玄関に吹き抜けのある暮らし――そのメリット・デメリットを紹介

「開放感があって憧れる」「玄関を広々と見せられる」と、吹き抜けのある玄関は人気があります。玄関は家の顔となる大事なポイントなので、「吹き抜けで個性を出したい」という方も多いのではないでしょうか。

吹き抜けは明るく広々とした印象になる反面、2階部分のスペースが狭くなるなどの難点もあります。良い面と悪い面の両方を知ったうえで、最適な選択ができるようにしましょう。この記事では玄関に吹き抜けを施工したい方に向けて、吹き抜けの魅力や注意点、そして対策方法をご紹介します。

≪目次≫- 玄関に吹き抜けをつくりたくなる理由

玄関に吹き抜けをつくりたくなる理由

明るく開放感のある吹き抜け。玄関の日当たりを良くするためにリフォームや増築時にあとから設けるケースも珍しくはない

吹き抜けとは、1階の天井をつくらずに2階とつなげた空間のことをいいます。明るく開放感がある吹き抜けは、玄関やリビングといった部分に設けられるのが一般的です。新築物件でも吹き抜けを設けた家はありますし、リフォームや増築時に後からつくるケースも珍しくありません。まずはなぜ吹き抜けをつくるのか、その理由から見ていきましょう。

日差しを多く取り入れるため

吹き抜けの2階部分の窓から太陽光が入れば、しっかり玄関まで照らしてくれます。そのため常に玄関が明るい空間になり、日当たりがよくなるのです。この日当たりのよさも、吹き抜けで開放感が生まれる理由の1つです。太陽光が入る角度は季節によって異なるので、窓を設置する位置はプロと相談して決めます。

おしゃれな照明やインテリアで玄関を華やかにするため

玄関といえば、家の「顔」になる部分です。開放感ある明るい吹き抜け玄関は、インテリアにもこだわりたくなります。日当たりがいいので植物を育てるのにも向いていますし、自分好みの空間にするとますます吹き抜け玄関がお気に入りの場所になるでしょう。吹き抜けの玄関には、アクセントとしてペンダントライトや壁付けのブラケットライトなど、自分でメンテナンスできる照明がよく採用されます。

吹き抜けを玄関に設置するメリット

玄関を吹き抜けにする魅力がわかったところで、次は具体的なメリットを見ていきましょう。自分たちで一からデザインできる注文住宅でも、「玄関は吹き抜けにしたい」という希望をよく耳にします。さまざまな工夫をちりばめた魅力的な吹き抜けの玄関をつくっている家もたくさんありますよ。

開放感溢れる明るい玄関に

玄関を吹き抜けにする最大のメリットといえば、やはり開放感が大きい点です。開放感があるのは、1階部分に天井がなく2階部分まで視線が上に抜けるためです。家の入口である玄関ホールが狭くて暗い空間になってしまうと、家全体の印象も悪くなってしまいます。

そこで玄関ホールを吹き抜けにすると一気に開放感が高まり、日の光がたっぷり入る明るい玄関になるのです。玄関ドアを開けた瞬間に、「広い」「明るい」という印象を与えるはずです。

外観・内観デザインのアクセントになることも

玄関を吹き抜けにすれば、家の内観はもちろん外観にもアクセントをつけることができます。まず内観の場合、吹き抜けにするとその分「壁」の面積も大きくなります。その面積が大きい壁の部分だけ色の異なる壁紙を貼ることで、玄関にアクセントをつけることができるのです。

吹き抜けほど面積が大きい部分なら、思い切った大柄のプリント壁紙も映えるでしょう。クロスの一部だけ白い壁紙以外のデザインにすることを「アクセントクロス」といって、個性を出す方法の1つとして人気です。一般的に玄関付近には階段や廊下もありますから、それらのデザインや素材によってはさらに玄関を広く開放的に見せることも可能です。

また、吹き抜けの2階部分に「連窓」という複数の窓をつなげたものを取り付ければ、外観のアクセントにもなります。連窓にする場合はサッシも特注になることもありますが、その分個性が出るというメリットもあります。

縦のスペースを利用することで、家全体を広く見せられる

玄関を吹き抜けにすると1階から2階へと視線が抜けるので、特に「縦」の開放感が大きくなります。そのため玄関の横幅があまり広くなくても、ゆったりとした印象を得られます。ただ、吹き抜けにする分、2階部分の面積が狭くなってしまうので、玄関以外の間取りも工夫しなくてはいけません。

しかし玄関を吹き抜けにすることは、限られたスペースで広々とした空間を演出するとても有効な方法です。縦に広いスペースを活用して、あえて背の高い玄関扉を付けることもできます。玄関扉が大きいと存在感や重厚感が出て、「大きい家」という印象が高まります。

吹き抜けを玄関に設置するデメリット

吹き抜けにはさまざまなメリットもありますが、もちろんデメリットもあります。「開放感がある」「明るい」という理由だけで吹き抜けを施工すると、後悔することにもなりかねません。ここでは、玄関を吹き抜けにするデメリットを3つご紹介します。

夏場・冬場の温度管理に工夫が必要

玄関を吹き抜けにする最大のデメリットといえば、温度管理が難しくなることです。開放感がある分エアコンで温度調整した空気が逃げやすく、「夏は暑い、冬は寒い」という状態になります。

