホテルグルメにも詳しい“食”のプロフェッショナル・東龍さんは「今、シティホテルが狙い目」である理由をこう語ります。

「名のあるシティホテルはもともと空間に余裕があり、人が密接するような環境にもありません。コロナ以前よりもゲストは少なくなっており、まったく密ではないので、非常に安全な場所だと言えるでしょう。『巣ごもりプラン』ほか、時流にマッチしたプランも多種多様に販売されており、リモートワークにぴったりなものもあります。しかも、ピーク時に比べれば、だいぶ安い値段で宿泊できるため、まだしばらくは長い移動を避けたいという人たちには最適です」(東龍さん)

東龍さん曰く、昨今のシティホテルの現状は、宿泊客こそ完全に戻っては来ていないものの、レストランは徐々に活気づきはじめている印象、とのこと。とは言え、ディナーなどはまだまだで、テイクアウトなどの物販に力を入れている様子。ほんの数ヶ月前には賑わっていたロビーも人がまばら……なのだそう。

“名指しされた”ビュッフェは大きく様変わり

「レストランやラウンジ、バーといった飲食スペースは“新しい生活様式”を意識したサービスが重視されるようになりました。なかでも名指しされたブッフェ(ビュッフェ)に関しては変化が大きいですね。個々盛りになっていたり、スタッフが取り分けたり、ワゴンサービスにしたり、飛沫防止シートをブッフェ台にかぶせたりしたり……。ホテル側の従業員は全員マスクを着用し、ゲストに近づきすぎないようにするなど、既成の“ラグジュアリー”の感覚が劇的に変化しつつあります」(東龍さん)

当然ながら「高級」と呼ばれるシティホテルほど、こうしたセキュリティやコンプライアンスの面では徹底したサービスを提供しているため、ユーザー側も、より安心して利用することができるわけです。

ホテル通たちは「宿泊プラン」を賢く活用

次に、都心型のシティホテルを最大限に、賢く楽しむリーズナブルな“裏技”を、“ホテルの達人”たちに伝授してもらいましょう。

「夕食はホテルの周辺にある飲食店で。お酒やオードブル、おつまみを奮発して高級スーパーやデパ地下で購入。ゴージャスな部屋でのちょっと贅沢な乾杯は最高です!」(イシイさん/28歳・独身男性:ホテル歴3年)

ホテルの宿泊料を除いた総予算は「二人・2万円弱で充分」とのこと。さらに、今は旅行専門サイトより、ホテルに直接問い合わせたほうが格安なプランに出会えるケースも少なくないのだとか……。各プランをじっくりと比較してから、もっともお得なものをチョイスしてみてください。

お酒、料理をすべて外で買い込んでホテルで楽しむスタイルが人気

「外出自粛が緩和・解除された昨今でも、引き続きテイクアウトに力を入れている外食店は増えている。新型コロナショック前だとテイクアウトなんて絶対にあり得なかった豪華なメインディッシュ系の料理でもお持ち帰りできるので、複数のお店から好きなメニューだけをオーダーして、ウーバーイーツも活用しながら、非日常なホテルの一室で“オリジナルなフルコース”を楽しんでいます」(ムナカタさん/40歳・独身女性:ホテル歴17年)

テイクアウトして冷めしまった料理をレンジで温め直してもらったり、持ち帰り用のプラスティック容器をホテルにあるお皿に取り替えてもらったり……そういう一手間を億劫がらないのもポイント。コンシェルジュさんに頼んでみましょう。

テイクアウト用のプラスチック容器をホテルのお皿に変えるだけでも、ぐっと雰囲気がでる

「ラウンジ特典付きのプランを利用しています。プールやスポーツジムはまだ使用不可なホテルもありますが、アフタヌーンティーや、お酒が飲み放題の軽食ディナー、朝食もセットになっていて……しかも、お部屋もグレードアップされるのでトータルの満足度はかなり高いと思います」(ササキさん/38歳・既婚男性:ホテル歴10年)

まだビュッフェスタイルのサービスはむずかしいのかもしれませんが、ホテルによってはラウンジ特典の食事だけで充分な満腹感を得られるほどにボリューミーとの噂も……?

「アフタヌーンティー」や「軽食+飲み放題」がセットになった宿泊プランも## ホテルグルメのプロがイチ押しする都内シティホテル

「最近は、シティホテル内の“食”に関するプランも、アフターコロナ・ウィズコロナの時代にアダプトしたサービスがいろいろと販売されているので、要チェックです」と、前出の東龍さん。

「ホテル・レストランのテイクアウトも非常に充実しており、ドライブスルーに対応しているところもありますから、ぜひ利用してみてください。テラス席でのランチやディナーも例年以上に増えているので、これからの季節は“外での食事”も気持ちがいいですね」(東龍さん)

テラス席での食事も例年以上に増えてきている

ちなみに、東龍さんがオススメする都内のシティホテルは……? そのいくつかを今回、LogRenove読者の皆さんだけに、そっと教えてくださいました。

■ストリングスホテル東京インターコンチネンタル

出典:ストリングスホテル東京インターコンチネンタルHP

「大きな吹き抜けで開放感もあります。7月1日から始まった『チャイナシャドー』の『シノワ&カクテル』に注目! 黒柳正司料理長によるモダンな中国料理に、受賞歴のある高橋司ヘッドバーテンダーのカクテルを組み合わせた、他にはない試みが魅力です」

■The Okura Tokyo

出典: The Okura Tokyo HP

「ホテル内にある『ヌーヴェル・エポック』はテーブル間隔に余裕があって、個室も設けられています。オープンしてから初めての夏を迎えるなかで、オークラの伝統を受け継いだ髙橋哲治郎何シェフがどのような料理を生み出すのか、期待が持たれます。オークラ限定に長期熟成させたシャンパーニュ『ポメリー』も、ますますおいしくなる季節です」

■グランド ハイアット 東京

出典:グランド ハイアット 東京HP

「いくつものテラスを擁しているので、外で気持ちよく食事を楽しむことができます。オールデイダイニング『フレンチ キッチン』、ステーキハウス『オーク ドア』、イタリアンカフェ『フィオレンティーナ』の、テラス席で楽しめるフリーフロー付きコースがとくに人気です」

シティホテルをうまく活用すれば、移動を極力抑えながらも、さまざまな食が楽しめるわけです。ただし、「ガストロノミー(美食学)ツーリズムが注目され、地方の食による観光が盛り上がっている近年にもかかわらず、コロナ禍に見舞われ、気勢が削がれてしまったのは残念です」とも東龍さんは付け加えます。人生において、旅行は視野を広げ、食は日々に糧を与えるもの──どちらとも、我々人間にとっては欠かせない“活力”ゆえ、一日でも早く、世界が日常を取り戻せることを切に願います。

東龍(とうりゅう)

1976年台湾生まれ。テレビ東京『TVチャンピオン』で2002年と2007年に優勝。ブッフェ・フレンチ・鉄板焼・ホテルグルメ・スイーツをこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食の在り方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。料理コンクール審査員や講演、プロデュースも多数。 2017年8月『一般社団法人 日本ブッフェ協会』を設立し、代表理事に就任。

取材・文:山田g事務所

© 株式会社プロポライフグループ