テレワークは非効率?継続でも伸びる企業・伸びない企業

© 株式会社マネーフォワード

今回の新型コロナウイルスで私たちの生活の多くが変わりましたが、中でも大きく変わった(変わろうとしている)のは働き方でしょう。「在宅勤務」や「テレワーク」「リモートワーク」といった言葉を目にしない日がありません。「在宅」を標準とする動きが企業で急速に広がりつつあります。


在宅勤務をメインにする企業が続々

ドワンゴは当初は新型コロナウイルス感染症の予防として実施していた在宅勤務制度を本格導入しました。基本は在宅勤務で、必要に応じて出社する勤務体系に全社で移行します。

日立製作所は新型コロナウイルスの終息後も在宅勤務を続け、週2~3日の出社でも効率的に働けるよう人事制度を見直すと発表しました。国内で働く社員の約7割にあたる約2万3千人が対象となるといいます。

富士通は国内のオフィススペースを2022年度末までに半減し、出社を前提とした働き方を変えると発表しました。

在宅勤務の推進・定着は長年問題視されてきた我が国の長時間労働を是正する良い機会であり、国際的にみて低い我が国の労働生産性を向上させるチャンスでもあります。しかしここで問題は、在宅勤務が本当に効率のよい働き方なのか、という点です。

在宅勤務だと「効率は下がる」?

気になる調査があります。日本生産性本部が5月中旬に実施した新型コロナウイルスの感染拡大に関する勤労者の意識調査によると、テレワークの中心となる在宅勤務についての質問に対し、「効率が上がった」と回答した人が7.2%、「効率がやや上がった」と回答した人が26.6%となり、効率向上を実感したのは合わせて3割強にとどまったのです。

逆に効率が「やや下がった」との回答は41.4%、「下がった」との回答は24.8%となり、合わせて6割を超えました。一方で、在宅勤務の満足度については、「満足している」が18.8%、「どちらかと言えば満足している」が38.2%で、6割弱の人が多かれ少なかれ満足を感じている結果となりました。

ざっくりまとめると、在宅勤務で効率は下がったものの、それで満足だということになります。ひとによって価値観は異なりますから、それが悪いとは言えません。ただし、それでは賃金上昇は望めません。企業は労働生産性の向上に対して賃金アップで応えるのが基本だからです。

ですから、やはり労働生産性が上がるような働き方をしなければなりません。そのカギはテレワークでしょう。

「テレワーク」という言葉も「在宅勤務」という言葉も同じように使われていますが厳密には意味が異なります。テレワークは時間や場所の制約を受けず、ICT(情報通信技術)を利用して柔軟に働く働き方で、必ずしも「在宅勤務」を意味しません。

在宅で効率が落ちたのは、もしかしたら企業のシステムや家庭の環境などに起因するITの不備が原因かもしれないのです。

労働生産性はIT投資額で見極める

労働生産性を高めるには資本装備率を上げるという方法があります。資本装備率とは従業員一人当たりの資本ストックですが、特にIT資本に限ったIT資本装備率と株価には密接な関係があります。

ここでは、無形資産のうちソフトウエアをIT資本の代理指標として、従業員一人当たりのソフトウエア額を集計しました。上場企業のうちデータ取得可能なサンプルを従業員一人当たりのソフトウエア額の大きさで5つのグループに分けました。ソフトウエア投資額の大きい企業ほど労働生産性が高くなっているのが分かるでしょう。ROE(自己資本利益率)も同様です。

この従業員一人当たりのソフトウエア投資額と株価の関係を見ると、有意に正の関係が見られます。つまり、従業員一人当たりのソフトウエア投資額が大きい企業は株価も高くなるということです。

このコロナ禍を契機に一段とIT投資を進めた企業は生産性も向上し市場からも評価されるようになるでしょう。ここでのIT投資の踏み込み方で伸びる企業とそうでない企業の差がつくと思います。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>