4カ月遅れで再開幕することとなったF1。その舞台となったオーストリアのレッドブルリンクは、いつもとは違う雰囲気でグランプリ開幕前日のメディアデーが行われた。
通常であれば、4〜6名のドライバーによって催されるFIA主催の『木曜会見』は、今回は全ドライバーが出席して行われた。これはごく一部のメディア以外、現場での取材が許可されないため、木曜会見以外の各チームが個別に行う囲み会見も、FIAが代行してオンラインで世界中のメディアに配信するためだ。
ただし、今回F1を再開させるにあたって、FIAは厳しいルールをサーキット内に適用しており、異なるチーム同士が接触を極力避けるため、ドライバーはチーム単位で登場し、会見の間隔も10分間空けて行われた。
ほとんどのドライバーが「4カ月間、何をしていたか」という質問を受けたが、その中で息子であるロビンくんとカートしていたことを振り返ったのが、キミ・ライコネン(アルファロメオ)だった。
4カ月間の休止期間中には、新型コロナウイルス感染症だけでなく、アメリカに端を発したBlack Lives Matter(BLM)の運動も起き、いまなお世界中から注目を集めている。Black Lives Matter(BLM)は、黒人に対する暴力と社会システム全体に広がる人種差別の根絶を訴える人権運動で、和訳すると「黒人の命は大切だ」となる。
F1界初であり、現時点で唯一の黒人ドライバーであるルイス・ハミルトン(メルセデス)は、この問題についてSNSを通してさまざまな主張を投稿してきたひとり。オーストリアGPのレース前にBLMに賛同する意味で、ドライバーたちとともにひざまずく予定はあるのかと尋ねられたハミルトンは、こう回答した。
「まだみんなとは話をしていないんだ。でも、それについては何度も質問されているけど、僕にとっては、ここでひざまずくことが最優先事項じゃない。大切なことは、継続すること。1回だけ何かやって、やめたんじゃ意味がない。不正と不平等を終わらせるために本気で戦う必要があるからね。まあ、日曜日になれば、わかるよ。何をやるにしても、みんなで団結してやりたい。僕らが結束することがこのスポーツにとって大事だから」
さまざまな思いで集まった世界最高峰の20人のドライバーたちによる2020年シーズンがもうすぐ始まる。