少しうつむき加減に佇んでいた彼女がふいに前を向き、声をあげた瞬間。強いエネルギーが武道館いっぱいに満たされて、待ちわびたファンたちが心地好さそうにその音のシャワーに打たれていた。そのあと訪れた、ギター&ヴォーカル牛丸ありさの一瞬の沈黙。記録された映像ごしではあるけれど、なんだかいきなり「今しかない今」に触れてしまった気がして、心震えた。
大阪府寝屋川市出身の女性2人組で結成されたyonige。結成6年目にして初の武道館ワンマンを果たした彼女たちのライブの模様が収録されたDISC1と、武道館前後のドキュメンタリー映像が豊富なインタビューを交えて記録されているDISC2の2枚組となっている。
あまりロックに明るくない私が、それでも心動かされるロックはいつも、サウンドや歌声とともに「歌詞」が胸に飛び込んでくる。牛丸の楽曲はまさにそれで、「この言葉は、体の中を何度も駆け巡ったのちに出てきたものなんだろうな」、そう思いながら深く深く共感する。
ギターとドラムのサポートメンバーも加わった4人編成で行われたパフォーマンス、まだまだ本人たちのインタビューの話では満足のいくものではなかったようだけれど、この先もyonigeと、二人のアーティストとしての日が々続いていくだろうし、その意味でこの今しかない今を見られたことに感謝したい。
(ワーナーミュージックジャパン・4500円+税)=玉木美企子