住宅をリフォームするときの「瑕疵保険」って何? 誰が払うの? 費用はいくら?

リフォームの瑕疵保険とは?

住宅のリフォームは多くの人が未経験で、初めての業者選びや工事に関して不安も多いもの。そんなときに味方になってくれるのが「瑕疵保険」。リフォームの瑕疵保険とは、住宅をリフォームする際の「検査」と「保証」がセットになった保険のことです。

瑕疵(かし)とは

「瑕疵(かし)」とは、あまり耳慣れない言葉ですが簡単にいうと「欠陥」のこと。つまり「欠陥」に関する「検査」と「保証」がセットになっている保険ということです。リフォーム後の住宅が契約内容を満たしていなかったり、何らかの欠陥が見つかったときには補修が必要になりますが、その費用が保証される保険です。

リフォーム後の住宅に瑕疵が見つかった場合、リフォーム業者は保険金を使うことで補修工事にかかるお金を確保でき、スムーズに工事が実施されます。また、リフォーム後の住宅に瑕疵がみつかったもののリフォーム業者が倒産してしまった場合には、発注者が保険金の請求できる仕組みです。

リフォーム瑕疵保険の保険料は誰が払うの?

リフォーム瑕疵保険はリフォーム会社が被保険者

たとえば生命保険や自動車保険などの一般的な保険は、保証を受ける人が被保険者なのですがリフォーム瑕疵保険の被保険者は施主ではなくリフォーム業者。つまり保険に加入するのも保険料を支払うのもリフォーム業者ということになっています。現在、国土交通大臣が指定したリフォーム瑕疵保険を取り扱っているのは、日本では下記の5社あります。

㈱住宅あんしん保証…あんしんリフォーム工事瑕疵保険

住宅保証機構㈱…まもりすまいリフォーム保険

㈱日本住宅保証検査機構…JIOリフォームかし保険

㈱ハウスジーメン…住宅かし保険

ハウスプラス住宅保証㈱ …リフォーム工事瑕疵担保責任任意保険

リフォーム業者は、上記の5つの住宅瑕疵担保責任保険法人のうちどこかの保険を用いることになります。

保険料はいくらくらい?

支払うのは「保険料等」となっていて、保険料と「検査手数料」を合算した金額になります。具体的にいくらの保険料等を支払うことになるのか、たとえば㈱住宅あんしん保証の「あんしんリフォーム工事瑕疵保険」が挙げている例をご紹介します。

内装・設備のリフォーム工事で、工事請負額(支払い限度額)が100万円の場合、

保険料2万2630円+検査手数料1万3780円=3万6410円

支払い限度額や工事内容によって保険料が変わる仕組みになっているようです。

リフォーム瑕疵保険のメリット

第三者による検査で安心

保険に加入した住宅は、リフォーム完了後に検査されますが、担当するのは専門の建築士。たとえば、「まもりすまいリフォーム保険」の場合を例にとってみると、住宅保証機構から派遣された建築士がリフォーム工事の施工状況について検査を行うことになっています。検査は設計施工基準に基づいて行われます。設計施工基準とは、瑕疵保険を適用するためには満たさなければならないとされている基準で、どの保険法人でも統一のもの。一定の基準に基づいて工事の品質管理が行われる安心感があります。

質の高い施工が期待できる

保険に加入していれば、一定の基準を満たすレベルで質の高い施工が期待できるというメリットもあります。工事後に瑕疵が見つかったとしても、施主に金銭的な負担はなく、スムーズに補修工事を進めてもらうことができます。そもそもリフォームの設計段階で、上記の設施工基準を満たしている必要があるというのも安心材料のひとつ。リフォーム工事に自信があるからこそ、第三者の検査を受け入れるという業者の姿勢にもつながります。

リフォーム会社が倒産しても補償される

リフォーム工事後に瑕疵が見つかったものの、万が一施工会社が倒産してしまって補修工事ができない場合でも、瑕疵保険があれば安心。施主から直接、保険会社に請求すれば補修工事に必要な費用を受け取ることができます。そもそも瑕疵保険を利用するには、リフォーム会社は事前に事業者登録をしなければなりません。登録には保険会社が設定する基準をクリアしている必要があり、過去に行った工事で瑕疵がみつかった会社などは登録ができないことになっています。

リフォームを依頼する際には、瑕疵保険に加入している業者から選ぶと安心かもしれません。いくつか業者の候補がある場合は、事前に調べておくといいでしょう。瑕疵保険に加入している事業者は、一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会の公式サイトで検索することができます。万が一の事態に備える姿勢は、安心できる事業者の証だともいえます。会社名や地域名で検索し、信頼できる業者選びの参考にするとよいでしょう。

