立体映像とAIで被爆証言 次世代に“生の声”残す 長崎・追悼平和祈念館

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山脇さんの立体映像(右上)を通して戦争・被爆体験を聞く児童ら=2月21日、東京都内のスタジオ(国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館の試作DVDから)

 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(長崎市平野町)は、被爆者の動く立体映像と音声、人工知能(AI)機能を組み合わせることで、利用者が被爆証言を聞き、質疑応答もできる新しい取り組みを構想している。被爆者の証言映像を残しておき、被爆者がいない時代になっても、次世代が“生の声”に触れられるようにする狙い。
 祈念館は、昨年8月9日の平和祈念式典で被爆者代表として「平和への誓い」を述べた山脇佳朗さん(86)の協力を得て昨年度、試作品を作った。
 映像は昨年12月に2日間かけて収録。利用者からの質問が想定される戦時中の暮らしや被爆体験、日本や次世代への思いなど約50問を山脇さんに尋ね、答えてもらった。AI機能を活用することで、山脇さんの映像が利用者の質問に合致した回答をする仕組みだ。
 今年2月には東京都内で試験運用があり、小学生約10人が参加した。児童が「なぜ戦争や核兵器はなくならないのか」と尋ねると、山脇さんの映像が「戦争の根本には貧富の差がある。核保有の原因は(各国間の)不信感だ」と答えた。
 試作品の制作費は約200万円と、既存の被爆証言の映像作品に比べ10倍近い経費がかかり、再生装置や専用スペースも必要になる。祈念館は事業化を目指し国などと協議している。
 黒川智夫館長は「被爆の実相を伝える一つの選択肢。今後必要だと思う」と話す。試験運用の場に参加した山脇さんは「立体感があり、もう一人の自分がいるような気がした。被爆者の寿命はあまり長くない。できるだけ多くの映像を残してほしい」と語った。

立体映像を制作するため収録に臨む山脇さん(奥)=2019年12月18日、長崎市内のスタジオ