冬場は「エアコンやヒーターを使っているのに寒い」という現象も起こります。これは「コールドドラフト」といって、温めた空気が窓ガラスで冷やされ、床面に冷たい空気が下りてくることで発生します。コールドドラフトが起こると、天井付近と玄関付近とで5℃以上温度差が生まれることもあり、その差を埋めようとエアコンの温度を上げると光熱費の上昇につながってしまいます。

玄関を吹き抜けにする場合、エアコンやヒーターと一緒にサーキュレーターを回すといった対策が必要です。空気をかきまぜるサーキュレーターを使うことで寒さを改善することができます。また、寒冷地であれば、床暖房の設置も検討してみてください。

高い位置の掃除や照明の交換。お手入れが不便な場合も

吹き抜けにすると2階部分の床がなくなるので、高い位置のメンテナンスが行いにくくなります。自分たちで届かないほど高い位置に窓や照明を設置すると、掃除や電球交換のたびに業者を呼ばなくてはいけません。そうならないためには、自分たちで脚立などを使って届く範囲内に設置するといった対策が必要です。

特に天井に埋め込むダウンライトは見た目がスッキリしてスタイリッシュですが、吹き抜け部分に設置すると電球の交換が大変なのであまりおすすめしません。電球は「10年使える」といわれるLEDが人気です。採光窓にカーテンを取り付けるときは、手動式だと開け閉めが大変です。そのため、電動式のロールスクリーンにするといった工夫が必要でしょう。

また、吹き抜けのような高い位置に照明を設置するとき、「シャンデリア」はおすすめしません。きらびやかなシャンデリアは開放感のある玄関と相性がいいのですが、やはり掃除が大変です。シャンデリアは掃除しにくいので、玄関にほこりが落ちてきてしまいます。インテリアはついデザイン性を重視してしまいますが、玄関を吹き抜けにする場合はメンテナンスのしやすさも意識しなくてはいけません。

階段まわりの安全性への懸念

吹き抜けの玄関特有の開放感を引き立てるために、階段や廊下のデザインにこだわる方も少なくありません。最近は段と段の間に板がない「スケルトン階段」などスタイリッシュなデザインが人気ですが、安全面にも配慮する必要があります。スケルトン階段は開放感があり、吹き抜けの玄関で採用している家も多いものです。しかし子供や年配者、ペットが踏み外してしまう可能性があり、落下の危険が高まります。

階段は転倒しやすい場所なので、家族構成によってはデザインよりも安全性を優先させることも大事です。例えば「踊り場」と呼ばれる平らな面を設けた階段にしたり、階段のスペースをしっかり取った緩やかな階段にしたりといった工夫を取り入れる必要があります。

吹き抜けのデメリットを最小限にする工夫

吹き抜けのデメリットを最小限に抑えるような工夫が大事

吹き抜けの玄関には、今までご紹介したようなメリットとデメリットがあります。最後に吹き抜けのデメリットを最小限にして、吹き抜け階段を快適な空間にする工夫を3つご紹介します。

吹き抜けの特長が活きる十分な広さを確保すること

吹き抜けを設置すると、その分2階のスペースが狭くなります。玄関を吹き抜けにするときは、2階の住居スペースを十分確保したうえで検討するようにしましょう。「玄関を吹き抜けにしたいけれど、住居スペースも確保したい」と考えると、つい玄関スペースを削りがちです。しかしあまりに狭い玄関で吹き抜けをつくっても、吹き抜けのメリットは感じられません。

玄関の広さを確保するためには、玄関ホールの奥行きや間口(幅)を広く取るようにしましょう。そのうえで吹き抜けを設置できれば、かなり広々とした玄関になります。また、家族構成を考えたうえで、玄関に収納すべきものも一度しっかり整理しましょう。靴をはじめペットの散歩グッズや自転車、子供の遊び道具なども保管したいなら、多目的なクローゼットスペースが必要です。

家の性能やつくりと、吹き抜けがマッチするか入念に調べること

吹き抜けを設置できるかどうかは、実は家の性能にも左右されます。前述の通り吹き抜けは開放感がある分温度管理に工夫が必要です。つまり、断熱性能の高い家でなければ吹き抜けのデメリットが目立ってしまいます。吹き抜けの上部には窓を設置するのが一般的です。

しかし窓のサイズが大きすぎると、太陽光だけではなく「熱」も入りやすくなります。つまり夏は暑くなり、冬はひんやりと寒くなってしまうのです。また、家をつくるときは地震や風から家を守る「耐力壁」を配置しますが、吹き抜けをつくることでその位置を変えなければならないでしょう。

それが可能かどうかは家によって違うので、設計士とよく相談しなくてはいけません。後にトラブルにならないよう、玄関に吹き抜けを設置するときはその家の性能やつくりを十分に考慮する必要があります。

居住スペースと隣接させないこと

玄関を吹き抜けにする場合は、リビングや寝室といった居住スペースは離した間取りがおすすめです。滞在時間が長い居住スペースは断熱性を高め、「夏は涼しく、冬は暖かい」という住環境を意識しなくてはいけません。吹き抜けの玄関と隣接するとどうしても断熱性は低くなりやすいので、最初から住居スペースと離しておけば快適に暮らせるでしょう。

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