一方で、デメリットもいくつかあります。被保険者はリフォーム工事会社ですが、保険料の支払いが発生します。リフォーム工事瑕疵保険は任意保険なので、保険の申し込みを希望する施主が負担することになる場合もなかにはあるようです。保険期間が意外に短いこともデメリット。工事の内容によりますが、一般的なリフォーム工事の保険期間は1年間。いわゆる雨漏りの保険期間は5年間といったように、期限を過ぎてから発生した瑕疵については対象外になります。住宅や工事内容によっては、何度も検査が行われることになります。屋根など天候に左右される個所などは検査日時の調整をふくめ、工事期間が長くなりがちであることもデメリットといえるでしょう。

瑕疵保険の対象費用

リフォーム瑕疵保険の支払い対象になる費用は、大きく分けて3種類ある### 保険の対象となる費用

リフォーム瑕疵保険の支払い対象になる費用には、大きく分けて3種類あり、補修費用のほかにも対象となるものがあります。

1. 瑕疵を補修するための費用
保証対象となる瑕疵を補修するために必要となった費用

2. 調査費用
瑕疵が発見された場合に、どの程度の範囲で補修が必要で、どんな補修工事が必要か、金額などについても調べる必要があります。その決定をするための調査にかかわる費用

3. 転居または仮住まいのための費用
瑕疵が見つかり、補修をするために、一時的に仮住まいを探す必要があるとき、その住居に関わる費用

ほかにも、保険金の対象となる損害などが発生した場合や、訴訟や調停・示談等に必要となる費用なども対象になっています。

保険金が支払われる金額は(補修費等-10万円)×80%

瑕疵保険で、居住者が受け取ることができる費用は次の式で計算されます。
(補修費・調査費-10万円)×80%

倒産による瑕疵は100%

リフォーム事業者の倒産による瑕疵の場合、事業者の倒産後に瑕疵が発見された場合は、居住者には100%の金額が支払われます。

瑕疵保険対象の住宅条件

瑕疵(かし)保険の対象になるのは、建物の一部分の増築や補修・改築の工事を行う既存の住宅。個人の住宅だけでなく、店舗や事務所と兼用している住宅も含まれます。共同住宅には条件があり、住宅保証機構の「まもりすまいリフォーム保険」をみてみると、

●築年数、構造、工法は問いません。ただし、共同住宅等の場合は以下のとおりです。
・3階建て以下かつ500m²未満の共同住宅
・4階建て以上または500m²以上の共同住宅については各住戸内部※のリフォーム工事のみ対象となります。
※分譲マンションの場合は専有部分、賃貸マンションの場合は専有部分に相当する部分(併用住宅(店舗付の戸建住宅等)は共同住宅の扱いです。)
●構造耐力上主要な部分に係る工事を実施する場合は、新耐震基準に適合している住宅であること(新耐震基準に適合させる耐震改修工事は対象となります。)
●リフォーム工事請負契約に基づき、住宅保証機構指定の保証書において瑕疵担保責任について約定していること
●住宅保証機構が定める設計施工事基準に適合しているリフォーム工事であること

と記載されています。

リフォーム瑕疵保険の適用期間と対象の工事

瑕疵保険の期間は、リフォーム工事の内容によって異なります。
住宅保証機構の「まもりすまいリフォーム保険」によると、「双方により工事完了の確認を行うこととし、この「工事完了確認日」を保険開始日とする」としています。保険期間については以下のように記載されています。

保険期間5年の工事内容
①構造耐力上主要な部分が基本的な耐力性能を満たさない場合
②雨水の浸入を防止する部分が防水性能を満たさない場合
※ただし、①②の部分に発生した瑕疵が、③の部分に発生した瑕疵に起因する場合は、保険期間は1年間。

保険期間1年の工事内容
③上記①②以外の部分が社会通念上必要とされる性能を満たさない場合
(住宅本体または住宅本体に直接接続されている設備・内装等の工事など)

保険期間10年の工事内容
④基礎を新設して増改築工事を行う場合(増築特約)
基礎を新設する増改築工事部分の構造耐力上主要な部分が基本的な耐力性能を満たさない場合
または、雨水の浸入を防止する部分が防水性能を満たさない場合

