立憲民主とれいわ新選組に起きた〝奇妙な符合〟  データから読み解く東京都知事選へのヒント

 6月18日に告示された東京都知事選は、7月5日に投開票を迎える。過去最高の22人が立候補し、今後4年間の都政の新たな舵取り役を目指した選挙戦が展開されている。

 主要の国政政党では、日本維新の会が推薦候補を決めているが、自民、公明、立憲、共産、社民は推薦などの機関決定は行わず、それぞれが支援する候補を支援している。国民は自主投票を決め、所属議員に対応を任せている。こうした中、各党の選対、報道機関関係者が「いったいどれくらいの得票をするのか」と関心を寄せているのが、れいわ新選組の公認候補だ。

 れいわは昨年4月に結党、7月参院選の比例で約228万票を獲得し2議席を得たが、コロナの影響で唯一の活動とも言える街頭での訴えを控えざるを得なくなった。街頭でカンパ金を募ることもできなくなり、党財政にも影響を与えかねない事態となっている。れいわ公認候補にどの程度の集票力があるのか。街頭演説で通行人が足を止める等の感覚的な観点からではなく、「データ」に基づき、東京におけるれいわの得票傾向を分析してみた。(47NEWS編集部、得票数は案分票を切り捨て)

 2019年参院選比例で、れいわは都全体で45万8000票余を獲得した。このうち、今回の都知事選公認候補の個人名得票は20万6000票であり、この候補は7年前の参院東京選挙区において66万票余を獲得している。

れいわ新選組と立憲民主の過去の選挙結果を基に整理した表

 表に、都内自治体別にれいわ比例票を整理した。千代田区「2218票」、中央区「5514票」等だ。

 れいわ票の横に立憲民主党の得票を並べる。これは、17年衆院選と19年参院選で立憲が獲得した比例票の推移だ。立憲は千代田区で17年衆院選比例は6832票獲得している。19年参院比例は4734票と「2098票」減少している。中央区は「5423票」のマイナスだ。

 表をもう一度ご覧頂きたい。

大田区で立憲が失った得票数は「21663票」だ。れいわの得票数は「21097票」。 八王子市では立憲「14024票」の減少に対して、れいわの得票は「14103票」だ。 調布市では立憲「8601票」マイナス、れいわ「8690票」と89票しか誤差はない。

 れいわ票は、17年衆院選の立憲支持層の一部を「おこぼれちょうだい」(選挙アナリスト)のような形で得たに過ぎないと言わざるを得ないほど、一致している。

 このデータを野党議員や各党関係者らに見せると一様に絶句した。「昨年の参院選、立憲支持層の一部がれいわに流れている体感はあったが、ここまで数値が一致するとは」。ある野党幹部は「野党はパートや派遣労働者の地位向上に力を入れてきたが、その日の生活さえも苦しい人たちの叫びがれいわに流れたのではないか」と分析した。

 立憲民主に対する期待と失望感。それが新たに誕生したれいわに流れたことを裏付ける数字と考えることができそうだ。そうであるとすれば、今回の都知事選で、れいわの公認候補が問われるのは、19年参院選以降、れいわの活動がかつての立憲民主支持層の思いをどれだけ受け止められたかということになるだろう。安倍政権が長期化し、そのひずみが目立ってきつつある状況下にどういう活動をしてきたのかが問われている。

 都知事選にれいわが公認候補を擁立したことについて、野党関係者は「れいわはこの選挙を、次の衆院選の比例の試金石としようとしているのではないか」とみる。具体的には、衆院比例東京ブロックで議席獲得の目安となる30万票、そして2議席獲得可能な60万票が目標になっているのではないかとみている。さらに、党の状況を考えれば、カンパ集めも重要なこととなろう。

 幕末の新選組は、京都に夏を告げる祇園祭の時の池田屋事件で名を馳せた。しかし、内紛や同志への粛清が続き、真冬の鳥羽伏見の戦で敗走、局長の近藤勇は東京板橋で斬首された。存在したのは「6年間」だった。

候補者の街頭演説を聞く有権者ら=6月20日夜、東京都内(画像の一部を加工しています)

 昨夏の参院選で「6年任期」の議員を誕生させたれいわ新選組は、この冬の京都市長選で敗北を喫している。共同通信社が6月26~28日に実施した電話世論調査などによると、東京都知事選は再選を目指す現職が他候補を引き離して優勢となっている。今後を考えるなら2番手、3番手の得票数にも注目すべきだろう。

 都知事選への審判は7月5日に下される。

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