ヒルズの地下に新駅誕生

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開業日を迎えた虎ノ門ヒルズ駅=6月6日

 【汐留鉄道倶楽部】6月6日、東京メトロ日比谷線に虎ノ門ヒルズ駅が開業した。日比谷線の全線開通は1964年で、新しい駅ができるのはそれ以来初めて、56年ぶりの慶事だ。

 既に走っている鉄道に新駅ができるのは別に珍しいことではない。大規模な商業施設や住宅地の開発、学校の設置などで人の流れが変わって新しい駅ができる。今回の虎ノ門ヒルズ駅も、超高層ビルが次々と建つ虎ノ門地区の再開発の中で設置が決まった新駅だ。

 だが、地下鉄の新駅設置はなかなか難しい。地中に駅のホームや改札、コンコースなどの構造物を新設するのは、用地の確保も含め簡単なことではない。東京の地下鉄で、地中の既存区間に新駅ができたのは、丸ノ内線西新宿駅(96年、当該線区開通から35年ぶり)と銀座線溜池山王駅(97年、同じく59年ぶり)ぐらいか。

 都営大江戸線の汐留駅は敷設時にあらかじめ駅の部分はできていて、再開発地区のオープンに合わせて2年後に開業したので、ちょっと色合いが違う。西新宿駅は線路の外側にホームを二つ新設する形だったが、溜池山王駅は二つの線路を外側に付け替えて中央部にホームを新設する大工事で、戦前に全通した地下鉄に半世紀を超えてできた新駅として大いに話題になった。

 虎ノ門ヒルズ駅は西新宿駅と同様、外側にホームを新設するタイプだが、なかなかの難工事だったようだ。隣の霞ケ関駅とは0.8キロ、神谷町駅とはわずか0.5キロしか離れていない。

 開業と同時に、最寄りの銀座線虎ノ門駅との接続駅になったので、いったん改札は出るものの、通しの切符で両線を乗り継ぐことができる。こうした「改札外乗り換え」のリミットは60分なので、乗り継ぎの間に買い物や、場合によっては「ちょっと一杯」を楽しむこともできそうだ。

虎ノ門ヒルズ駅の隣駅、霞ケ関駅の駅名標。新駅開業前(上)と後(下)で、駅ナンバリングも変更された(H06→H07)

 日比谷線は東京メトロの前身、帝都高速度交通営団(営団)では銀座線、丸ノ内線に次ぐ3番目の路線で、61年に南千住―仲御徒町駅間で開業、64年8月、東京五輪直前に全通した。全身シルバーの3000系は斬新なスタイルの車両として人気があった。東武伊勢崎線、東急東横線と相互直通運転をするのも営団では初めてで、戦後復興の時代から高度経済成長の時代に変わりゆく地下鉄の象徴だったともいえるだろう。

 話が脱線するが、そのころの日本を舞台にした映画「007は二度死ぬ」(67年)を久しぶりに見た。銀座4丁目やホテルニューオータニと並んで、地下鉄の場面もあるのだが、日本の情報機関のトップ、タイガー田中(丹波哲郎)のオフィスが駅とつながっていて、彼はなんと地下鉄の専用車両を使っているのだ。

 この地下鉄、昔の記憶でなんとなく日比谷線だと思い込んでいたのだが、今回見直して丸ノ内線だったことを知った。ネットなどで検索すると、ロケは同線の中野新橋駅で行われたらしい。最新鋭の地下鉄より、ちょっと前の地下鉄の方が、情報機関のカムフラージュには都合がいいのかもしれないですね。

  ☆八代 到(やしろ・いたる)1964年東京・渋谷生まれ。共同通信社勤務。「007は二度死ぬ」は、ボンドが(とてもそうは見えない)日本人に変装したり、タイガー田中の部下たちが姫路城で忍者の訓練をしたりと、突っ込みどころ満載の映画です。

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。