対象工事について、住宅あんしん保証の「あんしんリフォーム工事瑕疵保険」によると、

①新築工事ではないこと
②増築工事(同一敷地内にある既存住宅の基礎の外周部の外側に、基礎を新設し床面積を増加させる工事をいい、以下同様とします。)を含まないこと(※増築工事に関する特約条項(以下「増築特約」)を付帯する場合は、保険対象リフォーム工事に増築工事を含みます。)
③管路または設備の解体、撤去、分解または取片づけを対象とする工事ではないこと
④清掃作業のみを対象とする工事ではないこと

としています。

保険対象となるリフォーム工事は、屋根や壁など既存住宅の一部、あるいはキッチンや浴槽など住宅の一部の設備にかかる改修工事や設置工事。たとえば耐震リフォームや排水管の交換、床や壁の断熱工事などは対象ですが、解体工事や撤去、清掃作業、門や塀などの外溝工事などは対象になりません。保険対象となるリフォーム工事は大きく分けては次の3種類です。

〇リフォーム工事:「増築工事」を含まない、既存住宅に対する工事で、改修・改築・減築工事(基礎の面積を 変えない増床工事を含みます。) リフォームの工事を実施した部分が保険対象となります。

〇増築工事:同一敷地内にある既存住宅の基礎の外周部の外側に、基礎を新設し床面積を増加させる工事をいいます。

〇増築を含むリフォーム工事:「リフォーム工事」と「増築工事」の両方を行う工事をいいます。

保険対象リフォー ム工事が増築工事または増築を含むリフォーム工事の場合は、増築特約の付帯が必要としています。リフォーム工事部分が社会通念上必要とされる性能を満たさない場合の事象としては、下記のような例があります。

コンクリート工事:玄関土間、犬走りまたはテラス等の構造耐力上主要な部分 以外のコンクリート部分→著しい沈下、ひび割れ、不陸または隆起が生じること

木工事:床、壁、天井、屋根または階段等の木造部分→著しいそり、すきま、割れ またはたわみが生じること

内部防水工事:浴室等の水廻り部分の工事による部分→タイル目地の亀裂または破損、防水層の破断若しくは水廻り部分と一般部分の 接合部の防水不良が生じること

排水工事:配管の工事を行った部分→排水不良または水漏れが生じること

ほかにも、断熱工事、防露工事、電気工事、給水、給湯または 温水暖房工事、ガス工事など多くの項目で対象となります。

リフォーム瑕疵保険の契約方法

瑕疵保険が申し込めるのは、あらかじめ保険申し込み前に事業者届を提出しているリフォーム業者です。そして、保険加入申し込みの手続きはリフォーム工事の着工前に行う必要があります。契約書類に記名や捺印を行い、必要書類を添付したら、基本的には事業者から保険会社へ郵送という形になるところが多いようです。

工事後、建築士により施工状況の検査が行われ、合格となり、すべての工事が完了して引き渡しが決定したら、保険を申し込んだ事業者から保険法人へ保険証券発行の申請を行います。このとき、保険証券と一緒に「保険付保証明書」が発行されるので、保険付保証明書のほうは施主が受け取ります。瑕疵が見つかった場合にはこの内容をもとに行われることになります。保険付保証明書はしっかりと保管しておきましょう。

リフォーム瑕疵保険の請求手順と流れ

リフォーム瑕疵保険を請求する際、一般的な流れは以下のとおりです。

欠陥の補修工事を依頼

リフォーム工事後に瑕疵が見つかった場合は、まずはリフォーム会社へ欠陥工事の補修を依頼します。

補修の実施

補修を依頼されたリフォーム会社は、あらかじめ加入している保険会社の基準にもとづいて、瑕疵があった住宅の補修工事を実施します。

保険金を請求

補修工事を終えたら、リフォーム会社は加入している保険会社に保険金を請求します。

保険金が支払われる

保険会社が補修の内容を確認し、問題がないと判断されればリフォーム会社へ保険金を支払います。

瑕疵保険に入っている業者を選ぶのがベター

リフォーム工事の欠陥は、素人では発見や判断がしにくいのが難点で、工事前も後もさまざまな不安があることと思います。そんなときに頼りになるのが瑕疵保険。第三者の確かな目で工事の検査が行われ、万が一のときも補修工事費が補償されるので、施主にとって大きな味方になってくれます。

リフォームに関するトラブルで多い原因のひとつが、間違った材料や施工方法で瑕疵につながってしまう事業者の知識不足だといわれています。瑕疵保険に入っている業者を選ぶことで一定の基準での工事を期待できますし、万が一のときも安心です。信頼できる業者を一人で選ぶのも難しいところですが、瑕疵保険に入っている業者の中から比較検討するのもひとつの方法だといえるでしょう。リフォーム工事を予定しているなら瑕疵保険を検討してみてはいかがでしょうか。

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