60歳からのマイホーム購入、いくらの物件なら買っても大丈夫?

ポスト・コロナ時代、会社員の働き方は変化していくことでしょうが、昭和・平成の会社員に転勤はつきものでした。今回は60歳目前に転勤生活から解放された場合、いくらのマイホームを購入すればその後の生活に支障がないのか?を考えてみたいと思います。


60歳からの購入には一定のメリットがある

マイホーム志向が高いと言われている日本人ですが、総務省の平成30年住宅・土地統計調査によると持ち家率は61.2%。統計からも半数以上がマイホームを所有していることがわかります。

長年の転勤生活を終えた時に、マイホーム購入を考えるのも自然の流れと言えるでしょう。ただし、購入するにあたっては慎重に考える必要があります。

特に定年後に購入する場合、継続雇用などで収入を得ているとしても現役時代の半分以下といったケースも少なくありません。マイホームといえば人生の中でも大きな買い物ですから、買った後に後悔はしたくないものです。この点については、20−30年前にマイホームを購入した同世代に比べて今から購入する人には一定のメリットがあると言えるでしょう。

なぜなら、当時は空き家問題も話題に上がっていませんでしたし、マイホーム=資産と考えられていました。しかし、今ではマイホームが負債になる可能性もあるのです。

たとえば、人口が減少する地域では、売却したくても買い手がいないといった事態も想定されます。これからマイホームを購入する60代は、こういったリスクを回避して賢く買うことができるとしたら、一定のメリットがあると言えるでしょう。では、購入を検討するときに注意したいポイントについて考えてみましょう。

マイホーム=終のすみかにならない可能性も考えておく

マイホームを購入したら一生涯住み続けるつもりと考えてはいないでしょうか?しかし、将来は不確実です。たとえば、「健康上の問題で階段の上り下りができなくなる」、「結婚した子供から近くに住んで欲しいと頼まれた」など自分の思い通りにいかないことも人生には起こり得ます。

ですから、購入する前に将来売却できることを想定しておくことも必要です。具体的には、交通利便性や生活利便性が高い、災害リスクが低いエリアなどを候補に購入を検討するのも一考です。

安易な資金計画には要注意!

会社員の場合、60歳で退職一時金を受け取る人も多いかと思います。その場合、安易に退職金を取り崩して購入資金に充てるのはオススメできません。まずは老後の生活資金確保を優先することが重要です。

特に公的年金の受給開始となる65歳までの間は継続雇用でどのくらいの収入になるのか?65歳まで勤められそうか?堅実に見積もっておく必要があります。その際、夫婦であれば、今まで扶養内で働いていた妻が、扶養を外れて働くことができれば収入だけでなく老齢厚生年金を増やすダブルのプラス効果があります。お互いによく話しあって協力体制を作っておきたいところです。

ローンは利用できる、ただし健康状態によることも

なお、60代で住宅ローンを組めるのかについても重要なポイントです。フラット35の申込要件は申し込み時の年齢が満70歳未満です。借入期間については満60歳以上であれば10年以上、上限は「80歳―申込時の年齢」です。

たとえば、60歳の場合は10年以上20年まで利用可能ということになります。ただし、実際の借り入れには審査があるので希望通りに借りることができない可能性もあります。また、健康上に問題がある場合は注意が必要です。通常、住宅ローンには団信と言われる住宅ローン専用の生命保険に、強制あるいは任意で加入することになります。これは、ローン返済中に万が一のことがあった場合、保険金により残りの住宅ローンが弁済されるため、貸す側と借りる側の両者にとってメリットがある制度です。

ただし、生命保険ですから加入時に審査があり、健康上の問題で加入できないこともあります。60代になれば、健康上の問題を指摘される可能性も高くなるでしょうから、その場合は、緩和型のワイド団信に加入するかあるいは団信無しでの契約を行うことになります。ちなみにフラット35は、団信無しでも借り入れができますが、ほとんどの銀行では借り入れ自体ができないことになるため注意が必要です。

結局いくらの物件なら買ってもいいの?

60歳から65歳まで継続雇用で年収が240万円でローンを利用するケースで考えてみましょう。フラット35では、年収に占める年間合計返済額の割合が年収30%未満という決まりがあります。つまり年収240万円では、年間返済額が72万円(月6万円)以下の必要があります。

たとえば20年ローンを利用する場合、2020年6月の借入金利(最低1.22%)で試算すると、借り入れ可能額は1,277万円です。そのほかには、金融機関によりますが融資手数料が概ね1%前後として約13万円、団信保険料が約47万円、合計で約60万円かかります。80歳まで返済を続けるのは現実的ではないでしょうから、仮に5年後に600万円を繰り上げ返済すると70歳7ヶ月で完済します。

ローンを利用する場合、いくらの物件なら買ってもいいか=いくらなら返済できるかに尽きると言えます。毎月の返済額とは別に、頭金や繰り上げ返済などまとまった資金はどのくらい用意できるか?で購入できる物件価格の目安をつけることができます。そのためには、退職金、公的・私的年金の受給見込額、その他金融資産、老後にかかる生活費を想定・把握しておくことが重要です。

また、購入後に一定の維持費がかかることも考慮して、無理がある場合には物件価格を低くすることを考える必要も出てくるでしょう。決して簡単に答えが出ることではないかもしれませんが、後悔のない選択をしたいものです。

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