3年生に恩返しを 未熟児、野球とともに成長 島原翔南・坂本 県高校野球きょう開幕

大会に向けて練習に励む坂本=南島原市、島原翔南高体育館

 まぶたが生まれつき十分に開かない「先天性眼瞼(がんけん)下垂症」。右目は見えにくく、視野も狭い。それでも、全力プレーと声で仲間を鼓舞する。島原翔南高1年の坂本康輔は家族や仲間たちに支えられながら、懸命に心身を鍛えてきた。迎える高校最初の公式戦は、ともに汗を流す3年生にとって集大成の舞台。「チームに貢献したい」。身長151センチの小さなムードメーカーは恩返しの奮闘を誓う。
 「失礼しますっ」。練習では誰よりも元気よくあいさつして、グラウンドに入る。右目の視力は0.1程度。尾嶋智広監督が「すべてにおいてまだまだ」と評するように、練習についていくのも楽ではないが、小さな体を目いっぱい動かして存在感を放つ。
 双子の弟として生まれた。母の真由美さんが妊娠中、へその緒が羊膜に付着して栄養がいかなくなり、成長が止まった。命の危険があり、帝王切開で出産。出生時の体重は735グラムだった。
 父の丈晴さんは「生命力が強かった」と当時を振り返る。先天性の尿道下裂もあって手術を繰り返したが、困難を乗り越えて一歩一歩成長。白木野小(現南有馬小)2年時にはソフトボールを始めた。父が自宅庭に鉄パイプとビニールひもで作った打撃練習の器具を使い、兄の悠輔とともにバットを振った。
 南有馬中では軟式野球部でプレー。今春、島原翔南高に進み、3年で主将の近藤慶志らに誘われて野球部に入った。3年生3人、2年生1人の部にとって、新しく加わった1年生3人は貴重な戦力。その近藤は坂本のことを「あいつがいると場が明るくなり、モチベーションも上がる」と頼りにしている。
 大会には部員2人の諫早商高と合同で、他部からの助っ人3人も得て臨む。初戦の相手は昨秋4強で部員87人の大村工高。「静かにならないよう自分が大きな声を出す。関わってくれるすべての人に感謝して頑張りたい」。部員不足でも、コロナ禍でも、気持ちを切らさずにやってきた先輩たちのため。プレーはもちろん、ムードメーカーの役割もしっかりと果たして、実力校に立ち向かう。

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