聴覚に障がいのあるエース 春夏4度の甲子園出場 松阪商業

いよいよ11日に開幕する三重県高等学校野球夏季大会。聴覚に障がいのあるエースを紹介します。

創立100周年を迎え、これまでに春夏4度の甲子園出場を誇る伝統校、松阪商業高校です。

去年秋の三重県大会ではベスト4に進出しました。

その松阪商業でエースナンバーを背負う3年生、松山心投手。

北村祐斗監督は「特にピンチほど力を発揮する選手。十分この夏の大会活躍するだけの力は持っている」と話します。

松山投手は生まれつき聴覚に障がいがあり、左耳は聞こえず、右耳は補聴器を付けてわずかに聞こえる程度です。

中学まではろう学校へ通っていましたが、甲子園出場を夢みて松阪商業へ進学しました。

「中学までは手話を使って会話をしていたけど、高校では口で話すので大変だった。仲間と話せなくて悔しかった」

初めは仲間とのコミュニケーションがうまくいかず、練習で手を抜いてしまい、注意した仲間とぶつかったこともあったといいます。

松山投手とバッテリーを組む、キャプテンの山路空選手は「初めは、サボる癖があったので注意していた。彼なりに努力していいピッチャーに育ってきたと思う」と言います。

去年、秋の大会では松山投手と共にWエースとしてチームの躍進に貢献した、主砲、阪本和樹選手は「共にやってきた中で一緒の右腕ということでいいライバルであり、いい仲間。今はエースという自覚があるので、誰よりも練習しみんなが認めるようなピッチャー」と語ります。

「エースナンバーをもらって、みんなにエースと言われるようになって、頑張ろうと思った」と松山投手。

そんな矢先、夏の甲子園の中止が発表されました。「悔しかった。頭が真っ白になって、なんとも言えない」

甲子園という大きな目標を失い、就職や進学のために野球部を辞めることを考えた選手もいたといいます。

「最終的にはみんな辞めなかった。やっぱり野球が好きだからだと思う。野球から一回離れると、当たり前に野球ができることが幸せだということをみんなが実感した。やっぱり野球が好きだ」と阪本選手。

松山投手を中心に三重県の頂点を目指すチームの目標は変わりません。

「三重県の頂点・優勝を目指して選手と一緒に戦っていく」と北村監督

「この夏は松山中心に守備を頑張ってほしい。その分自分はバッティングで松山を助けるという気持ちが強い。バッティングは自分に任せろという感じで、日々練習を頑張っている」と阪本選手。

山路選手は「三重県一番っていうのは変わらない。甲子園がなくなったのは残念だが、バッテリーで他のチームを圧倒したい」と。

松山選手は「3年間ケンカもしたけど、今もこうやって野球ができるのは仲間のおかげ。ありがとうと言いたい。チームに貢献できるようなピッチングをしたい」と感謝の言葉を述べました。

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