地元に愛される一品を育てようと、神奈川県逗子市の小坪漁業協同組合と地元食材の加工販売を手掛ける合同会社こつぼが、市場に出回らないキャベツを使ったムラサキウニの養殖に取り組んでいる。6日にはキャベツ提供に協力した地元スーパーにウニを初めて出荷し、関係者は「地域で力を合わせ、少しずつ軌道に乗せていきたい」と意気込む。
県水産技術センター(三浦市)が2015年に始めて以降、県内各地で広がる「キャベツウニ」の養殖。逗子でも始めたきっかけは、海藻類が衰退・消失する磯焼け被害だ。磯焼けは海水温の上昇や、ウニやアイゴなどの食害が一因と考えられており、多様な生物が育つ藻場の消失は全国的に問題となっている。
同漁協の大竹清司代表理事組合長(60)も「この5、6年、海藻の減りがひどい」と実感。昨年には地元サーファーや葉山牛農家らと駆除したウニの殻を堆肥にする取り組みも行った。できることを模索する中、実入りが良くなり甘みも増すというキャベツウニ養殖を、同センターの協力で今春から始めた。
地元スーパー「スズキヤ」が市場に出回らないキャベツの外葉を提供。細長く切ったり塩漬けにしたりしたキャベツを、小坪の磯で採った1500個のウニに与えて養殖し、3カ月ほどかけて育てたという。
キャベツウニは今月6日にスズキヤ逗子駅前店に初めて出荷され、7日も100個限定で販売する。手に取った横須賀市の萱谷龍馬さん(71)は「そのまま味わいたい」と笑顔だ。
キャベツウニのパスタを8日から始める逗子市逗子のレストラン「ラ・ベルデ」シェフで、こつぼ代表の漁師・座間太一さん(55)は「甘みが強くさっぱりした味わい。今後、市内の店舗で広く販売できるようにしたい」と話した。