手探りでのプロ野球有観客開催 入場者を約1500人に限定した鷹の取り組みと今後の課題

ファンの前で「熱男」パフォーマンスを披露するソフトバンク・松田宣浩【写真:藤浦一都】

ソフトバンクはなぜ再開初日を約1500人に限定し無料招待にしたのか?

7月10日、日本国内のプロスポーツで先陣を切って、スタンドにファンを入れた有観客開催が再開された。巨人とヤクルトの試合は中止となったが、東はZOZOマリンスタジアム、西はPayPayドームまで5つの試合会場で人数限定ではあるものの、ファンがスタンドに戻ってきた。そして、そのファンの期待に応えるがごとく、3試合でサヨナラ本塁打によって決着がつく劇的な試合展開になった。

有観客試合初日となった10日。各球場では様々な感染防止策などが設けられて観客を迎え入れた。ここではソフトバンクの本拠地PayPayドームでの有観客試合初日の様子、対策を紹介したい。PayPayドームでは試合開始の2時間10分前の15時50分にゲートが開き、観客をスタジアム内に迎え入れた。オフィシャルダンス&パフォーマンスチーム「ハニーズ」のメンバーたちが入場ゲートに立ってファンを出迎えた。

再開初日、ソフトバンクは入場者数を約1500人に限定し、11日には約2500人、12日は約5000人と、観客数を段階的に引き上げていく方策を取った。しかも、10日から12日の楽天との3連戦はファンクラブ会員などに限定した抽選制とし、入場は無料とする招待という形を取った。

これには狙いがある。まず、観客の情報を把握するため。ファンクラブ会員であれば、例えば、感染者が出た際に必要となる個々の情報は既に登録されており、新たに情報を集める手間はさほどかからない。また運営方法の確認、シミュレーションに万全を期すためにまずは1500人とし、段階的に人数を増やすことにした。このシミュレーションにより、観客にも不便な思いを強いる可能性があることから無料招待という形を取った。本格的な有観客試合再開に備えた準備期間の意味もあった。

懸念されるチケットの転売行為についての対策は…?

客席は指定席制となっており、前後左右で観客同士が接近しないように“市松模様状”になるように座席を配置。入場時の体温測定やアルコール消毒なども徹底され、試合終了後も、スタッフの先導による制限退場に。スタンドの売り子たちによる販売はなく、アルコール類は屋外に設置した売店での販売のみ。初戦はまず大きな混乱もなく終えた。

今後は人数が増え、7月21日からは5000人を上限とした有料開催となり、8月からはチケットの一般販売も始まり、上限2万人となる予定だ。今後は観客が増えた場合の“ソーシャルディスタンス”の取り方や、この日も見られた、どうしても試合の佳境で起こってしまうファンの総立ちの現象などの事象に対応していくこと、そして来場者の来場後14日間の追跡がどこまでできるかが課題になるだろうか。

また人数が限られていることで懸念されているのが、チケットの転売行為だ。球団によれば、チケット購入者は新型コロナウイルス対策のため個々の情報を登録する必要があり、通常開催時よりも個人を特定しやすいという。入場時にも個人のデータは必要となる。それでも、転売する悪質な人間が出る可能性はある。例え、生で観戦がしたくとも、感染防止の観点からも転売チケットの購入は避けてもらいたいものだ。

もちろん体調に異変がある場合の来場の自粛やマスクの常時着用といった基本的な感染防止策を来場者個々人が徹底することも重要だ。ようやく始まった有観客試合の開催。球団、ファンが一体となって、安全な野球観戦の場を続け、守っていきたいものだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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