専門家が燕・村上の3年目の進化を確信 若手が「見習ってほしい」姿勢とは

ヤクルト・村上宗隆【写真:荒川祐史】

現役時代に中日、西武、ロッテで外野手として活躍した平野謙氏が解説

8日にナゴヤドームで行われた中日-ヤクルトは延長10回の末、5-5の引き分けで“痛み分け”に終わった。現役時代に中日、西武、ロッテで外野手として活躍した平野謙氏は両軍の若手に、進境著しいヤクルトの村上宗隆内野手を“手本”にしてもらいたい点を挙げた。

昨季36本塁打、96打点を量産し、新人王に輝いた村上が、今季はチームの4番に座り、さらなる成長を見せている。昨季.231に終わった打率も、今季は8日現在.333。この日は1発こそ出なかったが、2回先頭で中前打を放ち、一挙、3得点の口火を切った。

平野氏は村上のこの安打の打席のファウルに着目した。1球目のボール球のカーブを見送った後、2、3球目と続けてファウルに。いずれも内角のコースの146、147キロの速球に対してしっかりスイングできていた。「だからこそ、4球目の甘めにきたスライダー系の球をとらえることができた」と指摘する。

村上が好調なのは打席での姿勢にあった。「自分が打てると思ったボールには積極的に打ちに行っている。まだ若いのにそういう姿勢は他の選手も見習ってほしいなと思います」と打つべき球を見極めて、しっかりとバットを振れているところに昨年よりも進化を感じた。

「いい打者は不振でも打ちにいくことで感覚を戻していく」

見習ってほしい「他の選手」というのはヤクルトだけでなく、対戦相手の古巣・中日選手のことも指している。

「現状では中日にもヤクルトにも、レギュラーが決まっていないポジションがあり、控え選手にとってチャンスです。ところが両軍の野手に、内角球に対して腰を引き、外角球に対して、踏み込み切れない選手が多いのは、寂しい限りです」

例えば、中日の「8番・右翼」で出場した遠藤は3回1死一塁で、初球の内角速球を見逃し、カウント1-2と追い込まれた後、外角のツーシームを引っかけて投ゴロ併殺に倒れると、4回の守備中、投手交代のタイミングで右翼を渡辺に譲りベンチに下げられた。代わって出た渡辺も、4、7回に2打席連続空振り三振を喫した。「渡辺の場合も、4回の打席で初球の内角スライダーを見逃し、最後は外角低めのスライダーを振らされた。決して多くないチャンスをものにするには、まずはファーストストライクをしっかり振れる姿勢が求められます」と平野氏。

「4番のビシエドなどは、全球に対して打ちにいった上で、見送るべきボールと判断すれば見送っている」とも。また中日の大島についてもまだ本調子ではないが、打てていない中にも、積極的にスイングしていることを評価。「いい打者は不振でも打ちにいくことで、感覚を戻していく。見逃していたら何も手に入りません」とレギュラーにはそれだけでの理由があった。

打者として大成するための第一歩が、打ちに行く姿勢の中にあるようだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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