都知事選直前 小池百合子が新宿区民にあてたメッセージに感じるご都合主義

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首都東京の知事を決める投票日まであと僅かとなった。

コロナ禍に加え、与党と野党第一党が腰砕けとなった候補者選びなどもあって、都民のシラケムードが漂うなか、各種の調査で現職小池知事が大きくリードを広げている。

そんな状況下だからか、余裕綽々(?)の選挙戦を見せている小池知事は、東京都下各地域へ個別の「メッセージ動画を送るという戦術」にでた。東京には23の区と26の市、5つの町、8つの村があるので、一見ご苦労にも思えるが、(コロナ禍ではなく)各地をどぶ板で回ることを考えれば如何ほどのことでもあるまい。

そのメッセージ動画のなかで、筆者が注目したのは新宿区民にあてたメッセージだ。

6月24日に配信された「新宿区のみなさまこんにちは」から始まる動画は、

「新宿区には歌舞伎町に代表される世界的な規模を誇る歓楽街があって、普段は国内外からのお客様で大変な賑わいをみせていたところ……」

と、観光都市東京のなかでも、来日外国人がもっとも立ち寄る場所である新宿区をたたえるように持ち上げた。そこから、コロナ禍での苦衷に入っていくワケだが、それでも、

「事業者のみなさまに感染拡大の防止、ご協力をいただいてまいりました。心から感謝を申し上げます。もちろん、区民のみなさまのご協力、ありがとうございます」

と当事者たちに謝意を示し、「いわゆる夜の街」にはPCR検査に「実は積極的にご協力をいただいて……」「業界ごとにガイドラインの徹底」と事業者たちの自助努力を強調したのである。

選挙のための動画であるので、ある程度は仕方ないのだろう。しかし正直、それでも筆者は鼻白む気持ちを抑えられない。

経済活動再開後、都内のコロナ感染者が高止まりしている状況を、「いわゆる夜の街」……具体的に言えば、新宿にすべての責任があるかのように、会見等で印象づけてきたことを考えれば、究極のご都合主義としか言えない。

確かに新宿のホストクラブでクラスターが発生したのは事実だ。だが知事自身も言っているように、集団検診の結果、感染者数が多くなっている可能性は高い。

「夜の街」を批判する人々も、新宿のホストやキャバクラだけにコロナ感染のリスクがあり、他の街……六本木や渋谷にないと考えるナイーブな人間は少ないはずだ。そしてまた、過密な通勤や在宅ワークを解除した企業なども、感染リスクには含まれるであろう。

事実上、ひとつの街に責任を押し付け、(都内の感染者増という)本質的な問題点から目を反らさせる(ような)発言を繰り返してきた小池知事。そんな彼女の選挙動画での発言には、新宿区民ならずとも空疎に感じるのではないだろうか。

つけ加えて言えば、知事は「新宿はダイバーシティの街です」「まさに多様性に富んだ発展を続けてきた新宿です」「(自身は)LGBT差別などの根絶を目指して」と耳触りの良い言葉を数多く連発していた。

そこまで言うのならば、再選をした暁には(するだろうが)、是非おひざ元の再建に汗をかいて欲しいものだ。(文◎堂本清太)

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