改正道路交通法で注目のドライブレコーダー、有望な投資先は?

あおり運転は、重大な事故を発生させる可能性のある危険な行為です。これを取り締まるため、6月30日にあおり運転罪を新設した改正道路交通法(道交法)が施行されました。

他の車の通行を妨害する幅寄せや急ブレーキなどの行為が対象で、実際に事故に至らなくても適用されます。あおり運転の厳罰化を受けて、自分を守るためにドライブレコーダー(DR)を車に搭載する人が増えるとみられます。


あおり運転による事故が多発

DRは交通事故などの発生状況を記録することを主な目的に、車両の動きや周囲をカメラ、センサーで記録する車載装置です。交通事故時に、どちらの信号が青だったのかで事故当事者の主張が食い違う場合や、車の運転者に責任を押し付けられがちな歩行者・自転車との事故などで、有力な証拠となります。

DRの認知度が高まったのは、2017年6月、神奈川県の東名高速道路で、あおり運転により前方をふさがれた車が、後続トラックに追突されて乗車していた夫婦2人が亡くなった事故がきっかけです。

また、2019年8月には茨城県の常磐自動車道において、あおり運転により停車させられた運転手が、あおり運転を行った男に暴行される事件が発生。事件の模様を記録したDRの映像がテレビ番組で繰り返し流され、普及につながったとみられます。

DRの出荷台数は3年間で3.3倍

DRの出荷は増加傾向にあります。一般社団法人「ドライブレコーダー協議会」によると、2019年度の国内出荷台数は、前年度比32%増の483.9万台。2016年度に145.7万台だったのが、3年間で3.3倍と大幅な伸びを記録しました。

出荷が好調な背景には、DRの認知度が向上したことに加え、高性能化などもあるとみられます。前方の映像だけでなく、後方の映像も記録できる前後カメラ搭載モデル、横からの幅寄せなどに対応した360度撮影可能なモデルなどが発売。さらに、撮影画像の高精細化も貢献しているとみられます。

動画記録画素数は200万画素が主流ですが、さらに高精細な370万画素以上のモデル、日没後の暗い環境にも対応した夜間撮影機能搭載モデルなども発売されました。今後もDRの高性能化は進むと予想され、初期モデルからの買い替え需要も期待できます。

改正道交法の施行でDRがさらに出荷増?

あおり運転罪を創設した改正道交法が施行されたことも、今後のDRの出荷増を後押しするでしょう。同法の施行前は、道交法の車間距離保持義務違反や刑法の暴行罪であおり運転を摘発してきました。しかし、行為の危険性に比べ、罰則が軽すぎるとの指摘がありました。

施行により、あおり運転は5年以下の懲役または100万円以下の罰金など、飲酒運転と同程度の厳しい罰則が科されます。違反した場合は直ちに免許取り消しとなるうえ、最長3年間は免許の再取得ができません。

さらに、あおり運転で相手を死傷させた場合は、刑が重い「危険運転致傷罪」を適用できる法改正も行われました。あおり運転の厳罰化を受け、事故に巻き込まれた時に自分を守るため、DRを搭載する人が増えるとみられます。

合わせて、DR搭載は運転者自身の安全意識の向上につながる可能性があります。DRが交通安全に貢献することが実証されれば、行政による費用面での助成も期待できるでしょう。

DR関連で躍進が期待される企業は

DR関連企業では、JVCケンウッド(6632)に注目しています。同社は2008年に日本ビクターとケンウッドが経営統合して発足し、カーオーディオやカーナビゲーション、DRなど車載機器の製造を重点事業としています。

両社がこれまで培ってきた映像・光学技術と車載技術の融合により、高機能・高信頼性・高画質録画を実現することで、2016・2017年度と2年連続でDR国内販売数量第1位を獲得しました。OEM(相手先ブランド製造)市場でも、大手日系自動車メーカーを中心に大型案件の受注獲得が進んでいます。

また、総合電機国内大手の三菱電機(6503)、電子部品製造のアルプス電気と、車載機器製造のアルパインが2019年に経営統合して発足したアルプスアルパイン(6770)、2017年に車載機器製造の富士通テン(現、デンソーテン)を子会社化したデンソー(6902)などもDRの製造を行っています。

このほか、フランチャイズ方式を中心に自動車用品店「オートバックス」を全国展開するオートバックスセブン(9832)は、品揃え豊富なDRの販売に加え、DRの車への取り付けなども手掛けています。

(文:いちよし証券 投資情報部 碓氷広和)

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