【サンデー美術館】 No.267 「『奇才―江戸絵画の冒険者たち』展」

▲高井鴻山「妖怪図」

 奇才たち。展覧会場のなかに入ると、なるほど奇妙で奇抜な絵がたくさん並んでいる。そのなかでもとくに気になったのがこの絵。

 二匹の不思議なものが描かれている。まず、目玉の大きな孵化したばかりの鳥のような不気味な姿。でもちゃんと服を着ていて、この妖怪、素性(?)が正しそうに見える。

 より不思議なのはその下の、カエルのようなモグラのような、目の小さな妖怪。下半身の先がねじ切れたように細くなって消えている。でも全体に陰影がつけられていて、妙にリアルな感じがある。細かな毛の生えた皮膚、硬そうで柔らかそうな爪、背中の白い角のような突起物も何だかとても気になる。

 アクリルケースのなかの小さな画面を一生懸命見つめていると、想像上の妖怪などを眺めているのではなく、初めて見る生物を詳細に観察しているような自分の興味に気がついて、我ながらちょっと驚いた。それほどリアルな表現なんだと思いなおした。

山口県立美術館学芸参与 斎藤 郁夫

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